「魔入りました!入間くん」金澤まいインタビュー 「ギョ」しか言わない異色の人気キャラを演じる声優の仕事論

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規格外キャラの声優に直撃

魔界にある悪魔が通う学園で起こるトラブルと人間関係を描く異色の学園ファンタジー、『魔入りました!入間くん』(以下、入間くん)。単行本は発行部数1000万部以上、公式Twitterのフォロワーは16万人を超える人気コンテンツだ。

NHKEテレで放送中のアニメは現在第3期に入ったが、個性的な登場人物のなかでも異彩を放つキャラクター「アンプシー・ナフラ」(以下、ナフラ)が、そのユニークな容貌と行動でSNSでも話題が絶えない。

ナフラは紫色のローブの下は性別もわからないという謎のキャラクター。セリフは主に「ギョ」しか話さず、常にムシがたかっているほどの激臭を放つ。

本記事ではナフラ役の声優、金澤まいさんに直撃した。「ギョ」だけのセリフをしゃべるのって一体何を考えてやっているのか?...というユルい疑問をぶつけてみると、かなり深いアニメ声優の人生が見えてきた。

「入間くん」の現場の熱気

ーー 今日は「入間くん」アニメに登場するたびSNSで話題になる、ナフラの演技について伺いたいと思います。

金澤 はい(笑)。強烈なキャラですからね。

ーー いきなり聞いてしまいますが、セリフを「ギョ」だけで演じるのは大変じゃないですか?

金澤 まあ、これを見てください...(台本原稿を見せる)

【原稿には日本語でセリフが書かれ、その横にすべて「ギャ」行の文字に直されたセリフが書かれていた】

ーー (え? 何これ...)

金澤 いわゆる「ナフラ語」の原稿です。アニメ13話の予告で、25秒間ノンストップで「ナフラ語」をしゃべったときのものです。脚本の方が日本語とナフラ語を別で書いてくださっていたのですが、大量の「ギャ」行が連なっていると何をどう喋っているのか自分でもわからなくなってしまい...私は日本語のセリフに「ギャ」行のルビをふって読んでいました。

金澤 しかも、そこに感情を乗せていくので(笑)。特に大変なのは、ナフラ語が「何を言っているのか全くわからない」シーンと、「言いたいことがなんとな~くわかる」シーンがありまして...その演じ分けは難しいですね。

ーー 監督さんからはどんな演技の指示が入りますか?

金澤 それが、型があるようでないんですよね。「ギョ」が基本だけど「ピャ」もしゃべっていいとか(笑)。NGが出るときは、「もっと全力でやってくれ!」というときが多いです。

ーー かなり自由に演じているキャラクターなんですね。

金澤 ナフラが自由なキャラというよりも、「入間くん」の現場全体が、そういうはっちゃけた雰囲気なんですよ! 例えばメインキャラのウァラク・クララには6人の家族がいるんですが、その家族全員を朝井彩加さんがひとりで演じています(笑)。ぶっ飛んだ演出で業界内でもすごく話題になっていました。

ーー 実際、現場に入ってみていかがでしたか。

金澤 登場するキャラがみんな個性的なうえに、2019年からいままで続いているので声優さんとスタッフさんの団結がすごく固いですね。学園ファンタジーコメディですが、悪魔たちの「欲」や「野望」も強く表現しようとしている作品。だから様々な感情が溢れていて、声優さんは「今日は何をかましてやろうか?」って感じで、独特なテンションがあって。ぜひアニメ版ではそれぞれの声優さんの演技を見ていただきたいです。

子役、声優、ナレーター、また声優へ

ーー 声優さんにはいろいろな役作りのスタイルがあるといいますが、金澤さんの場合は?

金澤 とにかく台本を読みますね。ひたすら読んでいくと、キャラが目の前に見えてくるんですよ。演じるときはそのキャラに話しかけるって感じです。収録中は画面をほとんど見ないで、「ボールド」っていう「今話してください」という意味のマークだけ視界に入れてしゃべってます。

ーー ちょっと驚きです。

金澤 養成所の先生に「画面を見るなっ! 声優はその向こうに声を届けるんだ」って教えていただいて、それからこのスタイルになりました。あと、マイク前でめっちゃ動く(笑)。動いたほうがいい声が出せるタイプです。

ーー 声優としてのお仕事は何年ですか。

金澤 23歳で事務所に所属してから、7年です。その前は、高校を卒業して声優の専門学校に2年、それから事務所の養成所に2年。

ーー 声の仕事を目指したきっかけは?

金澤 小学生のときですね。ずっと子役をやらせていただいていたんですが、小学校中学年に辞めたあとにアニメが好きになって「そうだ、今度は声優になろう」と。

ーー なぜ声優だったのでしょうか?

金澤 当時は「鋼の錬金術師」「NARUTO」「BLEACH」「シャーマンキング」が好きで。女性声優さんが男の子を演じているのを見て、”声優さんって、何にでもなれるじゃん!”って思ったんですよね。小学校の卒業文集にも「夢は声優」って書いてました。

ーー 早い時期に決断しましたね。それからブレずにいままで?

