障がいや難病を抱える子どもたちにも観劇を楽しんでもらおうと、宝塚歌劇団OGによるチャリティー公演が昨年末に「TENPO HARBOR THEATER」(大阪市港区)で開催された。芸能事務所「アレキサンドライト」が手がけ、METイノベーション国際推進機構などが支援。2日間で計850人が来場し、障害のある児童生徒とその家族を含む250人も「タカラヅカ」を体感した。
250人が「タカラヅカ」を体感
年の瀬に心温まるイベントが開催された。
「第1回MET&宝塚歌劇団OG・スマイル企画」と題して障がいや難病を抱える子どもたちに遠慮なく観劇を楽しんでもらおうと、その家族らを含めて250人を無料招待。この趣旨に賛同した椿火呂花ら「アレキサンドライト」のメンバー12人が「ベルサイユのばら」「エリザベート」といった名シーンをたっぷり2時間半熱演した。
会場は大阪市港区の「TENPO HARBOR THEATER」で主催者側の「SBI MUSIC SIRCUS」が運営。2日間で計850人が来場し、定員450人の劇場は連日、ほぼ満席状態となるほど大盛況だった。
観劇した子どもたちは障がいや難病のため、ふだんは今回のようなエンタメを思い切り楽しむことが困難。しかし、今回は一般参加者にも告知し、趣旨を理解してもらっており、気兼ねなく鑑賞できたが、うれしい誤算もあったようだ。
開催をサポートしたMETイノベーション国際推進機構の伊野達亮事務局長は「正直、発達障がいや知的障がいの方を招待はしたものの、ショーを観劇してストーリーが理解できるのか、楽しくないんじゃないか。わたしたち主催者側のエゴになるんじゃないかなど、不安がよぎりました。しかし、子供たちの笑顔や歓声、身振り手振りで一緒に踊ってる姿を見て、やって良かったと心の底から思いました」と胸をなでおろし、成功を喜んだ。
「夢のような時間」涙流す人も
実際に観劇した障がい者の家族からは次のようなお礼や感謝の言葉が届いた。
▽このようなショーを障がいのある息子と鑑賞できるなんて想像していなかったので、感激と感動でした。内容も簡素化されたものではなく世界観に没入することができました。本人は発語がないので残念ながら感想を聞くことはできませんが、ショーに集中していました。帰宅後「また行きたいか」と尋ねると大きくうなずいていました。
▽宝塚に限らず、コンサート、オーケストラ、あらゆることから遠ざかっていました。酸素ボンベを積んだ車いすで混雑した劇場に行くのは「邪魔やな!」という視線が痛いですし、状況が理解できない障がい児が変なタイミングで大声を出すのも公演の雰囲気を壊すので恐怖でした。その点、最初から「障がい児のための」と謳って下さっていたのでありがたかったです。内容も宝塚の雰囲気が垣間見えて楽しめました。
▽素敵な機会を頂戴いたしました。迫力のある歌声とダンスに惹き込まれ、楽しい時を過ごさせていただきました。
▽内容はとても分かりやすく、現代風にアレンジされていたり、座席の近くまで舞台女優さんが来てくださって写真まで撮ってくれるなんて…。夢のような時間。障がい者を持つ家族が癒されたことは間違いありません。私自身もありがたくて、何度も涙しました。
▽娘は重度心身障がい児。車いすで全介助の生活を送っています。いつもは寝てばっかりの子がほぼ起きていたこと。そして大きな声を出すこともなくニコニコ、ノリノリで鑑賞できたこと。成長したと感じました。選曲も「ザ・宝塚」って感じ。エリザベートを生で聴けて鳥肌ものでした。
これまでも熊本や能登などで震災復興を願うチャリティーショーを行ってきたアレキサンドライトにとっても意義深い公演となった。企画が持ち上がってからわずか2カ月程の短期間にもかかわらず洗練された歌と音楽、円熟味を増したダンスを披露するあたりはさすが。
岡部代表も感無量の様子
社会貢献活動にも力を入れている岡部優妙代表は客席から見守り「今回、大切なご縁をいただき、演出、構成、プロデュースをさせていただきましたことに心から感謝し、ご尽力くださいました方々、足をお運びくださいましたお客様にお礼を申し上げます」と感無量の様子。「出演者のみなさんとともに愛、夢、希望をお伝えできれば、との思いで製作しました。障がいのある方、難病のある子どもたちに何か少しでもお力になれることがあれば幸いです」と話した。
今回の公演にあたっては「今後にやってもらいたいイベント、挑戦したいこと」のアンケートを実施。次回以降につなげていきたい考えだ。確かに障がい者や難病を持つ人にとって大勢の人が集まるところは、なかなか行きづらいもの。しかし、やり方次第では諦めることなく、実現できる。この成功を受け、METの1人は「今年はハンディのある方がふだん体験できないイベントにもっともっと参加していただける機会をたくさん作りたいと思います」と意気込んでいる。