「イノシシに突撃されケガをした」「民家に猿が荒らしにやってくる」といったニュースを見聞きする機会があります。
こういったニュースはおおむね自然豊かなエリアに多く、圏外の人にとってはリアルに感じることはないかもしれませんが、しかし、都会で暮らす人たちの間でも、休暇でキャンプを楽しんだり、トレッキングで汗を流したりなど、自然に触れる機会が多くなっています。そういった際、都会気分のまま自然豊かな環境に行くと、思わぬ「危険動物・植物」に遭遇し、被害に遭うこともあります。
こうならないためにも、あるいは万一遭遇してしまった際、被害を抑えるためにも、自然に潜む「危険動物・植物」のことはよく知っておいたほうが良さそうです。
イノシシ・キツネに遭遇した場合は!?
紹介するのは「危ない動植物ハンドブック」(西海太介・著、自由国民社)。その名もずばりのタイトルで、「危険動物・植物」を「ハチとヘビ」「陸上動物」「植物とキノコ」「海に棲む生物」の4つのジャンルで解説していますが、その数116種。アウトドアファンはもちろん、動物に興味がある人にとっても必須の一冊です。
各カテゴリーの中にある「危険動物・植物」個々に、その「生態分布」「危険度」などに合わせて「遭遇してしまった場合」の対処法も紹介しています。
「陸上動物」から2つほど抜粋してみてみましょう。
■イノシシ
・分布……本州、四国、九州、沖縄
・出現時期……1〜12月
・体長……80〜160cm程度
・危険度……★★★★☆
・解説……山地や里山に生息する代表的な野生動物の一つ。日中も活動するが、人の多いところでは夜に活動していることが多い。運動能力が高く、柵を飛び越え、農地で食害被害を及ぼすことが多い。
・遭遇した場合……クマ同様、至近距離で遭遇しないことが望ましい。クマ鈴や声などでこちらの気配を伝えると、基本的には向こうから去っていく。もし見つけても、近づかず、距離をとるように。
■キツネ
・分布……北海道、本州、四国、九州
・出現時期……1〜12月
・体長……60〜75cm程度
・危険度……★★★★☆
・解説……雑食性で、群れをつくらずに行動する。北海道のキタキツネと本州以南のホンドギツネがおり、山地を中心に生息している。人馴れしているエリアでは、道路に出てくることも。
・遭遇した場合……北海道でのエキノコックスのような深刻な感染症を持つ例がある。餌付けされた個体があるが、触れたりエサを与えたりしないように。
道路・公園といった身近な植物にも危険がある
続いて、「植物およびキノコ」も2つほど抜粋してみましょう。
■キョウチクトウ
・分布……園芸用として全国で植樹される
・危険度……★★★★☆
・解説……寒さや暑さ、大気汚染等に強いことから、緑化のために道路沿いなどに植えられている樹木。高速道路や公園でもよく植樹されている。夏になると白、ピンク、黄色などの花を咲かせる。葉は細長く、葉脈が魚の骨のように横に並ぶのが特徴。植物全体に有害成分を含む。
・応急処置等の対応……直接的に誤食することは稀だが、樹液に触れるとかぶれることがあるほか、燃やした煙や、枝をBBQの串などに使用して中毒に至った事例がある。樹液に触れたら水洗いし、中毒症状が出た場合は病院へ。
■シキミ
・分布……本州、四国、九州、沖縄
・危険度……★★★★☆
・解説……春にクリーム色の花を咲かせる常緑樹。線香の材料にすることもでき、墓地などに植栽されていることが多い。アニサキチンなどの有害成分を含むため、食べると中毒症状を起こす。
・応急処置等の対応……香りのよい果実は中華料理に使用する「八角」に似ている。食べると痙攣、嘔吐、意識障害などを起こし、最悪の場合は死に至る可能性も。誤って食べた場合は吐き出して病院へ。
意外なほどに身近に危険な動植物がある
本書を読んでいると、冒頭で触れたような「自然豊かな環境」以外にも、意外と身近に「危険動物・植物」があるのだということもわかりました。
特に緑化のために植樹されたキョウチクトウという植物は、誰でも触れられるもの。こういった植物に関する情報はこれまでごく限られていたため、そういった点でも、貴重な一冊のように思いました。
「弊社ではこれまでコンパクトな判型にアウトドアで役立つ知識をまとめた『食べられる虫ハンドブック』『食べられる草ハンドブック』を刊行し、いずれも版を重ねご好評をいただいています。そこでさらにラインナップを広げ、実際に街中や自然の中で出あう危険な動物・植物について必要な知識を携行できる本があれば、より読者の皆様のお役に立てると考え、本書を企画しました」(担当編集者)
また、環境ごとに、いくつかのシチュエーションを想定し、それぞれにおいて知っておくべき知識を選別・解説している点にこだわった構成になっています。
「本書では『これだけを一通り知っておけば、日本に住み、生活している上ではまずカバーできる』と思われる範囲で、セレクトを行いました。できるだけ注意喚起に努めたつもりです。私たちの身の回りには、意外なくらい多くの危険な動植物があります。必要以上に怖がることはないですが、知らずに接触して思わぬトラブルを起こさないよう、一家に一冊備えておいていただいてもいいくらい、ずっとお役に立つ実用書だと思います」(担当編集者)
多くの人がその存在を知っている動植物から、これまであまり知られていなかった動植物まで「危険」なものばかりを116種も集め紹介した本書。ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。