お城のほぼ看板犬、座っているだけで人だかり 松江城周辺を散歩する「アイドル犬」…その人気ぶりに密着

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 国宝・松江城(松江市殿町)の観光客や関係者から「アイドル犬」として大人気の犬がいる。ほぼ毎日、松江城周辺を散歩し、座っているだけで、触れ合いや撮影を求める人だかりができるほど。多くの人を引きつける人気の秘密に迫った。

 アイドル犬は9歳の雌「はなちゃん」。白くきれいな毛並みとおっとりした表情がかわいらしい柴犬。松江城天守の周辺広場や大手門あたりによくやって来る。

 観光客はもちろん、観光案内所やチケット売り場の職員、武者の姿で観光客をもてなす「まつえ若武者隊」からもかわいがられている。これまでに松江城で「はなちゃん」を探して撮影すると記念ステッカーがもらえるといったイベントが開かれたこともあり、ほぼ「松江城公式の看板犬」として知られている。

1回の散歩で数十回撮影対応も

 「とにかくおとなしい性格。人にかまわれるのが嫌いじゃないのでしょう」。飼い主の松江市母衣町、会社員の男性がほほ笑んだ。

 男性は2013年、出雲市のペットショップでまだ幼い「はなちゃん」を見つけ、小さく震える姿に心を打たれて飼い始めた。小さい頃は家の中で走り回るやんちゃな姿もあったそうだが基本的にはおとなしく、散歩で家の外に出た際には行儀良く振る舞う性格だったという。

 男性と「はなちゃん」の散歩は雨の日以外の毎日、朝と夕に1時間程度。散歩ルートは決めておらず「すべてはな任せ。はなが行きたがった所へ行っている」とのこと。「はなちゃん」自身は歩き回るよりも座ってのんびりしていることの方が好きらしく、広場で座り込み、道行く人との写真撮影といったファンサービスに対応することが多い。多い日には一度の散歩で数十人と撮影することもあるというからびっくり。

 「はなちゃん」が大人気の理由の一つはそのおとなしさ。大勢に囲まれたり、なでられたりしてもほえることは絶対になく、ひたすら目を細めるだけ。これまで「はなちゃん」を触った人の中には、普段は犬が苦手なのに「初めて犬に触ることができた」と感動する人もいたという。

 以前から「はなちゃん」のファンだという松江城山公園観光案内所の職員、福間久美子さんは「本当におとなしくて人なつっこい。(観光案内所の)表にいるだけでたくさんの人が寄ってくる、まさに看板犬のような存在」と笑顔で話した。

人気が高じて「モデル」に!?

 「はなちゃん」の人気と知名度を物語る出来事があった。10月、3年ぶりに開かれた松江城周辺をライトアップする松江水燈路で、「はなちゃん」をモデルにした「ねぶた」がお目見えしたのだ。松江城の石垣を模した台座に、「はなちゃん」がお座りをした姿の「ねぶた」(高さ1メートル)だ。

 松江観光協会が「はなちゃん」の人気に着目し、京都芸術大(京都市)の学生と協力して制作した。水燈路の期間中、松江城の入り口、馬溜に設置され、多くの人の目に留まった。男性は「飼い主としてとてもありがたいこと」と喜び、期間中は散歩で「はなちゃん」に関心を示す人たちに「あのねぶたのモデルなんですよ」と触れ回った。

 取材で記者が「はなちゃん」と「ねぶた」のツーショットを撮影しようと移動すると、「はなちゃん」の周りにはすぐに人が集まった。「はなちゃん」と写真に収まろうとするお年寄りや、中には頬ずりする子どももおり「アイドル犬」と呼ばれるにふさわしい人気ぶりだ。

 「はなちゃん」は何人に触られ続けようと、全く動じない。お年寄りがつえを倒してしまい、甲高い音が響いた時は一瞬、驚いて立ち上がるようなそぶりを見せたが、男性が「はな、お座り」と言えばすぐに座る。飼い主との信頼関係と、アイドル犬としての「自負」がうかがえた。

 これまでのイベントや今回の「ねぶた」制作を通して、「はなちゃん」の知名度が上がることについて、男性は「有名になるのはうれしいが、これまで通り、散歩で会った人にかわいがってもらえればそれで十分」と笑った。

 松江城周辺を通行するほぼ全ての人から愛される「はなちゃん」。もし、松江城周辺に寄ることがあれば、おとなしく座る白い犬を探してみてほしい。触れ合いも握手も写真撮影も「アイドルさながら」に対応してくれるはずだ。

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