国土交通省は7月22日、2021年度都市鉄道混雑率調査結果を発表しました。これは通勤通学時間帯における鉄道路線の混雑状況を示したものです。一体、大阪圏で最も混雑している路線はどこだったのでしょうか。そして、これからの鉄道ダイヤはどのようになるのでしょうか。発表された混雑率を使って予想してみます。
そもそも混雑率とは?
都市鉄道混雑率調査は国土交通省が毎年発表しているもので、国土交通省ホームページにて一般公開されています。混雑率は「輸送人員÷輸送力」で算出され、鉄道会社が行う設備投資の数値指標にもなっています。
混雑率では100%を「定員乗車」と位置付けています。混雑率の具体的イメージは以下の通りです。
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混雑率100%:定員乗車。座席につくか、吊り革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる。
混雑率150%:肩が触れ合う程度で、新聞は楽に読める。
混雑率180%:体が触れ合うが、新聞は読める。
混雑率200%:体が触れ合い、相当な圧迫感がある。しかし、週刊誌なら何とか読める。
混雑率250%:電車が揺れるたびに、体が斜めになって身動きできない。手も動かせない。
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このように新聞や週刊誌が読めるかどうか、を基準にしています。しかし現在では車内で新聞を読む人はあまり見かけなくなりました。
国土交通省は2021年5月に「新聞が読めるか」の代わりに「スマホの操作のしやすさ」を公的資料に初めて取り入れました。
具体的には150%が「操作は楽にできる」180%が「操作がしにくくなる」200%が「長い操作は難しい」としています。ただし、2021年度都市鉄道混雑率調査結果では従来通り新聞が基準に用いられています。
大阪圏の鉄道混雑率第1位は?
大阪圏の鉄道混雑率第1位は近鉄奈良線河内永和→布施の119%でした。
2020年度と比較すると近鉄奈良線河内永和→布施間は+5%、Osaka Metro御堂筋線梅田→淀屋橋は+2%、近鉄大阪線俊徳道→布施間は+5%でした。なお大阪圏における2021年度の平均混雑率は104%で、前年比+1%でした。
2020年度と比較すると微増です。しかし2019年度の大阪圏における平均混雑率は126%でしたから、コロナ禍前には程遠い状況です。テレワークの普及・推進などにより、コロナ禍前の混雑率には戻らないのではないでしょうか。
朝ラッシュ時の減便・減車の可能性は大いにアリ
混雑率を見るとコロナ禍前と現在で大きな差異が生じていることがわかります。朝ラッシュ時の混雑率が減少していることから、同時間帯を中心に減便や減車に踏み切る可能性が高まっているように感じます。
一般論として混雑率が高いという状態は輸送人員が輸送力を上回ることを指します。輸送力とは単位時間内に一定区間内でどれだけの旅客が輸送できるかという能力を示します。一方、輸送人員は多いが、混雑率100%を切っている路線は減便・減車の対象になり得ます。
上記の考えを基にすると、筆者が注目するのは阪急京都本線です。2021年度の阪急京都本線の最混雑区間は上新庄→淡路。輸送人員は混雑率100%を上回る神戸本線や宝塚本線とさほど変わらない2万4950人でしたが、混雑率は100%を切る99%でした。
阪急京都本線の優等列車は8両編成が基本ですが、平日朝ラッシュ時の快速急行上下各3本のみ10両編成で運行されています。実はコロナ禍前から10両編成の列車本数は減少傾向にあり、かつては上下各5本でした。参考までに2019年度の京都本線の混雑率は119%で、すでに10両編成の運行は現在と同じ上下各3本でした。
このような状況・傾向を見ていくと、京都本線では10両編成の見直しが十分に考えられます。また特定種別の偏りや相互直通運転先のOsaka Metro堺筋線との兼ね合いを考慮する必要はありますが、ラッシュ時を中心に減便もあり得るのではないでしょうか。
混雑率の低下がコロナ禍後のダイヤ改正にどのような影響をもたらすのか、今年から来年にかけてのダイヤ改正の発表に注目したいと思います。