「その発想はなかった!」 お盆に120キロのお供え物、その行方は? あるお寺の取り組みに称賛の声が続々

門倉 早希 門倉 早希

「お盆の納骨堂のお供えをフードバンクに提供してきました。今回は総重量120kgでした。記録更新です!」

福岡県北九州市にある浄土真宗本願寺派の「永明寺」で住職をされている松崎智海(非売品僧侶)さん(@matsuzakichikai)の投稿がツイッターで話題となっています。

添付写真に写っているのは、折り畳みコンテナ5つに収まりきらないほどのお菓子や缶詰、乾麺類。これらはすべてお盆のあいだに永明寺の納骨堂にお供えされたもので、その量なんと約120キロ。仕分け作業を経て、フードバンクに提供にされたそうです。取り組みについて住職の松崎さんにお話を伺いました。

「もったいない」を「ありがとう」に

永明寺では、納骨堂にお供えされた食品をフードバンクに提供する取り組みを、2016年より年3回ずつ(春彼岸、盆、秋彼岸)おこなってきました。

そもそもフードバンクとは、食品メーカーなどで発生した、印字ミスなどにより品質に問題はないが商品として扱わないもの、個人で余剰となった一定条件を満たす食べ物を寄付することで、食料を必要とする団体や世帯に届けるシステムです。

松崎さんが住職を務める永明寺では、建物内に納骨壇を設置してそこに各加入者が遺骨を安置しており、例年お盆の時期は加入者が持参するお供え物がかなりの量になっていたそう。

特にお供えものとしてよく挙げられる、おはぎ、わらび餅などは賞味期限が短いうえ、夏場は納骨堂内が高温になるため、腐敗して異臭がすることも。そうなると廃棄するほかなく、残された大量の食品を前に松崎さんは心痛するばかりだったといいます。

そういった経緯を経て、納骨堂に加入している人にフードバンクへ食品を提供する旨を伝えて取り組みを開始。松崎さんは、「最初は反発されるかと心配しておりましたが、とても良い取り組みだとよろこんでいただいています。もちろん興味の無い方もおられますが、多くの方が積極的にかかわってくださっています。この取り組みをしてから、納骨堂に食べ物を残して行かれる方が大幅に減りました」と喜びを明かします。

さらに、今までお供えされる食べ物はどちらかと言うと渋めで大人向けのものが多かったそうですが、取り組みを知った加入者の方が、子どもでもなじみのあるお菓子類や、カップ、パスタなどを持参してくれるようになったんだとか。

そして、今年のお盆はお供えものが120kgにも及び、永明寺の過去最高記録を更新。松崎さんがその旨をツイッターに投稿したところ、1万いいねがついたほか、「素晴らしい取り組みですね。ご供養とは生きている人のためになるものなんだなあと思います」「すごい!その発想はなかった!」と称賛のコメントが相次ぎました。反響の大きさに驚きながらも、松崎さんは以下のように語ります。

「以前からフードバンクへの提供についてはツイートしていたのですが、今回このように伸びたのは不思議です。ただ、永明寺の取り組みを知っていただきたことはありがたいです。

また、仏事のお供えの意義についても皆さまが考えるきっかけになっていただければと思います。お供え物は仏様への敬いのあらわれですから、その場に残さず持ち帰り、ご自身でいただくのが一番だと思います。それでも食べきれないものや、提供したいものをフードバンクに寄付していただいています。仕分けも門徒(檀家)さんにしていただいています。おかげさまで『もったいない』を『ありがとう』に変えることができました」

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