便利?怖い?シェアサービスの「電動キックボード」に乗ってみた バイクに抜かれるたびに走る緊張感

堤 冬樹 堤 冬樹

 今年3月、京都市で「電動キックボード」のシェアリングサービスが始まった。一体どんな乗り物なのだろう。以前からその存在が気になっていた記者も実際に乗ってみた。

 電動キックボードは、ボードに両足を乗せて立ち、自転車のようにハンドルを握って運転する。京都市でのシェアサービスは、経済産業省の認可を受けた事業者「Luup(ループ)」(東京)による特例措置の実証実験だ。個人所有の電動キックボードと違って「小型特殊自動車」扱いとなり、普通自動車免許などが必要。ヘルメットの着用は任意で、車道の左端を原則走行する。

 利用するにはまず、スマホの専用アプリで個人情報や運転免許を登録し、交通ルールに関するテスト全10問に正解しなければならない。登録が済めば、アプリの地図上から乗車したい「ポート」の場所を探す。現場で車体に付いたQRコードを読み取り、返却先のポートを決めればロックが解除され、さあスタートだ。

 ボードに片脚を乗せ、2、3歩地面を蹴って勢いをつけ、ハンドルのアクセルを押し込むとスピードが上がる。タイヤが小さいのでちょっとした段差でも揺れを感じ、バランスを保つ必要がある。5分ほどで慣れたが、初めての場合はまず人や車の少ない道で練習した方がいいだろう。

 自転車と違ってこぐ必要がなく、坂道でも実に楽ちん。涼しい風を受けて快適だ。物珍しさからか、周囲の視線も感じる。「それって電動で動くのですか?」。少し停車していると、歩いている人に声を掛けられた。

 シェアサービスでは上限速度が時速15キロで、それ以上は出せない設定になっている。細い道ではスピード感があり、歩行者らへの細心の注意が欠かせない。一方で、少し広い道に出ると自動車やバイクとのスピード差は歴然。次々と追い抜かれるたび、緊張感が走った。

 Luupには利用者から「上限速度を上げてほしい」との声も寄せられているという。確かに、自転車のように瞬時のスピードの上げ下げや方向転換などで危険を回避することは難しいように感じる。交通量が一定以上の大通りを含め、走行できない場所もあるので事前に確認しておきたい。

 現在、京都市内ではポートが140カ所以上あり、さらに増やして利便性を高めていきたいという。値段は基本料金が50円で、1分ごとに15円かかる。10分200円、20分350円、30分500円といった具合だ。

 このため効率的に使うには、あらかじめ行き先やルートを明確にした方が良いだろう。逆に言えば、移動中に店に寄ったり休憩したりと、もう少し時間を気にせず利用できればとも感じる。Luupの岡井大輝社長は「町のインフラとして、気軽に乗れる状況をつくりたい。長時間利用だと値段がまだ高いので、将来的にはもっと手頃にしたい」と語る。

 その一方、電動キックボードの危険な走行や交通違反も指摘されている。警察庁によると、今年2月までの半年間で、歩道走行など道交法違反容疑の摘発は全国で168件。整備不良や無免許といった指導・警告は371件に上った。人身事故は14件、物損事故は52件。先月下旬には東京のマンション駐車場で、電動キックボードを運転していた男性が転倒し死亡した。電動ボード絡みで全国初の死者だった。

 また、今年4月には道交法が改正され、2年以内に施行されることになっている。個人所有でもヘルメット着用が任意となり、時速6キロ以下なら歩道の一部で走行できるなど規制緩和が進む。ただ、私自身もこの間、禁止されている2人乗りや逆走する電動キックボードを目にしたように、安心安全な普及に向けては車両の特徴や交通ルールの周知徹底が必須だ。

 Luupによるシェアサービスは、東京や大阪などでも行われているほか、地方都市や観光地での実施も検討しているという。旅先で風景を楽しみながらの移動手段として選択肢に入ってきそうだし、京都市内でもポートがもっと増えれば歩き疲れた時など普段づかいにも便利だと思う。くれぐれも、交通ルールを守り、安全運転で。

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