関西大手私鉄において、プロ野球球団といえば阪神電気鉄道がオーナーの阪神タイガースを思い浮かべることでしょう。しかし、かつては他の関西大手私鉄もプロ野球球団を保有していました。
圧倒的な人気を誇る阪神タイガース
関西大手私鉄で野球球団といえば、やはり阪神タイガースが一番です。現存するプロ野球12球団のうち、巨人に次ぎ2番目に古い歴史を持ちます。
そんな阪神タイガースを語るなら、ホームスタジアムの阪神甲子園球場は外せません。甲子園球場は1924年に日本初の本格的野球場として誕生しました。現在も最大級の野球場であり、緑の天然芝が美しいです。
また、阪神タイガースの親会社である阪神電気鉄道が、甲子園球場のオーナーであることも大きいといえるでしょう。プロ野球球団のなかでグループ会社も含めて自前で球場を持っている球団は、阪神、オリックス、ソフトバンク、西武、中日の5球団にとどまります。
阪急、近鉄、南海も球団を持っていた
現在、関西大手私鉄のなかでプロ野球球団を所有しているのは阪神のみですが、かつては阪急、近鉄、南海も球団を持っていました。また、阪神はセ・リーグに属していますが、他の3球団はパ・リーグに所属していました。
そのなかで最強といえるのが、阪急ブレーブスです。阪急は1988年にオリエント・リース(現オリックス)に譲渡する52年間に、リーグ優勝10回、日本一3回に輝きました。1970年代には、3年連続日本一を達成しています。
緑色のユニフォームに身をまとった南海ホークスは1950年代と1960年代にそれぞれリーグ3連覇を達成しましたが、1970年代後半から優勝から遠ざかり、長らくBクラス(4位以下)に甘んじることに。
球団創設50周年にあたる1988年に難波再開発にともない、球団をダイエーに売却。その後、2005年に親会社がソフトバンクに替わりましたが、「ホークス」名は受け継がれています。
近鉄は関西大手私鉄4球団のなかではもっとも後発で、1949年に「近鉄パールス」として登場。しかし当初は低迷が続き、年間103敗したシーズンもありました。
1960年代に近鉄バファローズに改称。その後、4度のリーグ優勝を果たしたが、最後まで日本一を達成することはありませんでした。2001年に最後のリーグ優勝を果たしましたが、3年後に球団は消滅。オリックスに吸収合併されました。
このように、阪神以外は球団が消滅してかなりの年数が経過したが、いまは幸いなことにYouTubeで、かつての雄姿を見ることができます。
◆新田浩之(にった・ひろし) 1987年兵庫県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科修了。関西の鉄道や中欧・東欧の鉄道旅行をテーマとした執筆活動を行なう。最新刊として2022年12月に「関西の私鉄格差」を刊行。私鉄王国・関西を走る近鉄・阪急・南海・京阪・阪神の大手5社について、車両、ダイヤ、運行、路線、駅、サービス…などのキーワードから、それぞれの魅力を読み解いている。
KAWADE夢文庫。224ページ、792円(税込)。