「友だちの友だちが偶然、大谷選手を見た」。WBCで全世界を魅了した大谷翔平選手の写真が今、高齢者たちの間で拡散されていることが分かりました。「友だちの友だちが撮った」という大谷選手の写真、見せてもらうと何かがおかしいーー。
高齢女性「大谷選手の写真見る? かっこいいのよ」
先日、とある取材先で70代後半の女性が意味深な笑みを浮かべながら筆者に近づいてきました。「実は私の知り合いの知り合いが、大谷翔平選手に偶然会って写真を撮ったらしいの。LINEで送ってくれて。見る? それがかっこいいのよ」。
ジャジャーン! と言わんばかりに差し出されたスマホの画面には、確かに大谷選手の全身写真が。移動時のようで、カッターシャツにスラックスという姿。おおーっ、スーツ姿もかっこいい! と思ったのもつかの間、この写真、何か違和感が…。ピントも構図もプロ並み。さらには大谷選手の雰囲気がかなり若いような。思わず「これ、WBCのときですか? お知り合いのお知り合いがご自分で撮ったんですか?」と聞き返すと、「嫌ねぇ。この前、日本で試合したでしょ。そのとき偶然出会ったのよ、友だちの友だちが。駅かどこかで」。
にわかに信じがたく、その場で画像検索。iPadで「大谷翔平 スーツ」と検索すると、すぐに同じ写真が見つかりました。「やっぱり!」。それは2017年夏、某スポーツ紙の記事に使用された写真で、撮影はスポーツ紙のプロのカメラマンによるもの。約6年前なので若く見えたのも当然でした。
送られたきた文面を見る限り、昔流行ったチェーンメールのように「このメールを必ず何人に送らないといけない」や「転送しないと不幸が」などといった内容ではなく、詐欺サイトにつながるURLのリンクもありませんでした。
女性に写真はスポーツ紙の記事から無断で使用したものであり、著作権的にNGな行為になりかねないということを説明すると、「ええーっ!」と叫び、「友だちの友だちが大谷選手に会ったと思ってうれしかったのに…」とショックを受けた様子。これ以上は広めないでおきましょうと伝え、納得してもらいましたが、肩を落とした姿は痛々しく、何とも後味の悪い帰り道になりました。
WBC準々決勝当日から目立ち始め…
調べてみると、ツイッターでは3月16日あたりから「知り合いの知り合いが大谷選手を見たと写真がまわってきた」「義母が大谷選手の生写真を手に入れたと見せてきた」という投稿が見受けられるようになりました。「偶然撮った生写真」として使用される複数の写真は、いずれも数年前のネットニュースなどから流用されたもの。中でも特によく見かける1枚は、実際の撮影場所は仙台空港ですが、高齢者たちの間では新幹線の東京駅、名古屋駅、博多駅、羽田空港など、目撃したとされる場所も変化。さながら都市伝説のようにいくつかのバージョンが生まれていました。
16日といえば、日本代表が準々決勝でイタリアと対戦し、平均世帯視聴率48.0%を記録した日と重なります。
翌日以降はさらに増え、「大谷選手の写真が高齢の母から送られてきた」「おばあちゃんが受け取ってた」「おばさまたちが生写真だと盛り上がってた」「全く別ルート3人から同じ写真が送られてきた」「おばさま世代で流行?」「高齢者の間でチェーンメール化?」「ママ友からもきた」「Facebookでも見た」「ファンの間では有名な日ハム時代の写真がまわってきた」といった投稿が本日(4月3日)に至るまで続いています。
超人的な活躍ぶりや試合の合間に見せる愛らしい表情で多くの人を引きつける大谷選手。そんな世界的ヒーローに少しだけ近い存在になったーーと友人知人に自慢したい気持ちは分からなくもないですが、偽情報の拡散に加担しないよう、特に高齢のスマホユーザーはいま一度注意が必要かもしれません。