元廃校の美術館 10年前から住みついた野良猫が館内を案内してくれる!?「この雰囲気は、絶対夜に行った方がいい」

塩屋 薫 塩屋 薫

「北海道にあるディマシオ美術館、廃校を買い取ってディマシオという絵描きの絵を展示してるんですが、絵柄も相まって夜行くととても怖い。完全無人の美術館には猫だけがいて、勝手に電気がついたりする」と投稿した太刀川るいさん(@R_Tachigawa)。

館内を歩く動画には4万以上のいいねがつき、「行ってみたい」という声が続出。実はこちらの猫は副館長のようで…どんな美術館なのか、太刀川さんと美術館に話を聞きました。

夜の美術館へ行ける裏技は?

太刀川さんの投稿では「ちなみに普通は夜は行けません。裏技として隣接するキャンプ場に泊まるとチケットをくれるのでそれを使えばいけます。この雰囲気は絶対夜に行ったほうが良いと思います。夢なのか現実なのか段々曖昧になってくる。唐突に現れる猫がいい仕事してくれる」とのこと。

「なにこれ行きたい!」
「裏技があるのですね。昼間に見ても鬱々としてくる(褒)のに夜とは」
「美術館も素晴らしいですが夜廻りにゃんこも良いですね」
「女神転生の迷宮を歩いてるような気分になりそう」
「非現実を現実にそのまま出しましたって感じだ…」
「日本各地にある廃校のリノベーション方法としても、かなりユニーク」

リプ欄にはこのような声が寄せられています。親族の付き添いで2022年にこちらを訪れたという太刀川さんに、美術館の印象を教えてもらいました。

――改めまして、館内を歩いてみていかがでしたか?

最初は割とありがちな美術館だと思っていました。広告などではスッキリした絵柄の作品が紹介されていたのも大きいかもしれません。ところが、実際に行ってみると、どこか不気味でグロテスクな絵もあり、とても気に入りました。夜の雰囲気の中で見るのは本当に不思議な感じがします。

キャンプサイトから美術館まで全く灯りがないので、渡されたランタンを持っていきます。そういうのも含めて現実離れしています。少ないスタッフが手作業で運営しているのがわかって、とてもおもしろい美術館でした。

――特におすすめポイントはありますか?

世界最大の油絵は、実際に目にすると圧倒されて10分ほど見ていました。周囲を鏡で囲まれていて、絵が映り込むことで無限の広がりが生まれます。絵は映り込みを前提に描かれており、上下反対だった船が正しい位置になったり、半身だけの人が全身揃った姿になるなど、細かい工夫点がたくさんあり、おすすめです!

副館長の猫・マスクが案内してくれる?!

今回話題になった北海道・新冠町にある「太陽の森 ディマシオ美術館」は、廃校になった旧「太陽小学校」を再利用し、2010年にオープン。フランス幻想絵画の鬼才として知られる画家ジェラール・ディマシオの代表作を200点以上展示し、光と音による演出も楽しめるそう。同館専務理事の谷本晃一さんに、話を聞きました。

――夜の美術館の雰囲気が話題になっていますね!

元々が小学校ですので、一種肝試しのような心境になるのか、特に夜間の入館時には「怖い」といったお客さまの声はありました。中山間部で人口も1万人を切る行政区域内の、それも交通の便も悪い場所で「これだけ立派な小学校があったのだ」という驚きや「小学校としては可愛らしい建物」と楽しんでくださるお声もいただきます。

――今回の動画に登場する猫さんは副館長なのですね?

副館長のマスクはオスの18歳(推定)で、ここに来て10年近くになるかと。当館の理事長が動物をとても大切に思われる方で、迷い込んでくる何匹もの野良猫も大事に介抱しており、マスクもその中の1匹でした。今はマスクだけ残り、気まぐれですがお客さまへのご案内もしていますよ。撫でられるのが大好きで、マスクにとって美術館は大きな家です。

――なぜディマシオ作品に特化した美術館なのですか?

ディマシオは1978年に新しい表現とジャンルで鮮烈なデビューを果たし、1988年から1993年までに開催された日本国内展では、65万人を動員するほど人気が沸騰しました。パリでいち早く作品に魅了され、彼と交流を深めていた理事長との縁で「世界最大の油彩画(縦9m x 横27m)」を展示する美術館構想はその当時からありました。

場所探しに苦労しましたが、この美しい大自然の中で旧・太陽小学校と出会うことができ、体育館だったスペースに大きな油絵が奇跡的にピッタリとはまったことから、運命的に実現するに至りました。

――どんな空間づくりを重視されたのでしょうか?

ここ太陽地区は戦後の開拓地で、現在は僅か人口80人ほどの集落。まだまだ手つかずの自然が多く残る地域です。都会では目にすることのない日高山脈の麓の美しい自然と、ディマシオの描く幻想宇宙の共存を重視し、自然光を余すことなく取り入れることや、自然を身近に感じることのできる一体感を大切にしています。

元来小学校は窓が多く、子どもたちが使いやすいように設計されています。お客さまには都市部の美術館のように壁に閉じ込められた薄暗い空間で静寂に過ごすことよりも、リラックスして気ままに、自由に楽しめる空間になるようにと考えています。

――これまでロケなどに使われたことはありますか?

2017年にラブコメ映画『PとJK』の後夜祭シーン撮影に使っていただきました。道内で最も早く、館内全ての撮影自由を打ち出した美術館ではないかと思います。多くのアンティーク家具に囲まれた空間は、実はコスプレイヤーにも人気の撮影地となっていて、一般のお客さまも自由に撮影が楽しめる環境となっています。

――美術館は16時までとのことですが、夜の美術館に入れる条件は?

2022年夏より「泊まれる美術館」を実現する宿泊事業として「グランピングビレッジ」をオープンしました。冷暖房完備の専用宿泊棟で過ごせ、1棟あたり最大4名の宿泊が可能です(全3棟・1日3組限定)。現在はご宿泊のお客さまのみ夜21時まで、何度でも自由にナイトミュージアムをお楽しみいただけますよ。

◇ ◇

「太陽の森 ディマシオ美術館」の2023年の開館日は、3月31日~11月26日の金・土・日・祝(無休期間あり)。通常の開館時間は10時~16時ですが、夜ならではの体験にも注目です。敷地内には廃校のプールをリノベーションした「ガラスの美術館」もあり、全面の窓から差し込む光のなかで、ガラス芸術の巨匠ルネ・ラリックらの作品鑑賞も楽しめます。入館料は1700円、グランピングの宿泊料金は、夕朝食付きプラン1名47000円、2名79000円ほか(各1棟料金)。

■「太陽の森 ディマシオ美術館」公式サイト https://dimaccio-museum.jp/
■「グランピングビレッジ」公式サイト https://www.dimaccio-glamping.jp/
■太刀川るいさんTwitter  https://twitter.com/R_Tachigawa

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース