南海電気鉄道は10月28日に2023年10月に運賃を改定することを発表しました。同時に今後の取り組みにも言及し、支線区の車両置き換えも決定。またひとつ昭和の名車両が消えることになります。
昭和の名車両がまたひとつ消えることに
現在、南海の支線区、汐見橋線・多奈川線などで2200系グループ(2200系・2230系)が活躍しています。2200系グループは1990年代に南海高野線で活躍した22000系を支線向けにワンマン化改造した車両です。同車の導入により、非冷房でワンマン非対応の1521系が引退し、支線区でのサービスが大きく向上しました。
現在は和歌山電鐵になっている元南海貴志川線にも投入され、戦前生まれの古豪を置き換えました。和歌山電鐵移管後は「たま電車」など、魅力的な電車に生まれ変わり、現在も活躍中です。
また2009年に登場した高野線の観光列車「天空」も2200系グループからの改造です。眺望を意識した座席配置や4人掛けの「コンパートメント座席」は多くの観光客から支持されています。
10月28日の発表では2000系をワンマン化改造した上で2200系を置き換えることを発表しました。またこれとは別に9月に公表された「南海グループ統合報告書2022」では「天空」の老朽化にも言及。
2025年度を目途に新たな観光列車の導入に触れていることから、数年以内に「天空」にも何かしらの動きはあることでしょう。一連のニュースから南海に在籍する2200系グループ消滅のカウントダウンが始まったと言えます。一方、現在のところ和歌山電鐵から車両の取り換えは発表されていません。
もともとは高野線で活躍した「角ズーム」
先述したとおり2200系グループは22000系からの改造車です。22000系は1969年に高野線で運用を開始しました。高野線高野下~極楽橋間は50パーミル(走行距離1000メートルで高低差50メートル)もの急勾配区間が存在し、現在も一般型車両は乗り入れることができません。
急勾配に対応する大きな牽引力が必要であると同時に平野区間では時速100キロの高速運転もこなさなくてはなりません。まるでカメラのズームのように、急勾配と平野の両方の沿線環境に器用に対応する車両として、22000系は「ズームカー」の一員として開発されました。
「ズームカー」のはしりは1958年に登場した21000系です。車両の長さは17mで、丸みを帯びた片側2扉の片開車でした。登場後は主に難波~極楽橋間の急行に使用され、1997年に南海から姿を消しました。
22000系は「ズームカー」の通勤車両バージョンで、ドアは両開きに。前面は角型になり、21000系の「丸ズーム」に対し「角ズーム」とも呼ばれました。同車は小柄な17m車でありながら、前面は3枚窓のせいもあり、他の一般車と同様に端正な姿をしています。
高野線では先輩21000系に連結して、活躍する姿も見られ、夏には小学校の林間学校の貸切列車を担うことも。このように22000系は高野線には不可欠な存在だったのです。
平成に入ると、後継「ズームカー」2000系の登場により、22000系は数を減らすことに。晩年には2000系との連結も見られました。1990年代後半に高野線から撤退し、今日に至ります。
ところで1960年代生まれの電車は全国の大手私鉄を見渡してもそれほど多くありません。関西大手私鉄だと阪急京都本線・千里線で活躍する阪急3300系、関西私鉄初の冷房車の京阪2400系が1960年代後半生まれです。いつでも乗れるうちに、1960年代に生まれた車両を乗り歩く旅もいいのかもしれません。