子宮内膜症患者、30~50%が不妊に 妊娠を希望する人は人工授精なども視野に入れて

ドクター備忘録

川口 惠子 川口 惠子

子宮内膜症の患者さんには、低用量ピルの連続投与を勧めることが多いのですが、全ての方に投与できるわけではありません。40歳以上では慎重投与となっていますし、肥満や高血圧、1日15本以上タバコを吸う人などには投与できません。血栓症のリスクが高くなるからです。

ピルと並んで子宮内膜症によく使用されるのが黄体ホルモン剤ジェノゲストです。ジェノゲストはピルのように血栓症のリスクがないため誰にでも使用することができます。

月経はなくなりますがほとんどの方に不正出血が見られます。なかには全く無月経になる人もいますが「少し出血はありますが生理に比べたら全然楽です」という方が多いです。

不整脈のためピルは使えず

Nさんは37歳で独身です。月経痛と過多月経のため他院で撮ったMRIを持って当院にこられたのは12年前でした。MRIでは2ミリくらいの小さな子宮筋腫とやはり2ミリくらいの小さな内膜症性嚢胞が映っていました。

彼女には心疾患による不整脈があってピルは使えません。相談の結果、漢方薬を服用することになり月経痛に有効な腸癰湯を処方しました。これで月経痛はしばらく楽になっていたのですが、4年前から再び月経痛が強くなり、出血がダラダラと続くようになりました。嚢胞も4センチほどに大きくなっていました。

Nさんにはジェノゲストを勧めました。これで月経は来なくなり1カ月に3日ほど少量出血があるだけになりました。嚢胞も今ではほとんど分からなくなりました。Nさんは薬が気に入って当分服用を続けたいと言っています。

内膜症と子宮筋腫が合併

Dさんは47歳の会社員で2児のママです。最近月経痛がひどく、経血も多くなり月経中は職場でも頻回にトイレに行くようになり、職場のスタッフに「病院に行った方がいいよ」と言われて当院を受診しました。診察するとNさんには5センチくらいの子宮筋腫があり、両側卵巣に4~5センチの内膜症嚢胞がありました。

内膜症と子宮筋腫が合併していることは多いのです。彼女には手術でも良かったのですが、会社も忙しいし、お子さんの入試もあるので入院はしたくないとのことで薬剤による治療を希望されました。まずGnRHアンタゴニストを投与して月経を止めました。

彼女は無月経になり大喜びですがホットフラッシュや肩こりなどの更年期症状が出てきました。微量の女性ホルモンを併用すると、更年期症状も軽減し筋腫も嚢腫もかなり小さくなってきました。しかしGnRHアンタゴニストは6カ月しか連続投与できないため、続けて黄体ホルモン剤ジェノゲストを服用しました。

ジェノゲストになってから更年期症状は無くなりましたが時々不正出血があります。半年ほどしてまたGnRHアンタゴニストに戻りたいと希望され、半年間GnRHアンタゴニストを服用しました。こうして彼女は2種類の薬を繰り返して50歳になり、筋腫の大きさは3センチくらいに、嚢胞は2センチくらいになっており閉経すればさらに縮小することが期待されます。

子宮内膜症に対しては、若い方には低用量ピルを、40~50代の方にはジェノゲストかGnRHアンタゴニスト、GnRHアゴニストを使用することが多いのですが、これらの薬は排卵を抑制するので妊娠を希望する方には使えません。

子宮内膜症患者の30~50%が不妊になるといわれています。妊娠を希望される方は妊活しなければなりませんが、激しい月経痛や性交痛に耐えながら妊活をするというのも大変です。不妊治療はタイミング法、人工授精、体外授精などの生殖補助医療(ART)へと段階的にステップアップしていくことが多いのですが、重度の内膜症のある方は主治医の先生と相談して早めにARTに移行していったほうがいいと思います。妊娠できればそれは内膜症の治療にもなりますしね。

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