つみれ派は首都圏 かまぼこ派は瀬戸内と九州 おでん種から見えてくる東西日本の食文化

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紀文食品(東京)は、1994年から毎年発信を続けている「鍋料理やおでん」のアンケート結果やトピックスをまとめた『紀文・鍋白書』の2022年版を発表しました。今年の鍋白書では、「日本全国47都道府県。しらべてみました。」と銘打ち、「鍋料理アンケート」「おでん専門店への往訪・取材」「料理研究家へのインタビュー」などを実施し、ご当地のおでんやおでん種に関する情報をまとめています。

地域分布が特徴的なおでん種とは

限られた地域で親しまれている「ご当地おでん種」がある一方、もともと西日本の特徴的なおでん種であった牛すじ、関東の特徴的なおでん種であったはんぺんのように限られた地域で食されていたものが、テレビやコンビニエンスストアの影響、外食体験などに伴い、広域で食されるようになっていくおでん種もあります。

47都道府県の家庭の鍋料理調査で、「家庭でおでんを作る時によく入れるおでん種」を質問。48種類のおでん種の喫食率について、それぞれ上位10都道府県を算出、地図化しました。

練りものの中で、すり身を焼いて作る「ちくわ」や、揚げて作る「さつま揚」が、全国的に喫食率が高くなっています。この他、ゆでて作る「はんぺん」「つみれ」、蒸して作る「かまぼこ(板付き蒸しかまぼこ)」などがおでん種として利用されています。

東日本のうち、関東・南東北でよく用いられるのがつみれです。この地域のつみれはイワシを原料をしています。西日本のうち、中四国・九州でよく用いられるのがかまぼこで、白色より紅色の方がおでん種として利用されているようです。身質に弾力のあるかまぼこは煮崩れがしにくいため、調理時間が比較的長い西日本での採用につながったと推測されます。

「巻物」ジャンルでは、いか巻は10位以内は関東・中部が独占しました。11位に福島、15位に山形、16位に宮城、18位に秋田、19位に岩手と東北も喫食率が高いことがわかります。これに対し、ごぼう巻は全国平均が63.0%と喫食率が高いおでん種です。10位以内は9位の石川以外は関西を中心に中国・九州と西日本に点在し、20位以内に東日本の県が5県ランクインするなどいか巻より若干穏やかな東西分布となりました。

がんもどきと厚揚げはどうでしょうか。共に豆腐を加工して揚げたもので、がんもどきは豆腐を崩して野菜や海藻を加えて揚げたもの、厚揚げは豆腐を厚く切り揚げたもの。おでんにおける両者の違いは汁の含みかたです。

がんもどきは、20位以内までみても、寺院が多く精進料理などになじみ深い京都と滋賀、また大分以外は東日本の県になります。これに対し、厚揚げは全国平均が57.3%以上と喫食率が高いおでん種で、19位まですべて西日本で占めます。京都は5位に入り、がんもどきとともに大豆加工品に愛着があることがわかります。

 白い色をした食材、いわゆる白物で全国的に喫食率が高いものは大根、玉子で地域に偏りはありません。それ以外を比べてみると、18位まで東日本の県で独占し、関東・南東北で圧倒的に喫食率の高いのがちくわぶです。ちくわぶは関東で発祥したといわれており、小麦粉と水、塩をこねて作るギザギザした形が特徴の小麦加工品です。

これに対し大豆加工品の豆腐・焼き豆腐は中四国と九州と北陸で上位10県を占めており、西日本で多く食されています。がんもどきで8位・厚揚げで5位の京都は豆腐・焼き豆腐でも14位となりました。

昆布、たこ・たこ串の魚介類に地域差はあったのでしょうか。昆布は、20位以内をみても12位沖縄・16位高知・19位徳島以外は東日本で喫食率が高いようです。関西の方はだしをとった昆布を食すことが少ないそうですから、そのことも要因のひとつと推測されます。

たこは、西日本では関西と日本海側が、東日本では北陸と東京・神奈川が10位以内にランクインしました。なお老舗おでん屋さんには「蛸長(京都)」、「たこ梅(大阪)」、「多古久(東京)〈22年9月現在休業中〉」と名前に「たこ」がつくお店も多いです。

おでんアラカルト

おでんの調理時間(下ごしらえの時間を除いたおでんを煮る時間)は、全国平均が60.3分でした。県別にみると、西日本は滋賀県・徳島県・長崎県以外の全ての府県で全国平均より長くなっており、東西別でみても東日本が48.4分、西日本が72.1分と、西日本の方がおでんの調理時間が長い傾向がうかがえます。

​ おでんに入れる種ものの種類は、全国平均が8.24種類となりました。県別では、最も多いのは広島県(9.34種類)、最も少ないのは岐阜県(7.16種類)という結果になっています。種ものの数については、東日本が8.14種類、西日本が8.34種類と、東西でそこまで差はないようです。

おでんを「主食として食べる」か「おかずとして食べる」か聞いたところ、全国平均では、おかずと答えた方が59.8%で優勢となりました。年代別では、20代がそれぞれ50.0%と半分に分かれており、年齢が上がるほどおかず派が多くなる傾向がうかがえます。 

《調査概要》
■調査日程:2022年8月17日(水)~22日(月)
■調査手法:インターネットによる自宅回答
■調査対象:20代~60代以上の既婚女性5875人/各都道府県125人(20代25人、30代25人、40代25人、50代25人、60代以上25人)
■調査機関:マーケティングアプリケーションズ、紀文食品
※おでん種の地域分布図(日本地図)は、上記調査の回答者の内、令和3年9月から令和4年2月の間に「おでん」を家庭で作って1回以上食べた2893人の集計値

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