「1分間最強を決める。」をコンセプトに、総合格闘家、朝倉未来氏(30)がスペシャルプロデューサーを務める格闘技大会『BreakingDown(ブレイキングダウン)』。オーディションを含めた関連動画はYouTube急上昇ランキングの上位を席巻し、昨今の「格闘技ブーム」の中心となっている。
直近の第7回大会は2月19日に幕張メッセで行われ、第8回大会は5月6日に1万人規模での開催を予定。さらに海外進出を控え、朝倉未来氏本人が参戦意欲を示すなど、BreakingDownは日本でいま最も注目されている格闘技団体といえるだろう。
さてそんななか、BreakingDownをこよなく愛し、ツッコミとユーモアのセンスが光る解説・切り抜き動画を中心に大会を盛り上げる「公認オタク」がいる。
BreakingDownファンであれば知らない人はいない、「リョウ二キ」「公認ニキ」こと、「[公認]ブレイキングオタクリョウ【元ユーチューブオタクリョウ】」さん。(※「ニキ」とは「アニキ」の意味)
「とぅよいよ」など、独特なBreakingDown用語を広めた「運営公認」切り抜きYoutuberのなかでもっとも有名な配信者だ。
「公認って珍しいのでは!?」と思われるかもしれないが、運営公認チャンネルは他にも存在する。しかし、その中でもリョウさんはBreakingDown解説・切り抜きチャンネルの先駆者であり、登録者数はトップ。自身の生配信ではBreakingDownの人気選手たちと交流し、時には通話イベントが発生するため選手のオフを垣間見ることができる。
BreakingDownに惹かれた理由とは?「公認」になるにはどうするのか? 解説・切り抜き動画を作る際のこだわりは?…などなどリョウさんにインタビューをしてみると、格闘技YouTube界の興味深い動向が見えてきた。
人生を賭けた決断
ーーYouTuberへの道に進んだ経緯は?
オタクリョウ: 高校時代からYouTubeが大好きで、いつか作る側になりたいと思っていました。大学新卒で就職してから営業職で働いて、勤めながら「ユーチューブオタクリョウ」としてYouTuberを解説するチャンネルを運営していましたが、次第に両立は不可能だと感じYouTubeに集中するため独立したのが就職して3年目ですね。
初期はへずまりゅうさんなどを取り上げていましたが、僕自身あまり楽しめなかったことと、再生数も少なかったので、その時の動画は削除し約1年前に「ブレイキングオタク」としてチャンネルをリニューアルしました。
ーーということはブレイキングダウン動画でバズる前に会社を辞めた...けっこうな賭けでは?
オタクリョウ: そうですね、勝算はぜんぜんなくて(笑)。当時のYouTube収益はほぼゼロで先の見通しも立っていない状態だったので、無謀だったと思います。でもブレイキングオタクになってからYouTuberとして生活できるようになりました。今はめっちゃ忙しいですが毎日が楽しいので、決断して良かったなって思います。本当にBreakingDownさまさまですよ。
BreakingDownとの出会い
ーーBreakingDownに惹かれた理由ときっかけは?
オタクリョウ: とにかくYouTubeでバズるものを探していて、BreakingDownを見つけたという感じですね。第4回を見て興味を持ち、動画で扱うように。「Nontitle」のような同時期にバズっていた他の番組に浮気したこともありましたが、第5回が終わる頃にはどハマりしてました。
自分に少しだけ格闘技経験があることと、BreakingDownはいろいろなキャラがいることですね。他の格闘技イベントもたくさんの選手がいらっしゃいますが、オーディションの度にどかっと大量の新キャラが現れて、各々のやり方で爪跡を残していく様は、毎回本当に楽しみです。ひな壇制度で人気選手が出場し続けたり、スターになって席を獲得したり、オーディション参加者と化学反応を起こすのも面白いですよね。
ーーリョウさんの動画は、編集が凝っていて字幕や音楽などのチョイスに特徴がありますね。参考にしている配信者やこだわりはありますか?
オタクリョウ: こだわりはなるべく運営側よりも視聴者に近い目線で動画を作ることですね。字幕の使い方は「禁断ボーイズ」かな。空耳を文字に起こすところなど影響を受けていると思います。効果音に関してはゲーム実況の「からすまAチャンネル」を意識しています。特に「デデドン!(絶望)」のSEをよく使います(笑)。
どうして「公認オタク」に?
