保健所からの猫の引き出しや野良猫の保護・TNR(※)活動に取り組むNPO団体「わにゃんこ愛媛」(愛媛県松山市)がこのほど、移動式手術室ニコワゴン「スペイクリニック愛媛」を始動させました。
移動式手術室ニコワゴンというのは、野良猫や保護猫など外猫の不妊去勢手術をいつでもどこでも行えるようワゴン車の荷室を改造し、獣医療機器を配備した移動式の手術室のこと。既に移動式手術室ニコワゴンを稼働させている「にじのはしスぺイクリニック」(岐阜県)の協力を得ながら、愛媛県内の野良猫たちの一斉避妊去勢手術を実施中です。
「わにゃんこ愛媛」代表の倉瀬奈々子さんは「令和2年度の全国における犬猫の殺処分数が各県ランキングで愛媛県は2位と多いエリア。殺処分を防ぐために全ての猫たちをボランティアが保護することは不可能です。そこで今回私たちがニコワゴンで愛媛県内を回り、野良猫を増やさないように不妊去勢手術を進めることができれば、確実に不幸な命を減らすことができるはずだと信じています」と話しています。
※TNR:Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻すこと
愛媛初のTNR病院を開院したNPOが10月から移動式手術室を始めた
「わにゃんこ愛媛」は、殺処分を減らし不幸になる猫たちをなくしたいという思いから2022年6月より愛媛県で初のTNR病院を松山市内で開院。しかし、遠方の人や車の運転ができない高齢者が猫を連れての来院が難しいという現実がありました。
「地域によりボランティアさんが代理で引き受けてこられることもありますが、やはり限界があります。移動式手術室ニコワゴンの特性を活かし地方に出向き、不妊去勢手術をしてあげたい、またその必要性についてもお話しできたらと思い、ワゴン車をお借りするなど『にじのはしスぺイクリニック』の先生にご協力をお願いしました」(倉瀬さん)
そこで、今年(2022年)10月から移動式手術室ニコワゴン「スペイクリニック愛媛」を始動。月に1回愛媛県内の各地域で2、3日間にわたり1日25匹ほどをめどに不妊去勢手術を行っているところです。
また、移動式手術室の機動性を生かすことで各地のTNR活動についても後押しできることを期待しているといいます。
「手術のために猫たちを移動させる手間がないため、手術後に地域に返す際の負担や心配も少なくなります。さらに猫たちに負担がかからないということは猫たちを病院に連れて行くボランティアさんや地域の方の負担も同時に減らすことができます。
今後は1人のボランティアが1000匹のTNRをするよりも、1000人ひとりひとりが1匹ずつTNRをできるような社会を目指しています。県内いろいろな地域を回りながら、不妊去勢手術の必要性や、そういったことを身近に感じていただけるよう啓発活動も同時に頑張りたいです」(倉瀬さん)
クラファンで不妊去勢手術費など支援を募る
現在「わにゃんこ愛媛」では、移動式手術室ニコワゴンを進めるため「READY FOR(レディフォー)」でクラウドファンディングにもチャレンジ中です。約600匹の不妊去勢手術費など400万円が目標。支援金は12月27日午後11時まで募ります。
クラファンについて、倉瀬さんは「不妊去勢手術を身近に知ってほしいために、手術代金をよりリーズナブルにしたいと考えました。TNRをしていますと、手術をうける野良猫は複数になることがほとんど。1匹でも多くの猫たちに不妊去勢手術を受けさせたく、手術金額の一部を基金としてわにゃんこ愛媛がご負担したいと思い、クラファンに挑戦しました。1匹1万円を5千5百円に下げるのでその差額4500円の600匹分、レディフォー手数料及びリターン品にかかる費用が支援金の内訳です」と話してくれました。
「殺処分されるために生まれてくる小さな命をなくしていきたい」
「わにゃんこ愛媛」から最後に…
「不妊去勢手術を無事に受けられた猫たちは、その後穏やかな猫生が送れると考えています。多頭飼育現場ではほとんどの猫が近親相姦です。飼い主さまや1人でも多くの方が不妊去勢手術の大切さについて知ってくださったら、これから先今のような悲劇を繰り返すことはない、と多頭飼育現場に入るたびに思います。
昨年(2021年)動物愛護法の改正により、行政は飼い主のいない猫の受け取りなどをしていないため、結果野良猫が増えています。殺処分数は減少しているように見えているかもしれないのですが、実際は県内のいたるところで野良猫が増え続けております。そのため一斉のTNRを速やかに進めたいと常に考えています。殺処分されるために生まれてくる小さな命をなくしていきたいです」
クラファン「わにゃんこ愛媛|愛媛のTNR活動を移動式手術室ニコワゴンで促進!」
わにゃんこ愛媛さんTwitterアカウント(@n_kurase)