神奈川県相模原市緑区の「新戸キャンプ場」で16日未明にあった倒木事故。テント内で寝ていた東京都の会社員女性(29)が下敷きになって亡くなり、一緒にいた夫(31)も肋骨を折る重傷を負った。
神奈川県警津久井署によると、倒れた木は高さ18メートル、太さ70センチほどで根本の腐食が進んでいた。夫婦は知人と計4人で15日からキャンプ場に滞在中で、指定された区画の中にテントを設置していた。同署は業務上過失致死傷容疑も視野に管理が適切だったかどうかを調べている。
今回の事故について、公益社団法人日本山岳ガイド協会の武川俊二理事長に話を聞いた。
実際に山岳や自然環境の中でテントを張る時には、落雷や増水といったさまざまなリスクを予見しながら場所を決めるというが「今回の事故はそれとは次元が違う話で、あってはならない」とする。「利用者は安全だという前提でキャンプ場に来ている。いわばレストランで席に通されたらシャンデリアが落ちてきたようなもの」だとし、倒木に至るほど腐食していた予兆を見抜けなかった管理体制に疑問を呈した。コロナ禍でキャンプ人気が高まっていることもあり「木などの自然物も劣化していく。管理者が配慮を行き届かせなければならない」と話している。
樹木の安全管理に関する事例として、武川さんは2003年の落木事故を挙げる。青森など3県にまたがる十和田八幡平国立公園・奥入瀬渓流で起きたもので、女性(39)が遊歩道の石に腰掛けて昼食をとっていたところ、地上10メートルほどの高さから、長さ約7メートルのブナの枯れ枝が落ちてきた。落木に当たった女性は下半身麻痺の障害を負い、国と青森県に計約2億3千万円の損害賠償を求めた。東京高裁は管理の瑕疵により起きた事故であることを認め、国と青森県に計約1億9千万円の支払いを命じた。