2023年2月に開幕する舞台『キングダム』にて、ダブルキャストで「信」役に抜擢された俳優の三浦宏規さん。これまで、『レ・ミゼラブル』『千と千尋の神隠し』『ヘアスプレー』など、大きな舞台への出演が続き、バレエの経験を活かした伸びやかな身体表現、確かな歌唱力や演技力で、いま若手俳優のなかでも特別な存在感を放っている。
『キングダム』は「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の、原泰久さんによる国民的人気コミック(累計発行部数9200万部突破)。2019年、2022年に実写版映画も公開され大ヒットした。紀元前の春秋戦国時代、戦災孤児の少年・信と、のちに始皇帝となる若き王・嬴政(えいせい)が、歴史上初の中華統一を目指す壮大な物語に熱狂的なファンが多い。
初めての舞台化が決定すると「これは絶対観たい!」など大きな話題に。東京、大阪、福岡、札幌と4都市で上演される本作に向けて、静かに闘志を燃やしている三浦さんに、幼少の頃からの夢や転機、信役をダブルキャストで演じる高野 洸さん、王騎役の尊敬する山口祐一郎さんについてなど、色々と話を聞いた。
5歳から始めたクラシックバレエで「食べていくんだ」と決意
――今年はまず舞台『千と千尋の神隠し』で、ハク役(ダブルキャスト)を舞うように軽やかな身のこなしで演じてらっしゃるのが印象的でした。三浦さんにとってどんな作品になりましたか?
反響の大きさも含め、すごい舞台だったなと思います。コロナ禍なので、演出のジョン・ケアードさんをはじめ、海外のスタッフの方と時差もあるなかリモートでつなぎ、いろんなアイデアを出し合いながら作っていった舞台です。素晴らしいクリエイターの方と、いちからモノ作りをさせていただいた経験はとても貴重でした。
――少しの動きでも“何か”を感じさせる三浦さんの演技は、やはり5歳から始められたクラシックバレエの影響が大きいのかなと思いました。バレエを始められたきっかけは?
5歳の時に熊川哲也さんがテレビの番組に出演されている映像を観て、「うぉー!格好いい!」と思ったのがきっかけです。幼い子どもが戦隊ヒーローに憧れるように夢中になりました。
――全国バレエコンクールで1位に入賞されるなど輝かしい活躍をされます。
熊川哲也さんに憧れて始めたので、5歳の時から習い事という感じではなく、「スターになるんだ」と思ってやっていました。学校でみんなの前で踊って見せびらかしたりして、ちょっと変わった少年でした(笑)。小学生から中学生の頃には「自分はバレエで食べていくんだ」と思ってましたね。
週に6回、電車に乗ってバレエのレッスンに通っていたのですが、イヤホンで聴く音楽は全部バレエのクラシック音楽。「僕だったらこうやって踊るのにな」とか思いながら車中で聴いて。だから当時流行っているポップスとか全く知らなかったですし、毎日バレエのことだけを考えてました。
――出身地の三重から東京に出てこられたのはいくつの時ですか。
15歳ぐらいです。実はその前に、脚のケガをして手術をしたのですが、そのせいで少し脚の形、ラインが変わってしまった。普通に生きていたらなんの支障もない程度なのですが、バレエをやるうえでは足かせになるもので、もう痛くもないし大丈夫なのですが、バレエでは上り詰められないという状況になってしまって。どうしようかなと思っていた時、東京へ行く機会があり、バレエつながりで運よくお仕事を頂きました。
――『テニスの王子様』や『刀剣乱舞』など、数々のミュージカルに出演されるようになりますが、この頃にはご自身の方向性が見えてきましたか?
バレエしか知らなかったところから、東京でいろんなお芝居やミュージカルを観るようになり、どれも本当に素敵だなと感動して、挑戦できるものは全部やりたいと思っていましたし、それは今も思っています。ジャンルに限らず、舞台が好きという気持ちはずっとありますね。
「僕と洸はタイプは違うけれど、共通点はいっぱいある」
――舞台『キングダム』では、ミュージカル『刀剣乱舞』で2017年から兄弟役(髭切・膝丸)で共演されてきた高野 洸さんと「信」役をダブルキャストで演じられます。
洸とは僕が18歳の頃から二人でやってきたという意識があるので、同じ役を一緒に作っていけるのはめちゃくちゃ嬉しいです。『刀剣乱舞』ではメインキャストは二人だけ、という作品もありましたし、プライベートでも仲が良くて信頼しているので。ただ、僕と洸って見た目も似てないし、タイプが全然違うと思います。でも共通点はいっぱいあるんですよ。
――どんな共通点がありますか?
まず泳げない(笑)。ほかにも、幼少の頃のエピソードとか「うわ、これも同じや!」ということや、似ているところがあるんだけど……うーん、具体的に思い出せないし、ここで言えないこともいっぱいあったと思います(笑)。
――高野さんはどんなタイプですか?
