来年3月に文化庁が移転する旧京都府警本部(京都市上京区)には、市民にほとんど存在を知られていない地下通路があった。新町通と下立売通の地下で府警の建物同士を結んでいたが、文化庁移転に伴い入り口は施錠され、役割を終えた。どんな通路で、お向かい同士の建物を地下で結んでいた理由は何だったのか。
府警本部の旧本館は、昭和天皇の即位を記念して1927(昭和2)年に建てられた。地上3階、地下1階で、当時は地下通路はなかった。
その後、1974年に府警本部別館が下立売通を挟んだ南側に完成し、旧本館と結ぶ長さ45メートルの地下通路も同時に開通した。また、1995年に110番指令センターが新町通東側に完成し、同センターと旧本館も長さ33メートルの地下通路で結ばれた。
この地下通路、インターネットで検索しても、存在を示すサイトはわずかで詳細は記されていない。過去の京都新聞記事では、別館と110番指令センターの完成時、地下通路の存在について触れていない。
もしや、表沙汰にできない秘密の目的が-。建物を管理する府警会計課に聞いてみた。「資料を調べたが、昔のことで記録が残っていません」。ただ、特殊な使用目的はなかったという。
どんな時に使っていたのかベテラン警察官やOBに聞くと、「雨の日に使っていた」「夜は玄関が施錠されるので、地下を通った」。京都新聞記者も、夜間に事件や事故があれば担当課に取材に行くため通っていた。
実は、地下通路には府警のインフラが通っていた。各建物をつなぐLAN回線や内線用電話線などのほか、一部には上水道管もあり、設備の保守点検が必要だった。このため、人も通れる地下通路が存在していたようだ。
2020年7月に旧本館が京都府有資産になって以降、地下通路は使われていない。旧本館と別館をつないでいた地下通路は、今後モルタルを流し込んで埋められる予定だ。旧本館と110番指令センター間の地下通路は、文化庁側に壁ができ、行き止まりになるという。
今年8月、府警の許可を得て、110番指令センターの地下2階から地下通路に入った。既に電気は取り外され、真っ暗な空間が続いていた。床にはほこりがたまり、かび臭い香りが漂っていた。
ちなみに、現在の府警本部(上京区)は、地下2階まであるが、報道関係者は地下の立ち入りを制限されている。会計課によると、「別の建物とつながる地下通路はありません」とのことだ。