雨上がりの夕方、濡れそぼった体を震わせる野良猫 近寄って鳴く姿に心が揺さぶられた 「『暖かいお家に入りたいの』と訴えかけるようでした」

渡辺 陽 渡辺 陽

民家の玄関先にたたずむ野良猫

あんずちゃん(2歳・メス)は、2020年の真夏、民家に住み着いた。千葉県に住むHさんは、スーパーと自宅との間にあるその民家の玄関前にいたあんずちゃんをたびたび見かけた。

「子猫のような小さな猫で、幼い顔つき。茶色のボブテイルの子でした。いつも大人しく玄関前に座っていて、まるで『ごはんくれないかな』と待っているように見えました」

あんずちゃんは、昼も夕方も、いつも何かを待っているようで、Hさんが「元気?」とか「暑いね」と話かけても逃げもしなければ近寄ってくることもなかった。正座する姿がいじらしかったという。

寒いの〜、暖かいお部屋に入れて

時が過ぎ、10月末のある雨上がりの夕方、あんずちゃんは雨に濡れて冷たくなった手脚をブルブルさせて、ニャーニャー鳴きながら近づいてきた。

「その姿はまるで『寒いの〜、暖かいお家に入りたいの〜」と訴えかけているようだった。Hさんはその姿を見て心が揺さぶられた。ただ、先住猫の茶々ちゃんは猫が苦手。一緒に飼うのは難しかった。

帰宅した夫にあんずちゃんの話をしたところ、「これ以上見ていられない。2階で飼おう」ということになり、夫は2階で使っていないケージを組み立て始めた。10月25日の朝、キャリーと洗濯ネットを持っていつもあんずちゃんがいた民家を訪ねた。民家の人に用件を伝えると、「えっ、野良だけどいいの?」と返事が返ってきた。

夫妻はちゅ〜るで誘き寄せ、洗濯ネットで保護した。

「その足で動物病院に行ったのですが、幸運なことに健康体でした。ただ、子猫だと思っていたら、歯の状態から生後半年〜1歳くらいだと言われ、かなり衝撃を受けました。体重は2.1kgしかなく、外の生活が厳しかったのだと思います。頬はこけ、鋭い目つきをしていました」

こうして、先住猫の茶々ちゃんは1階で、あんずちゃんは2階で暮らすことになった。

大きなゴロゴロ音を鳴らす人懐っこい猫

あんずちゃんは家に来て半日もしたら、夫妻に慣れて喉をゴロゴロ鳴らし、用意しておいたベッドでくつろいだ。

「ゴロゴロ音がとても大きくて驚きました。人間の手も恐れず、人懐っこい子だと思いました」

2、3カ月の間はトイレ以外の場所でオシッコをしてしまうことがあったが、大きめのトイレに変えて、いつもきれいな状態にしておいたら粗相はなくなったそうだ。

性格はおっとりしていて、すぐゴロゴロいう。人間が大好きな寂しがり屋さんだという。時々、臆病で警戒心が強い元の野良の部分を見せることがあるが、Hさんは「大切な家族」だと言う。

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