純粋で無邪気だけど、自分の芯をしっかり持っています。あと、抜けている部分もある天然さんで、そういうところが魅力だなと思います。僕は自分がどんなタイプか自己分析はできないかな(笑)。でも雰囲気から違う二人なので、同じ役をやるのは不思議な感じがします。
――信は天下の大将軍を目指す戦災孤児の少年ですが、コミックや映画、アニメもご覧になったということで、いまの段階で感じる役の印象は?
すごく勇気があり、信じる道に向かって無鉄砲に突っ走る、前へ前へと進んでいくエネルギーがあるキャラクターだなと思います。そんな猪突猛進な感じの信が、会議で作戦を練る時などにパッというひと言がとても説得力があって、周りの空気を変えていく。そういうシーンが出てくるたびに、「信、格好いい!」と思います。
また、信にとって大きな出来事なのが、身寄りのない幼少の頃からずっと一緒だった漂が目の前で死んだこと。彼にとっては大きなショックで、漂と誓いを立てた夢のために彼は突き進み、エネルギーの源になっていく。そこは舞台でも描かれると思うので大切にしたいです。
――漂役と、漂とうり二つの嬴政(えいせい)の二役を演じる小関裕太さんや牧島 輝さんといった若手の方が『キングダム』には多数出演され、帝国劇場に新しい風が吹きそうです。
嬴政役の二人とも、有難いことに共演歴があるんですよ。なので、役作りのステップとして距離を縮めるという作業はいらないので、それは作っていくうえで大きいです。そこが意外と時間がかかったりするので。初対面でいちから作っていくこの世界って、いつもすごいなと思います! 人見知りだったらできないかも。
――三浦さんは人見知りではないのですか?
いや、人見知りするのはするんですよ。自分でもよくわからないタイミングで急に喋れなくなったりします。二人きりとかになると(笑)。
山口祐一郎さん演じる王騎のビジュアルに「ウワーーー!!」
――強くたくましい大将軍の王騎はとても人気のあるキャラクターですが、『ヘアスプレー』でも共演されている山口祐一郎さんが演じられますね。
きっとこう見上げてね(笑)、祐さんのための役なんじゃないかと思うぐらい、とんでもない王騎将軍になるんだろうなと思って、楽しみでしかたないです。まずはビジュアルを早く見たいな~。(スタッフがちょうど出来上がった王騎役のビジュアルを三浦さんに見せると)ウワーーー!! ヤバイ!!(一同笑)。
――山口さんのどんなところが王騎役にぴったりだと思いますか?
祐さんの周りって空気が違うというか、登場するだけで世界が変わる方なんですよ。喋らなくてもその場に圧が、説得力が出るという大将軍の存在感は、祐さんだから出せるものだと思います。この間、6人の若手で取材を受けていた時、祐さんが後から入ってくることがあったのですが、みんな背筋がピンと伸びて。
祐さんご本人はとても優しくて「頑張ろうね~」とか話しかけてくださるのですが、大大大大大先輩の大スターなので緊張して、そこから6人とも喋れなくなるという……。あの空気の変わり方って、まさに王騎将軍やなと、しびれました(笑)。王騎将軍は信に想いを託しますし、信にとってもすごく大きな存在なので、これから舞台を作っていくのが楽しみです。
――『キングダム』はやはり戦いのシーンが多いと思いますが、どのような意気込みが?
まずケガをしない。ロングランなのでそこに尽きるぐらい徹底したいです。『キングダム』は戦闘が見どころですし、舞台でもすごい戦闘シーンになると思います。命を懸けてみんな戦っているので、生半可な気持ちで臨んではいけない。生ならではのエネルギーをもってお届けしたいです。舞台は紀元前と昔の話ですが、大まかな流れは史実に基づいていますし、本当に人がこうやって戦っていたんだなと思うと、改めて驚きを感じます。
――最後に、三浦さんがいつも心に留めている言葉があれば教えてください。
「泰然自若」という言葉が好きなのですが、何事もなんとかなると思っています。いろんなプレッシャー、しんどいこともありますけど楽しいこともたくさんある。死にはしないし、とにかく落ち着いて取り組む、というのが基本です。自分を追い詰め過ぎないように、「なんとかなるさ」と思って生きています(笑)。
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舞台『キングダム』は帝国劇場にて2023年2月5日(日)~27日(月)上演後、3月12日(日)~19日(日)梅田芸術劇場メインホール、4月2日(日)~27日(木)博多座、5月6日(土)~11日(木)札幌文化芸術劇場 hitaruで上演される。
舞台HP https://www.tohostage.com/kingdom/
なお12月11日(日)まで、「グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル」(第1会場:B1階イベントラボ、第2会場:4階ナレッジシアター)にて、原泰久さん全面監修の「キングダム展 -信-」が開催中。