3月17日公開の映画『零落』(竹中直人監督作)に出演している趣里(32)。2023年後期放送のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインに抜擢されたことでも話題だ。
デビューは2011年。バレエダンサーの夢を諦めて進んだ道が今の俳優業。留学先のイギリスでアキレス腱断裂と足首の剥離骨折という怪我を負い、大きな挫折を味わった少女が、今や国民的ドラマと言われる朝ドラのヒロインを掴み取った。「死んだ方がまし!」。失意の中で帰国した当時そう思った自分に、現在の趣里はどんな言葉を贈るのか。
挫折の過去も徐々に消化
4歳からクラシックバレエの道に進み、15歳でイギリスに留学。17歳で大怪我を負うまでは、自分はバレエダンサーになるものだと思って生きてきた。失意の帰国後に大検を取得するものの、やりたいことは何もない。そんなときに門を叩いたのが、俳優・塩屋俊主宰の俳優養成所アクターズクリニック。そこから今に繋がる俳優としての道が開けた。
バレエに対する未練がないかと言われたら、揺らぐ気持ちはある。しかしそれも徐々にではあるが薄まってきている。「今回の『零落』で演じたちふゆもそうですし、『ブギウギ』もそうですが、体で表現するようなシーンがあると、バレエをやっていて良かったなと思うことが多々あります。かつてのバレエ経験を今のお仕事で活かせていると思うと嬉しい。今もバレエを続けたかったという心残りはありますが、ちょっとずつそれがいい形で自分の中で消化できている感覚もあります」と打ち明ける。
掴んだ朝ドラヒロイン
挫折というマイナスも、今ではプラスに転じてきているように感じる。「精神的にも肉体的にもとても鍛えられたと思います。怪我で夢を断念せざるを得ない経験をしたからこそ、目の前にあることを精一杯やるという考え方になりました。明日怪我をして動けなくなることだってあるわけですから、先々のことをプランして心を疲れさせても仕方がない。まずは目の前にあるやりたいこと、やるべきことを全力で頑張る。この思考はあの時の経験が大きく響いていると思います」。怪我という岐路が人生観を大きく変化させた。
目の前にあることにガムシャラに向き合い、臨んだ朝ドラオーディション。掴んだヒロインという大役に「もうビックリ。自分が一番驚きました。そんなことってあるのかなって。撮影時期が近付くにつれて、本当に私が務めるんだという実感が込み上げます。皆さんが毎朝見てくださるドラマですから、プレッシャーももちろんあります。友人たちからも『絶対に見るね!』と言われたりして」と緊張するが、ここでもバレエ経験が役立ちそうだ。
2023年は"笑"の1年に
演じるのは梅丸少女歌劇団(USK)に入団し、その後歌手の道を歩み戦後のスターとなる花田鈴子。撮影準備として趣里はボイストレーニングやダンスレッスンに汗を流している。「それこそ踊りが沢山出てくるので、ここにもバレエが繋がってきたかと思うと、どんな経験も無駄ではないと実感しています」としみじみ。
飛躍の年になるであろう今年2023年のモットーは“笑”だという。「笑っていればなんとかなるという精神で、辛い時でも面白いことを思い出して笑ってなんとかやっていきたい」と抱負を述べながら「あの時の自分に言葉を贈るとするならば“大丈夫だよ!”と言ってあげたいです。怪我をして挫折して、当時の自分の精神状態は地獄でした。でも元気に生きている、それだけでもありがたいこと。落ち込んでいたあの頃の自分に“大丈夫!なんとかなるから!”と声をかけて気持ちを楽にしてあげたいです」。今年掲げた信条に偽りなく、趣里は満面の笑みを浮かべて教えてくれた。