金澤 声のお仕事からはブレてません。でもけっこう紆余曲折があって(笑)。専門学校や養成所時代に、同級生が先にデビューしていくんですよね。けっこう焦りました。それで「私はアニメ向きの声じゃないのか?」って考えて、「じゃあ、ナレーターを目指そう!」と。

ーー同じ声の仕事のなかで方針転換したわけですか。

金澤 今の事務所もナレーターのお仕事が多いので所属させてもらったんです。そのおかげで、ラジオや映画の吹き替え、イベントのMCなど色々なお仕事をさせてもらっています。

ーー アニメの仕事が増えたきっかけは?

金澤 事務所へ入って、アニメのオーディションに出させていただいて、メインの役に受かってから増えていきました。チャンスは巡ってくるんだな、と思っています。

私の声はヘンなんだ! 初メインキャラ役の衝撃

ーー いままで演じたなかで印象的な役は?

金澤 はじめてメインキャラに選んでいただいた「三者三葉」の小田切双葉です。

ーー 初の主演だから、いっそう気合が入りますね。

金澤 そうです。演技についてすごい発見があったんですよ。双葉はいわゆる「元気キャラ」で、私は自分が思う「王道のかわいらしい演技」を組み立てて望んだ現場だったんです。でもそこで、スタッフさんや共演者たちに「ヘンな声だね」って言われまして(笑)。全力でかわいい声を出していたのに。

ーー ショックだったのでは?

金澤 複雑ではありましたね(笑)。でも「そうか!」って感じでした。これからは王道じゃないことをしよう! って。

ーー 声優の養成所でアニメ声ではないと気づいてナレーションの道に進み、アニメに戻り、そこでもカワイイ声ではないということに気づかされて。波乱万丈ですね。いまのナフラは「ヘンな声」が活きまくる役ですね。

金澤 ナフラはお世話になっているスタッフさんが「入間くん」の現場にいらっしゃって、オファーしていただいたんですよ。もう楽しくてしょうがないです(笑)。

「猫さま」との日々

ーー オフの過ごし方は。

金澤 インドア派です。「東方Project」の同人サークルをやっているので、IPadでイラストを描きながらゆっくり実況(東方Project二次創作の派生コンテンツ)の宇宙の雑学系Youtubeを流しているのがオフの過ごし方(笑)。

あと、生活に欠かせないのは「猫さま」ですね。もちろん名前はあるんですが、おおやけには名前は出していません。というのも...「犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい」という毎回90秒のショートアニメに出演させていただいたとき、ネコは名前じゃなく「猫さま」って呼ばれているんですよ。その呼び方が飼い主以外の人にも共感できると思って、それにならっています。

ーー いつから飼っていますか?

金澤 一昨年の秋から。保護猫活動をされている方から生後3カ月のときに引き取りました。ノラだった親猫と一緒に保護されたらしいです。

ーー 美形ですね!

金澤 私は実はぶちゃいくな猫のほうがタイプで...。ピンと来る子を1年以上探していたんですけど、いろいろな御縁でこの美形ちゃんを家族に迎え入れることにしました。でも一緒に暮らしてはじめたらすぐ「ウチの子が一番!」ってなりました。声優人生と同じで、自分が最初に狙ってたのと真逆の方向に楽しいことがあるんですね(笑)。

生まれ変わったらこの声になりたい

ーー 生まれ変わったらこんな声になりたい、という声優さんはいますか。

金澤 花澤香菜さん。「犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい」で共演させていただいたんですが、圧倒されましたね。透明感があって、かわいくて、なのに面白い!

ーー これからの目標にしている声優さんは?

金澤 女性じゃないんですけど…『ケンガンアシュラ』でご一緒したチョーさんです!

ーー 『ワンピース』のブルック役や、NHKの「いないいないばあっ!」のワンワン役を演じている、名脇役といえる声優さんですね。なぜチョーさんを目標に?

金澤 声の説得力、ですね。チョーさんとは「犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい」でもご一緒させていただいたんです。タクシーの車内で、運転手さんが飼っていた猫の思い出話を聞く、という回なんですが、90秒のアニメなのに運転手さんの長い人生を感じたんです。その演技が忘れられなくて。どうしたら人生を声に乗せられるんだろう? ってずっと考えています...まだわかりません(笑)。それを目指していくのが自分の道なのかな、と思います。

◆金澤まい(かなざわ・まい) 1月19日生まれ。埼玉県出身。主な出演作に『三者三葉』小田切双葉役、『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』松本ひで吉役、『地縛少年花子くん』もっけ役、『あそびあそばせ』岡さん、副会長、遊び人四天王役、『ケンガンアシュラ』竹丸美姫役など。『チャイルド・プレイ』アンディ役など吹き替え、他にもナレーターとして活躍中。
▽Twitter
https://twitter.com/kanamai0119

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【放送情報】
アニメ『魔入りました!入間くん』第3シリーズ
毎週土曜午後6時25分~NHK Eテレにて放送中
▽公式サイト
https://www.nhk.jp/p/iruma3
▽Twitter(商品・イベント関連)
https://twitter.com/nep_irumakun

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