「家族を噛むからいらない」飼い主から保健所へ連れていかれそうになった黒猫もんちゃん 保護猫カフェで出会いを待つ日々

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

飼い猫だったはずなのに、保護猫になってしまった猫が兵庫県にいます。もんちゃん(推定7歳)です。元は人間3人と猫2匹で暮らしていたものの、引っ越し先に1匹しか猫を連れていけないと保健所へ連れていかれそうになっていました。お金もかかるし、赤ちゃんが生まれた途端、家族を噛むようになったからもう「いらない」と。

それを哀れに思ったのが明石市で保護猫カフェ「あすなろ」を経営する新田彩貴さんです。家族を説得しようと試みましたが、ついに家族はもんちゃんを手放します。飼い猫が「保護猫」にランクダウンした瞬間でした。2020年5月のことです。

もんちゃんの問題行動の理由

元の飼い主に月々の生活費を支払ってもらい、もんちゃんは新しい家族を保護猫カフェ「あすなろ」で待ちます。生活費を貰っていても、猫には出費がつきもの。特にもんちゃんは猫風邪をひいてしまいましたから、いただいている生活費以上に治療費がかかりました。それでも保健所に連れていかれることを考えると、新田さんは高いとは感じません。

何より、新田さんはもんちゃんが悪い子に見えなかったのです。確かに噛むクセはありますが、何かを伝えたい時だけガブリ。でも、体力がない高齢スタッフに噛みつくことはありません。保護猫カフェのお客さんも噛まないんです。

よくよく観察していると、急な動きに反応しているよう。動きがスローだともんちゃんは噛まないのです。このもんちゃんの様子に新田さんは、こう考えました。

「虐待とまではいかなくても、足で蹴られるようなことがあったのかも…」

もんちゃんは元の家族から粗末に扱われていた可能性が高い。改めてもんちゃんを引き受けて良かったと新田さんは強く思いました。

さて、保護猫カフェ「あすなろ」でのもんちゃんはというと、他の男の子とは上手に付き合えません。だから、広間でなく小さい部屋のヌシになり、おとなしい猫とのんびり過ごします。接客上手で、抱っこされたり被り物に挑戦したり。人間と触れ合っていくうちに、当初の荒くれ者の姿は鳴りを潜めていきます。

もう二度と「いらない」と言われないために

「もんちゃんは、もう一度人間を信じてみようと思ってくれたのかな」

人間を信頼し始めたもんちゃんは、「あすなろ」の人気者に。人気者ですから、何人も家に迎えたいというお客さんが現れたんです。けれど、新田さんは首を縦に振りません。

長毛種の猫はお手入れが大変な上に、もんちゃんは体が大きい。お世話には体力も時間もかかりますから、若い世代に任せたいと考えたのです。もう二度と「いらない」ともんちゃんが言われないよう、慎重にならざるを得ませんでした。

そうは言っても、都合のいい家族がすぐ現れるわけもなく…。何度か譲渡会に参加もしましたが、もんちゃんに最適な家族は見つかりません。気が付けば、もんちゃんを迎えて1年以上が経過していました。2021年7月に加古川市で開催されたねこまる南加古川さん主催の譲渡会も、新田さんはダメだろうな…と思っていたです。こんな暑い日に、長毛種の猫が魅力的に映るわけがありません。

でも、この日は違いました。若い夫婦が譲渡会へ見学に来ており、とても熱心に参加した保護主たちと話し込んでいます。新田さんのところにもやってきて、色々と質問をしてくれました。新田さんは「こんな夫婦のいる家庭が理想的だな」と思ったのだそう。ちゃんと猫のことを知ろうとしてくれ、猫について考えてくれる家族。

運命の出会い

この夫婦は1時間ほど会場の隅で、何やら話し合っていました。どの猫を迎えるのだろう…。保護主たちは固唾を飲んで、夫婦の動向を見守ります。ついに動き始めました。夫婦がやってきたのは、何と新田さんの前。そして言ったんです。

「もんちゃんを我が家に迎えさせてください」

この言葉を聞いた時、新田さんの目から思わず涙が零れ落ちました。ようやくもんちゃんが幸せになれる。そう思うと、胸がいっぱいになったのです。

この夫婦が、今のもんちゃんのお父さんとお母さん。トライアルで初めて家に入れてもらったはずなのに、もんちゃんはリビングのソファーに一直線。ズデーンと寝ころびます。最初からこの家の猫だったかのよう。

T家に迎えられてからのもんちゃんは、「あすなろ」にいたころよりずっと美男になり、モフモフ感もアップ!写真からも大切にしてもらっていることが分かります。夫婦はもんちゃんのいなかった生活が思い出せないほど、もんちゃんとの暮らしに満足していると言います。

命のリレー

実はもんちゃんのように、元飼い猫が保護猫になるケースは年々増えてきていると新田さんは言います。気軽に「保護猫カフェに引き取ってもらえば良い」と持ち込む飼い主がいるのだそう。この現状に新田さんはこう言います。

「私たちがやっているのは、猫をただ可愛がることではありません。保護猫を新しい家族につなげる、”命のリレー”なんです。この命のリレーには、とても大きな労力とお金がかかっていることを知ってください」

保護猫カフェ「あすなろ」では、今ももんちゃんのように新しい家族を待つ元飼い猫が複数在籍しています。この子たちが二度と「いらない」と言われないためには、一人ひとりが命や家族について考える必要があるのではないでしょうか。

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【保護猫カフェ あすなろ】
〒673-0023 兵庫県明石市西新町2丁目16−8
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