ジャラジャラで三つ編みした!昭和に大流行「珠のれん」→最後の1社を支える78歳社長と、令和に起きた小さな「変化」

金井 かおる 金井 かおる

 昭和レトロなインテリア雑貨が再び注目を浴びています。木製の玉が連なるのれん「珠のれん」。調べてみると、現在でも作り続けるメーカーが1社だけありました。1924(大正13)年創業の木工品メーカー「ヒョウトク」(本社、兵庫県小野市)。社長の近田正義さん(78)に話を聞きました。

最盛期は「ほとんど毎日が残業。土曜日も休みなし」

──いつから珠のれんの製造販売を。

「私は現在78歳ですが、私が小学生の頃に開発されましたので、珠のれんの歴史は70年近くになろうかと思われます。中学生の頃には、出荷の準備のために、家の庭に広げたむしろ(わらで織り上げた敷物)に珠のれんの山ができるほどでした」

──最盛期の思い出は。

「東京オリンピックの前後10年ほどが最盛期でした。私が入社した1969年ごろは忙しくて、ほとんど毎日が残業。土曜日も休みなしに働きました。(従業員のために)夕食の釜めしを買い出しに行くのが私の担当でした。自社製造だけでは間に合わず、製造専門会社にも委託していた期間があったほどです。当時は金物も含め、市の財政を支えていた時期でもありましたので、しんどいという気持ちはなかったです」

──最盛期には市内の約80社が扱っていたと聞きました。現在は?

「木玉を使用した珠のれんは国内では弊社のみだと思います。一時期は小野市の産業として支えてきた算盤の副産業です。(県の地場産業として)兵庫県にも認めていただけていることを自慢に、継承できる限りは頑張りたいと思っています」

──最近の購入者の傾向は。

「最近、富士山の柄の商品のまとめ買いがありました。憶測ですが、新しくオープンする店舗に使用されるのではないでしょうか。以前は昔ながらの和風建築になつかしさを求めて購入される方が圧倒的に多かったですが、最近ではSDGsの考えから『木材にやさしく、ともに生きていく』という思いで木製製品を貴重がるお客さまに変わってきています」

 同社では定番デザイン(参考上代税込み11880円~)のほか、両サイドにスライドできる新商品も開発。文字やマークが入れられるオーダーメードもあります。詳しくは同社ホームページへ。

「胸がキュンとなる」「ジャラジャラ触るの好きだった」

 珠のれん発祥の地は、そろばん生産量日本一で知られる兵庫県小野市。

 兵庫県のホームページには「算盤の産地である小野市で、旧兵庫県小野工芸指導所が研究開発し、昭和30年頃からそろばん玉を応用して製品化したのが始まり」と紹介があります。

 テレビドラマの小道具として登場したことから大ヒット。「一家に2つはある」と言われたこともあったほどでした。「昭和35年頃から需要が急速に増大し、当初夏物商品として扱われたものが、生活様式の変化に伴い四季商品化した」(県ホームページから引用)

 昭和50年代にはブームは下火になりましたが、今年に入り、とあるツイッターユーザーが写真を投稿すると拡散。ネット上には「うちにもあった」「胸がキュンとなる」「ジャラジャラ触るの好きだった」「触りすぎて親に怒られた」「これでよく三つ編みしてた」「猫が飛びついてたなあ」「音がするから防犯に役立った」など、昔を懐かしむ声が多数上がりました。

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