2022年12月に開催されたM-1で「あるなしネタ」からの毒舌漫才で優勝し、過去最多の7261組から第18代目の王者となったウエストランド。2人は岡山県津山市出身の同級生コンビだ。
ボケを担当するのは河本太。「河本」という名字は全国的には「かわもと」と読むことが多いが、河本太は「こうもと・ふとし」である。
「河本」は山陽地方から関西にかけて集中している名字で、実は、全国一「河本」の多い岡山県では「河本」の9割近くが「こうもと」と読む。そして、隣接する兵庫県でも4割が「こうもと」で、年配の方なら相生市出身の河本敏夫(こうもと・としお)という政治家を記憶している人も多いだろう。
しかし、両県以外では圧倒的に「かわもと」と読むことが多い。そのため、全国を集計すると「かわもと」が8割弱、「こうもと」が2割強となっている。
因みに岡山県で最も「河本」が多いのが河本太の出身地である津山市と、津山市に隣接する勝央町で、ここではほぼ「こうもと」である。
なお、名字としては「河本」よりも「川本」の方が多く、「川本」も広島県を中心に西日本に広がっている。名字では「河」と「川」には意味の違いはなく、「河本」は「川本」同様、「川の上流」といった場所を指している。
一方、ツッコミ担当は井口浩之(いぐち・ひろゆき)。「井口」にも「いぐち」「いのくち」という2つの読み方があり、「いぐち」が多い。岡山県でも「いぐち」の方が圧倒的多数である。
「井口」とは文字通り「井」の「口」という意味である。「井」というと井戸を連想する人が多いが、時代劇に登場するような井戸が広がったのは江戸時代以降。名字はもっと古くからあった。
室町時代以前、「井」とは生活に必要な水を得る場所全般を指していた。田んぼに水を引く用水路や、川で水を汲む場所が「井」である。そして、「口」は入る場所を指している。つまり、「井口」とは川から用水路に水を取り込む取水口を指していることが多い。そうした場所が「井口」と呼ばれ、その近くに住んだ人が「井口」を名字とした。
川の上流の「河本」から流れてきたネタを、「井口」が取り込んで多くの人に届けている。