目の前をスタスタ歩く軽装のおじいちゃん、どこかヘン 思い切って話しかけると警察案件だった

竹内 章 竹内 章

認知症でひとり歩きしている可能性がある高齢者に出会ったとき、どんな応対が望ましいのでしょうか。公益社団法人認知症の人と家族の会(京都市上京区)の事務局長鎌田松代さんに聞きました。

ー認知症による徘徊について

「本人は目的があって外出しているのですが、認知機能の低下で、現在の場所から自宅に帰る方法や道がわからなくなっています。そのため、認知症ケアの中では現在、『徘徊』という言葉は使わない方向にあります。私の母も、何度か行方不明になり警察のお世話になりましたが、当人は『お世話になった方へのお礼の品を買いにデパートに行く』という目的がありました」

ー見分けるポイントは服装や時間帯でしょうか。冬なのに軽装、手持ちの荷物がないといった特徴でしょうか。

 「どうしたらいいのか、困っておられるかどうかを見てください。同じ場所に長時間いたり、その場を何度も行ったり来たりしている方もいます。服装はパジャマであったり、普通の服であったりさまざまです。夏なのに厚着であったり、異変のある重ね着であったりもしますが、それが大きな決定でとなるかというとそうでない時もあります。急いで自宅を出た場合は、靴が片方ずつ違っていたり、スリッパだったりもします。服装に不似合いな大荷物を持ったり、複数の荷物を持っている方もいます。手ぶらの方もいます」

―一概には言えないのですね 

「服装や荷物などもそうですが、お顔が険しかったり、困った様子であったりと何か異変のあるような表情かどうか見てほしいです」

「一例を紹介します。散歩中の民生委員さんが道路の植え込みに座っている高齢者を見かけました。服装に異変はないのですが、何か困っている様子でした。散歩から戻ってきた1時間後も、その場にいたので『どうされましたか、何かお困りのことはありませんか』と尋ねると、『家がわからなくなった』とのことでした。寒い時期だったので『暖かい場所に行きましょう』と近くのコンビニにお連れして、店員さんに警察への連絡をお願いしました。コンビニの若い店員さんは『寒いでしょうから、温かい飲み物をどうぞ』とホットコーヒーを出してくれました」

ーどんなふうに話しかけ、会話をしたらいいのでしょうか 

「本人の正面から、優しい表情で『お困りのことはありませんか、お手伝いしますよ』と話しかけてください。声のトーンや表情も大事です。後ろや斜めからでは、本人の視野に入らず不安に感じてしまいます。正面から話しかけてください。あまり多くの言葉をかけると、記憶の面から言葉の理解が追い付かない場合もあるので、短いセンテンスで、本人の理解を確認しながらゆっくり話してください。『何とか手助けしよう』と焦るかもしれませんが、ゆっくりと穏やかな声掛けがよいです」

 ー返事がないときは

「認知症の人は混乱している場合、人の話が聞こえなくなります。また怪しい人と認識されると、反応がないこともあります。安心できるような穏やかな雰囲気で、再度ゆっくり話しかけてみてください。返事がなくても、やはり困っている様子だったら、警察に『もしかしたら認知症の方かもしれません』と連絡してください」

 ーやってはいけない接し方は

「認知症の人と決めつけ、一方的な対応はよくないです。本人の表情がどうなのか、こちらを受け入れてくれているのかを確認しながら対応してください」

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