人気キャラの再現度が見事『進撃の巨人』ミュージカル開幕 「壁を越えてゆけ!」と圧倒的パフォーマンスで世界観を表現

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

世界累計発行部数1億1千万部を突破する諫山 創の漫画「進撃の巨人」(講談社「別冊少年マガジン」)を舞台化した、『「進撃の巨人」-the Musical-』が1月7日、大阪・オリックス劇場で開幕。前日には公開ゲネプロがおこなわれ、ミュージカルの手法を巧みに活かした、スケール感あふれるダークファンタジーの世界が披露された。

人を食らう巨人から逃れるため、巨大な三重の壁を築き、100年間平和に過ごしてきた人々。突如現れた超大型巨人により、多くの命が無残に奪われ、再び混乱を極める――。開演前、場内には穏やかな鳥のさえずりと、不気味な巨人の足音が響き、壁の中にいるような錯覚に。その臨場感は舞台ならではだ。

演出は、ボーカルダンスグループ「PaniCrew」のメンバーであり、演出家としての活躍も目覚ましい植木豪。脚本は畑雅文、音楽監督はKEN THE 390、作詞は三浦香が担当している。壮大な音楽や、ストリートダンスなど多彩なジャンルの踊りがミックスされたパフォーマンスが次々と展開、恐ろしい巨人に立ち向かう兵士たちの熱量と重なる。特にさまざまなフォーメーションで魅せる群舞に、コーラスの圧がかぶさる様は圧巻。「進撃の巨人」がミュージカルになる必然性を実感した。

壁外の世界に憧れ、調査兵団を目指すエレン・イェーガー役は岡宮来夢。「駆逐してやる!」と巨人への憎しみを募らせる鋭い眼、「立体起動装置」を装着し舞台を縦横無尽に駆ける姿が頼もしい。父のグリシャ・イェーガー(唐橋充)や、母のカルラ・イェーガー(舞羽美海)との芝居も見どころで、特に母との壮絶な別れは原作ファンもグッとくるはず。

訓練兵として逸材と言われる腕を持つミカサ・アッカーマンは高月彩良。エレンとの深い絆の場面もきちんと描かれ、首に巻くマフラーや表情から彼を必死に守ろうとする想いが静かに伝わってくる。

知性はありながら実技が弱く、自分のもどかしさに葛藤するアルミン・アルレルト役の小西詠斗。ビジュアルからアルミンそのもので、心揺さぶる歌声がエレンの歌声と重なる場面はやはり盛り上がる。

また、ミュージカル『薄桜鬼』など多くの舞台で活躍する松田凌が、人類最強の兵士と言われる人気キャラクター、リヴァイ役の底知れぬ魅力を的確に表現。特に立体起動装置で飛び回る姿は彼そのものだ。調査兵団の団長、エルヴィン・スミスを演じた大野拓郎も、蓄えたキャリアを活かせるようなリーダー像をしっかりと構築し、豊かな声量の歌声でも魅せた。

そのほか、ジャン・キルシュタイン役の福澤侑、マルコ・ボット役の泰江和明、コニー・スプリンガー役の中西智也、サシャ・ブラウス役の星波、ハンネス役の村田充、ハンジ・ゾエ役の立道梨緒奈など、それぞれがキャラクターの特長をつかんで役になり切り、キレのあるダンスなどでもその心情を溢れさせる。

そして忘れてならないのが「巨人」。映像だけに頼らないアナログかつ巧妙な演劇的手法や、最新テクノロジーとギミックを駆使した表現で、ヌッと登場する原作の不気味かつダイナミックな怖さを追求。それら巨人とキャストの計算された動きにも目を見張り、死闘の緊張感が伝わってくる。次第に観ている方も恐怖と憤りが芽生え、人類の切なる「希望」に共感。最後はキャスト一丸となった力強いパフォーマンスで、壁を越え、自由を求める想いが舞台全体に炸裂し、胸を熱くさせられた。

本作はオリックス劇場にて9日まで。その後、1月14日~24日まで日本青年館ホールで上演される。なお、7日13時公演・18時公演、23日13時公演・18時公演、24日13時公演千秋楽はライブ配信も実施(ディレイ配信あり)。詳しくは公式サイトへ。

公式サイト:https://www.shingeki-musical.com/

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