“世界一まずい”チョコレートとは?そんなのあるの? 海軍の兵役時代に食べたという投稿が話題に

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「世界で一番まずいチョコレート。
チョコレートは良い軍用食品です。 軽くて熱量が高いので普及しやすい。何より、疲れた時食べるチョコは最高の幸福感を与えてくれる。しかし、一番まずいチョコレートが必要なときもある。それは「救助のための非常食」である。」

韓国の海軍で電探兵として2年間服務し、現在は留学生として日本に来ているというスウビャムさん(@Foxtrot19_RADAR)。兵役時代に食べたという“世界一まずい”チョコレートについて紹介したツイートが話題となっています。

甘くて芳醇なカカオの香りが魅力のチョコレート。美味しくておやつにも適していますが、軽くて気軽に多くのエネルギーを摂取できるので、スポーツやアウトドアなどの場面でも重宝されます。

しかし、スウビャムさんによると、逆にまずいチョコレートの方が適している場面もあるといいます。それは「救助などの非常食」として用いる際です。

「おいしいチョコレートはメンタルヘルスに良いが、人の自制心を崩す。いつ死ぬか分からない遭難状況でチョコレートを節約できる人が何人いるでしょうか」

まずいチョコレートが採用される理由として、このように語るスウビャムさん。

事実、1937年にアメリカ軍の依頼によって開発された「Dレーション」と呼ばれる非常用配給チョコレートは、当初「茹でたジャガイモよりもややましな程度の味」という要求で作られたそうです。味を悪くした理由は、普段から兵士たちが常食してしまい、必要時に不足する、という危険性を防ぐためといわれています。

一概にはいえないものの、レーションなど軍用に配給される食糧には、あえて美味しくなく作られているものも多いようです。以前にまいどなニュースでも、レーションを実際に食べてみた方の感想について紹介しました。

ちなみに、スウビャムさんによると、韓国海軍の非常用チョコレートの味はチョーク味とされているそうです。しかし、実際に食べてみたところ、スウビャムさん自身は何の味にも感じられず、知り合いの中には「おがくずの味」と表現した人もいたとか。いずれにせよ美味しいものではないようですね。

スウビャムさんのツイートのリプ欄には、多くの反響が。

「なるほど…よく考えられているんですね」
「美味しくするとおやつ代わりにムシャムシャ食べちまうので、非常時でない限りは絶対に食べないような代物にするのがベストという話をどこかで聞いたような気がします」
「昔食べた事がありますが…(中略)…明らかに食べちゃダメな物と体が拒否反応おこし、そう言う物だと言われ納得しました」

実際に食べたことがあるという声も含め、さまざまなコメントが寄せられました。

一方ではこのような意見も。

「でも本当の非常時には不安な心を和らげる美味しいチョコレートが必要じゃない?」
「でももし遭難してしまったりして、その不味いチョコレートが人生最後の食事になってしまったらあまりの不味さにこの世に未練が残っちゃうかも…『ああ、最期にうまいもの食べてから死にたかった…』って」

生きるか死ぬか分からないような事態だからこそ、あえて美味しいものを食べたい――確かに、そのような気持ちも分かる気がします。

いずれにせよ、まずいチョコレートも、非常時の食糧として有効なものの一つであることは間違いなさそうです。山で遭難したり、地震などの災害時に備えて、どのような食糧が非常食として有用かを知っておくのは、とても大切なことかもしれません。

スウビャムさんに聞きました。

――まずいチョコレートですが、どのような場面で見たり食べたりされたのですか?

スウビャムさん:韓国海軍では、新兵教育として船が沈没した時に備えた離艦、水泳、救助訓練が行われますが、その中で非常用チョコレートついても教えてもらいました。チョコレートなどの救難食糧は、沈没時に作動する非常用ボートの内部に入っていました。

――チョコレート以外の救難食糧もあるのですね。

スウビャムさん:服務中はチョコレート以外の戦闘食糧などを食べたりしました。戦闘食糧にも賞味期限があるため、賞味期限が切れる前に乗組員に配付されたりして。調理方法は紐を引いて熱を出して自動的に調理する方式で、味は韓国らしく辛いです。ご飯には少し粘り気があって、パウンドケーキは乾燥していて化学的な感じがしましたが、気になるほどではなく美味しく感じました。また、韓国では乾パンも普及しています。普通の乾パンだけではなく“ゴマ”や“野菜味”のものもあり、特別な日には乾パンを揚げて砂糖をかけてくれたりします。脂っこくてかなり甘いですが、疲労を回復させてくれる味でした。

食べるだけではない!? 兵士たちを救ったチョコレートの逸話

非常時に役立つ“まずいチョコレート”について教えてくれたスウビャムさん。実は、取材時にチョコレートにまつわる他の逸話についても教えてくれました。

なんと、「チョコレートは接着剤としても使われたことがある」というのです。

どのような話なのでしょう…?

スウビャムさんによると、それは朝鮮戦争当時のアメリカ軍の話。

1950年、朝鮮民主主義人民共和国の長津湖で、国連軍とと中国人民志願軍が激突しました。過酷な戦闘の中、アメリカ海兵隊は弾丸が不足し、軍に追撃砲弾を送ってもらうように頼みます。

ここで、当時米軍が使っていたこの追撃砲弾の暗号名は、アメリカで定番のチョコレート菓子の名前をとって、「トッツィーロール」でした。それで、要求を受けた側は、戦闘兵がお菓子を欲しがっていると勘違いしてしまったのです。

空中降下によって送られてきた物資は、弾丸ではなく、大量のチョコレート。隊員たちは絶望に襲われます。

しかし、意外にもこのチョコレートが、彼らの救世主となるのでした。

実は、冬の長津湖は急激な気温低下が起こっており、マイナス40度にも及ぶ寒さだったといいます。そのような極寒の地では、ろくに調理もできず、兵士たちは疲弊していました。先述の通り、チョコレートはエネルギー量の高い食べ物。チョコレートは疲れ切った彼らの身体を元気づけます。

さらに、この時、アメリカ海兵隊は急激な寒さや被弾によって戦車の燃料パイプが破損し、身動きがとれないという事態に陥っていました。しかし、人の口で溶かしたチョコレートをパイプに塗りつけると、それは一瞬で固くなり、破損個所を修復することができました。

チョコレートは“食料”としても“接着剤”としても役に立ち、彼らは長津湖からの退却に成功したのでした。

戦争は悲惨なものです。しかし、その中で多くの人たちがチョコレートのおかげで生還できたという事実は、チョコレートの素晴らしさを感じさせてくれますね。

チョコレートに関する貴重な話を教えてくれたスウビャムさん。現在は、日本に留学しています。

「日本のドラマやアニメの影響は大きいですね。しかし、留学に関心を持つようになったのは、家族が経営している会社が日本の機械を使ったり日本に品物を輸出するのを見たからです」

日本に来たいと思ったきっかけについてこのように話すスウビャムさん。また、元々ミリタリー関連のものが好きだったこともあり、自衛隊の公開イベントにもよく参加していたとのこと。

これまでの人生で、日本から色々な影響を受け、それに感謝しているというスウビャムさん。現在は材料工学を勉強しているそうです。卒業後は日本の企業に研究員として就職し、韓国と日本をつなぐ架け橋になって恩返しがしたいと、夢を語ってくれました。

■スウビャムさんのTwitterはこちら→https://twitter.com/Foxtrot19_RADAR

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