「なぜここに横断歩道?」短すぎ、3歩で渡れる 実は「納得」の設置理由があった

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 鳥取県米子市両三柳の県道317号(外浜産業道路)沿いに、「山陰両県一短い」とみられる横断歩道がある。長さはわずか白線3本分、約2メートル。どういった経緯で設置されたのか、調べた。

 横断歩道があるのは県道沿いの米子バッティングスタジアムの近く。建物のすぐ横にある、幅150センチほどの農道の入り口に設置され、専用の信号機まで付いている。

 横断歩道は通常、車の往来が多い道路を歩行者が安全に横断できるように設ける。舗装はされているが、道幅は軽自動車1台が何とか通れるほどで、横断歩道が必要な道には見えない。そもそもこの道に進入する車が存在するのか疑問だが、道路と歩道を区切る縁石が、横断歩道と接する箇所だけ無く、県道から農道に車で入れるようになっている。

 信号機もあるため、誰かが勝手に横断歩道を引いた訳ではなさそう。ということは、正式な横断歩道として設置されたものなのだろうか。

市道の開通がきっかけか

 現地の人なら何か知っているかもしれない。米子バッティングスタジアムの事務員、鎌田順子さんに尋ねると「2年前、近くの米子市道安倍三柳線の一部区間が開通した頃に設置された」という。

 米子市都市整備課によると、市道安倍三柳線は1966年に都市計画決定された弓浜半島の中海側と美保湾側を結ぶ、総延長2・7キロ(現在の供用区間は1・8キロ)の道。JR境線をまたいで県道317号につながる400メートル区間が、2021年2月に開通した。

 横断歩道がある農道は開通した安倍三柳線のほぼ突き当たりに位置する。農道とはいえちょうど交差点のようになるため、信号や横断歩道が必要だったのだろうか。

 鎌田さんは「軽トラが(農道に)出たり入ったりしているのをよく見る」と言い、農道は思ったより車が通行しているようだ。となると、横断歩道と信号機も機能していそうだ。

警察に尋ねると…「交差点には横断歩道を設置することが好ましい」

 横断歩道を引く主体はその地域の警察。鳥取県警交通規制課の課長補佐に話を聞くと「県警が現場の交通事情を見て設置した、正式な横断歩道です」との答えが返ってきた。

 安倍三柳線が開通し、県道317号と交わったことで、この地点は同線の突き当たりにある農道と併せて交差点という扱いになった。交通ルール上、交差点には歩行者のため、信号機と横断歩道を設置することが好ましく、県警と米子市が協議した上で設置が決まったという。

 道の幅や車の通行量にかかわらず、道路の形状によって交差点と認識されるようだ。助走をつければ一歩で飛び越えられそうな地点にも整備されているのは、歩行者の安全ファーストが徹底されていると言えるかもしれない。歩道の上にあるように見え、極端に短いという変わった横断歩道だが、正真正銘、公設の「本物」だった。

 ただ、計画によると同線は今後さらに延長される。工事に伴って農道部分は整備され、現在の短い横断歩道もごく普通の横断歩道になる予定だという。「山陰一短い横断歩道」を見ることができるのは、わずかな時間なのかもしれない。

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