保育園への運転中、仕事で頭がいっぱいに→後部座席の1歳娘をすっかり忘れて…体験漫画でおきざり警鐘「実は私も」「注意喚起ありがとう」

谷町 邦子 谷町 邦子

命よりも大切な子どもを、「車内置き去り」しそうになってしまった。実際に起こったショッキングなできごとを描いた漫画がツイッターで話題になっています。深刻な事故につながりかねないミスはどのような状況で起こったのでしょうか。

しおこ(@shiokmbbb)さんは1歳半の娘、う~ちゃんを後部座席のチャイルドシートに座らせ、朝8時に自宅を出発。去年の9月末のことでしたが、車内は冷房が効くまでものすごく暑かったそうです。運転するしおこさんの頭の中は、その日会社で行われる企画会議のことでいっぱいでした。

いつもは保育園に送った後に勤め先の会社に向かうしおこさんでしたが、なんとその日は保育園をスルーしてしまいます。そして、会社の近くまで来た8時半、しおこさんはバックミラー越しにうーちゃんを発見! 慌ててUターンしたそうです。

う~ちゃんに気付かずに車を降りたら、企画会議中、40度を超える車内に長時間放置していたかもと最悪の事態を想像し、自分を責めるしおこさん。しばらくショックから立ち直れませんでした。今ではうーちゃんが乗る後部座席に自分の荷物を全て置くことで、「車内置き去り」を防いでいるそうです。

体験を赤裸々に描いた漫画には子育て中の人から大きな反響が。「実は私もあります。その時は娘が話せるようになっていて『今日ほいくえんお休み?』って後部座席から聞いてくれてヒェッとなりました。あの声が無ければ気付いただろうかと何度も何度も、今でも反省してます」「俺も一瞬だけ保育園通り過ぎて冷や汗かいたことある。それからは数分の距離なので道中音楽切ってずっと息子に語りかけてるわ」と、しおこさんとほぼ同じ経験をした人もいました。

また、「お迎え忘れて帰ってしまったことがある。どんなに愛していてもそういうことがあるから対策立てるしかないですよね」「出先の平面駐車場でトランクからベビーカーを下ろし、子供を下ろし忘れて空のベビーカーを押して、出発しそうになったことがあります。一瞬の何かで一つの行動が抜けてしまって、自分で自分に衝撃を受けました」など、ほかにも子どもを「置き去り」にしそうになったエピソードが多く寄せられていました。

そして、「ご無事で良かったです 私も仕事復帰すると余裕なくなったりしかねないので、肝に銘じておきます。注意喚起ありがとうございました」「確かにカバンを後ろに置くというちょっとした工夫で対策できますね! 経験談シェアありがとうございます」と、投稿が参考になったというコメントも多くありました。

多くの人にとって他人事とは感じられない、子どもの「車内置き去り」。しおこさんに当時の状況、そして半年以上前のエピソードを今、投稿した理由について話してもらいました。

自分の失敗や批判に向き合うのが怖かったけれど、勇気を出して漫画に

う~ちゃんを後部座席に置き去りにしてしまいそうになった去年の9月末、しおこさんは産後の再就職から約半年でした。慌ただしく、余裕のない日々を過ごしていたそうです。

――朝、子どもを乗せて運転をしている時に、仕事のことを考えていたのですね。

「頭の中が仕事でいっぱいだったという記憶があります。家を出る前は子どもの支度やら家事やらに追われて、それが済んでようやく車に乗るとスイッチが切りかわって頭の中が仕事一色になってしまう。職場には慣れはしたけれどうまくいかないこともあったりして、昨日の失敗を思い出して引きずったり、『今日の会議何を話したらいいだろう』、『売り上げが全然取れてないよ~』とか、そういうことを考えてました」

――当時の忙しさがわかるエピソードがあればお願いします。

「常に時間に追われていて、うっかり家の鍵をかけ忘れたり、電気をつけっぱなしで出てきちゃったり、やりっぱなしで家を出ることがあったなという感じです」

――車に乗ってる最中のう~ちゃんはどんな様子だったのでしょうか。

「漫画に描いてあるように、ずっとぼーっとしていて、まだ1歳半でしたし、自分が今どこを走っているのか多分わかってない様子でした」

――車内ではおしゃべりをしないのですか。

「ぜんぜんしゃべらなかったです。言葉は出てはいたんですけど、車に乗るとずーっと静かでした。こっちから話しかけても返答があったりなかったり。今ではしゃべるし、割と道を覚えているので、休みの日とか保育園の方向に車で走ってると『保育園行きたくない』って言います」

