オッドアイの猫 出会いは里親探しアプリ→区庁に届け出 韓国・ソウルの保護猫事情

古川 諭香 古川 諭香

野良猫や保護猫を守る仕組みは、国によって違うもの。韓国・ソウル市在住のnan_beomsigiさんは2022年1月、遺棄などで保護された動物を探せる「포인핸드(Pawinhand:ポインヘンド)」というアプリを通して、ボムシクくんと出会いました。

アプリで情報を知って保護猫をお迎え

韓国・ソウル市では野良猫にご飯をあげ、世話をする人が多いそう。市民は自宅の敷地内でない場合には与えた食べ物を放置しないなどのルールを守りながら、捨て猫を一時保護したり、怪我をした猫を治療してリリースしたりし、飼い主を見つける活動を日常的に行っています。

「それを知り、最初は少し驚きましたが、ソウルの冬は氷点下10度くらいになるほど寒いので、放置したら猫たちは生きていられません。気候や国民性、文化に関係があるようです」

nan_beomsigiさんが使った「포인핸드(Pawinhand:ポインヘンド)」は保護時の状況や場所、健康状態、推定年齢、施設の連絡先などが掲載されており、自治体と連携しています。

ボムシクくんは川沿いの遊歩道で保護された、推定3歳の男の子でした。

分かっていたのは、発見場所のみ。生い立ちや正確な年齢などは不明でした。

韓国では保護された場所によって、里親申請をする管轄施設や手続きが異なりますが、どの施設でも国の正式な手順を踏んで里親登録されるそう。飼い主となった人はその後、自費でマイクロチップを埋め、必要な治療やワクチンを受けさせます。

nan_beomsigiさんの場合は、ソウル市ヤンチョン(陽川)区の管轄にある動物病院でボムシクくんを引き取りました。

丸顔で中毛のボムシクくんは、純血種の血が混じっているような見た目。保護施設側はターキッシュアンゴラではないかと推測しました。

ソウルでは猫を迎えた際、最寄りの区庁に届け出が必要。指定の管轄施設で猫を譲渡してもらったnan_beomsigiさん宅には後日、ヤンチョン区庁から動物登録証が届きました。

動物登録証とは登録番号や猫種、性別、毛色、去勢の有無、飼い主の連絡先などが記載されている猫の住民登録証のようなもの。nan_beomsigiさんのもとには数日後、区庁から首輪などにつけられる認識票も送られてきました。

こうして、ボムシクくんは正式に家族の一員に。

「寅年に迎えたのと、歩く姿が虎のように美しいので、名前は韓国語で虎を意味する『ボム(범)』を用いて名付けました」

表情も家猫らしくなった愛猫と長く一緒にいたい

自宅に迎えた日、ボムシクくんは警戒することなく、すぐキャリーケースから出てきて、ご飯を食べ、トイレも使用。

「部屋の隅に隠れることもありましたが、初日からベッドに上がるなど、適応が早かったので、誰かが育てていた猫に違いないと確信しました」

当時、ボムシクくんの目の下は涙と目やにで黒く、目の周りは真っ赤な状態。表情は険しく、左足には骨の形が分かるほど激しく脱毛している箇所があったため、nan_beomsigiさんはお迎え当日に動物病院へ行き、様々な検査とワクチン接種をしてもらいました。

「初対面時から、目の下が涙やけで黒かったです。数件の病院で診てもらい、注射や投薬治療もしましたが、1番効果があったのは目薬。原因は複合的なもののようで完治は難しいと言われました」

現在は月に1度ほど通院して目薬を処方してもらったり、毎日、目の下を綺麗に拭いたりし、悪化を防いでいます。

「獣医の勧めでおやつを断ち、食物アレルギー用のフードをあげ始めて、症状は改善してきました。最初は治してあげられないことに落ちこみましたが、今はそれもボムシクの個性だと捉え、できることを続けています」

一緒に暮らす中、体調だけでなく、表情や見せてくれる仕草にも変化が。用心深く、怖がりな性格は迎えた頃と変わらないものの、そばにいてくれることが増え、帰宅時には喉を鳴らしながらお迎えしてくれるようになったそう。

「ゴロゴロしながら、手や髪をグルーミングしてくれますが、こちらから撫でると、大抵手で止められ、気分次第で許可されます(笑)」

気まぐれなところはあるものの、ボムシクくんはたしかに心を許しており、ベッドの真ん中で無防備に眠るようにもなりました。

「その姿を見ると、とても幸せを感じます。荒々しかった表情も、今では家猫らしい柔らかいものになりました。外猫と家猫の表情が違うのは、健康状態によるものが大きいのだろうと感じています」

とにかく健康で、長く一緒にいてくれることが1番の願い――。そう語るnan_beomsigiさんいわく、韓国では「포인핸드(Pawinhand:ポインヘンド)」の他にも、近隣にいる保護猫や野良猫の情報を共有するアプリがあり、活発な情報交換がなされているそう。

こうした他国の保護猫事情を知り、自国で根付いてほしい猫助けも考えていきたいものです。

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