1羽ずつ消えた神社のうさぎ→解決したのは「防犯カメラ」だった 悲しくなる所業に「無断で持ち帰ったものにはご利益ない」

中河 桃子 中河 桃子

「吹田大宮高浜神社」(大阪府吹田市)の元旦に奉納された、3羽のうさぎの置物。1月11日に1羽が持ち去られ消えてしまいました。そのうさぎの設置作業を任されていた辰巳春菜さんは、「心当たりのある方はお戻しください」とSNSで真摯にお願い。多くの人々が拡散に協力し、「うさぎ持っていかれた方 お戻しください お願いします」と記したお願い文を貼るも、1羽ずつ減り、13日にはついに0羽に。この悲しい所業について取材しました。

3羽だけでなく、切り株の上に置かれていた金色のうさぎ、神社が正月から授与している福の石も、持ち去られる事態に。

「日本ってこんな悲しい国だったかな?1日も早く戻ってくることを祈っています」「悪さするなら二度と来るな!と思います。お気持ちお大事にしてください。」「罰当たりめ。早く神社に返してください。」「なぜに無料と思うのか。皆が愛でるものを自分のものだけにしようとするのか。そっと元に。ごめんなさいと言って」「うさちゃん。。。可哀想に」と怒りと悲しみの声が相次ぎました。

警察に訴えるようアドバイスが寄せられたことから、悩みながらも神社は吹田警察署に盗難届を提出。ニュースを知った氏子総代や地方の企業が新たにうさぎを奉納したり、うさぎの行方を案じる子どもの声が神社に届けられたりと、温かな支援や声援が全国から寄せられました。

そして約1カ月を経て、警察から回収したとの連絡が…消えたうさぎと福の石が全て無事に戻ってきました。

今回どのように解決したのか、辰巳さんに詳しくお話を聞きました。

「防犯カメラや鍵をつけなければならないのは悲しいこと」

吹田大宮高浜神社は、皮をはがされた兎を神様が助ける日本神話「因幡(いなば)の白兎」に登場する大国主命(おおくにぬしのみこと)もお祀りしています。そのことから、卯年にあたる2023年は境内にうさぎをたくさんお供えしていました。動物をテーマに描く日本画家・辰巳さんは同神社の助勤巫女としてご奉仕もされています。

そのご縁から2023年は干支に合わせて、うさぎの大絵馬を制作・奉納。さらに神職からの依頼で、「見ざる言わざる聞かざる」をモチーフにした3羽のうさぎを手水舎に設置し、参拝者の目を楽しませていました。

――うさぎが1羽また1羽と持ち去られていった時のお気持ちは?

「高浜神社さんに同じく、怒りと悲しみでいっぱいでした。わたしは元々、元旦の日のご奉仕で設置作業を任せていただいて手水舎に設置しましたため、責任も凄く感じておりました。

また、参拝者さんがうさぎさんに願いを込めてお供えしていた福の石等も同一の人物が持ち帰っていた事もわかり、このような行為は本当に許せません」

――持ち去った人は、なぜ無断で持ち帰ってしまった?

「うさぎが本当に大好きだったようでした。その事で奇跡的に傷なく綺麗な状態で戻りました。好きすぎて見境なく、という感覚なのかもしれませんが本当に好きならば理性を持って踏み止まってほしかったと思います。ご参拝に来てくださればその度に普通に会えるようになっていますのに…。

手水舎にはもともと防犯カメラが設置されていませんでしたが、神職によると吹田警察署の方が、他の場所の防犯ビデオリレーで犯人を特定したとのことです」

――今回の一件で手水舎での防犯カメラや鍵付きの扉など、さらに防犯対策を講じなければいけなくなったそうですね。

「神職は『今回のことは本当に沢山の方にご心配をおかけしました。本社の中に入れることも考えましたが(ご参拝の皆様からの)ご要望もあり、手水舎にさえ防犯カメラや鍵をつけなければならないことは悲しいことですが、少しでも抑止力になり、神様にも皆様にも嫌なお気持ちにならずに安心してお参り頂けるように設置致しました』との事です。

わたしの気持ちも同じく、ここまで防犯しなければいけないなんて悲しい事ですが、神様にも皆様にも嫌なお気持ちにならずに今後安心してお参りいただけたらと思っております。」

◇ ◇

今回の件は、「「無断で持って帰らないで下さい」と注意書きしたほうがいいのかなとも思いましたが、そのような張り紙を見ますと、思ってもみない方には嫌な気持ちになりますし、写真も撮られますので、できるだけマイナスなことは表に出したくないと思いました」と神職の思いが踏みにじられた形に。

さらには同神社では、『とんど祭』の際に、お賽銭箱から白い封筒に入ったお賽銭が二度も白昼堂々と盗まれたこともあり、「無断で境内から持ち出されたものに御利益はありません。良い行いもそうでない行いも神様は全て見ておられます」と説いています。防犯対策は強化されましたが、参拝客の善意なくしては聖域を守れません。神聖な場所が将来も保たれるよう、一人ひとりの良心が問われます。

◇ ◇

うさぎ絵を多く制作している辰巳さんは、5月10日~6月6日に大阪市福島区のイタリアンレストラン「cafe&dining marina」で開催されるグループ展『ゆかいな仲間たち展2023』に出展予定。辰巳さんが心から愛する動物たちの愛らしい作品にも注目を(一部の作品は購入可)。詳細は辰巳さんのTwitter、Instagram(@haruna.tatsumi)にて告知予定。

■辰巳 春菜さんTwitterアカウント:@haruna_tatsumi 
■辰巳 春菜さんInstagramアカウント:@haruna.tatsumi 
■吹田大宮高浜神社 公式サイト:http://takahamajinjya.kir.jp

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