ーー運営公認チャンネルになったきっかけや、変化はありますか?また現在の運営との関係性について教えてください。
オタクリョウ: もともとYUGOさんや瓜田さんに自分のチャンネルが認知されていたみたいで、ある日TwitterのDMで運営サイドから「協力して一緒にやっていきましょう」と連絡が来ました。その時は嬉しかったですね。変化は今まで引用だった素材が安心して使えるようになったことです。また、出した動画が権利問題に引っかかっていたり、大会情報解禁前のネタバレになってしまう場合は、削除の要請を受けることがあります。
ーー動画投稿を続けてきた中で1番思い出に残っている出来事は何ですか?
オタクリョウ: いまは権利問題で消してしまったんですが、「鈴木大輔(10人ニキ)の正体がヤバすぎる。」という動画を彼が出たばかりの頃に投稿してかなり再生されて、10人ニキの個人チャンネルの登録者数が5000人くらい一気に伸びたんですよ。その件で本人からアンサーをもらったことですね。その内容がめちゃめちゃ面白くて人生で1番笑いました(笑)。
ーー素直に感謝を伝えられたとか?
オタクリョウ: いや、全然違うんですよ、「お前テキトーに作りやがってよ〜いい加減にしろコノヤロウ!スパーリングするか?」という感じでした(笑)。でもそう言いつつも、「おかげで再生されたよ、ありがとなコノヤロウ」と優しい一面も見せてくれて好きになりました(笑)。動画作って本当に良かったなぁって思いましたね。
ーーもしリョウさんがBreakingDown8で予定される日韓対抗戦の選抜権を得たとしたら、どの10人を選びますか?
オタクリョウ: こうです。
・川島悠太(とぅよいよ)
・池田大樹
・大森雄貴(2018中日本新人王)
・不破野大紀(付録ニキ)
・墨だけニキ
・杉並の赤ジャージ(山本真司)
・高杉昌吾(デスボニキ)
・ダンチメンのリーダー(りゅうき)
・椅子ニキ
・Ⅰ(謎)
ーー将来のビジョンや野望はありますか?
オタクリョウ: 最近生配信の楽しさに気づいたんですよ。今は平均同時接続が500人くらいなんですけど、夢は大きく1万人を目指しながら地道にやっていきます。あとは自分自身BreakingDownに留まらない格闘技ファンになりつつあるので、RIZINやK-1も含めた幅広い格闘技オタクになりたいと思っています。
ーーこれからYouTubeを始めたいという人へメッセージやアドバイスはありますか。
オタクリョウ: 何か1つのテーマに特化すると良いと思います。その方がチャンネル内で循環が生まれますから。
Youtubeのワード検索で、コンテンツの視聴数や登録者数を分析して、トレンド性や需要が高く、競合が少ないテーマを元に企画を考えることが大事だと思います。僕がBreakingDownの解説を始めたのは第4回からでしたが、その頃は競合がほとんどいませんでした。
あとはできれば…BreakingDown関連はやめてほしいですね。正直ライバルは少ない方がいいので(笑)。
◇ ◇
「切り抜き動画」と聞くと、Youtubeでバズった動画を勝手に編集して稼いでいる人という悪いイメージもあるだろう。しかしリョウさんのような「切り抜き」を通してBreakingDownへの熱烈なファン心理を表現している配信者もいる。
また、リョウさんが切り抜き動画で生活できていることからもわかるとおり、格闘技動画界隈のマーケットはかなり拡大している。だからこそ効率よく再生数を取れる「サムネ詐欺」や興味がなくても作れる質の低い動画が量産されはじめているという。
デマや誤解を招くだけでなく、切り抜く対象への思い入れの陳腐化を助長させてしまう恐れもある。もしかしたら批判されるべきなのは愛のない切り抜きなのかもしれない。
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【ブレイキングオタクリョウさん】
▽YouTube
https://www.youtube.com/@user-ow8os1wh5j
▽YouTube【サブ】
https://www.youtube.com/@user-fn4br8iy4k/videos
▽Twitter
https://twitter.com/youtubeotakuryo