――チャイルドシートのある後部座席に自分の荷物を置くことのほか、「車内置き去り」を防ぐために心掛けていることはありますか。

「子どもを保育園に送ってる途中は、なるべく声をかけておしゃべりしたり、歌を一緒に歌ったりして、存在を常に気に掛けるようにしています。あとは、家に帰ってから車を降りる時に、後部座席をのぞいて確認するようにはしています」

――昨秋のできごとを今伝えようと漫画を投稿されたのは?

「3月下旬頃、日差しが強くて車の中が40度くらいになってすごく暑い日が続いたときに『このタイミングで描こう』と思いました。今回の漫画のエピソードは描きたいなとずっと思ってはいたので。

「自分がもしかしたらニュースで流れているような悲しい事故を引き起こしていたかもしれない」って思うとニュース見てても他人事とは思えませんでした。

自分の大事な子どもの存在を忘れるなんてありえない』といった意見もあるように、そういう事故に対して『自分には関係ない』って思ってる人が結構多い印象を抱いています。でも大事に思っていても人間なので、仕事と同じように毎日同じことを繰り返していたら”抜け”があったりすると思うんですよね。それが、偶然に偶然が重なって、ああいう事故が起こっちゃうんだろうなって、今回のできごとを通して実感しました。私が声掛けをすることで事故を減らせるとは思ってないんですけど、意識したり考えるきっかけになったらいいなと」

――だれにでも起こり得るってことが伝わったと思います。

「自分の失敗に向き合うこともそうですし、公表することで批判されるかもしれないという怖さもあって、去年はなかなか描こうとは思えなかったんです。でも、『車内置き去り』でお子さんが亡くなる事故ってなくなることがなく。

亡くなるお子さんもかわいそうですし、親御さんも後悔してもしきれなかったり、自分を責めてすごく辛い思いをするんだろうなっていうのが想像できるんです。少しでも『ヒヤリ・ハット※』を減らせたら事故自体も減るのかなって思って、「私の場合はこうでした」っていうのを、勇気を出して公表しました」

※ヒヤリ・ハット…仕事をしていて、「もう少しで怪我をするところだった」など、ヒヤっとした、あるいはハッとしたことを取り上げ、災害防止に結びつけることが目的で始まったのが「ヒヤリハット活動」。仕事にかかわる危険有害要因を把握する方法の1つ 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」より 

――漫画を読んだ方々から「自分もそういうことがあった」という経験談も多かったですね。

「想像以上に『自分も似たようなことがありました』っていう経験談が多く寄せられていて、「ハインリッヒの法則」※を思い出しました。ヒヤリ・ハットを減らせば、大きい事故にはつながらなくなるのではと感じました」

※ハインリッヒの法則 アメリカの損害保険会社の安全技師、ハインリッヒが発表した「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみではない)があったとすると、29回の軽傷(応急手当だけですむかすり傷)、傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)を300回起こしている」という法則 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」より

◇  ◇

しおこさんは、今まで、広く読まれることで攻撃的な人にも知られてしまったり、対応が大変なのではないかという不安から、取材やメディア掲載は断ることが多かったと言います。しかし、今回は「今年もこれから暖かくなって、同じような事故をまた目にするのは嫌だなと思ったので、いろんなメディアさんの力を借りて、なるべく多くの方に知ってもらうことが望ましいと思った」と取材を受けてくれました。

取材の最後に、「この先も『こんなことがあった』と絵日記みたいな内容で、漫画の更新を続けていければと思っています」と語るしおこさん。ツイッターでは2歳になったう~ちゃんの健やかな成長や家族の日常がうかがえる、ほのぼのとした漫画やイラストを投稿しています。

■しおこ2y(@shiokmbbb)さんのTwitter https://twitter.com/shiokmbbb

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