通常より速度を落とした「優しい」エスカレーター 転倒防止の観点から最近増えているらしい

黒川 裕生 黒川 裕生

高齢の利用者のために、通常より速度を落としたエスカレーターがある。

そんな噂を聞きつけて、兵庫県西宮市にある商業施設「コープ西宮南」を訪れてみた。店舗は3階建てで、1階は駐車場、2階が食品売り場、そして3階にはクリニックや薬局、喫茶店などが入居しており、各フロアはエスカレーター(とエレベーター)で結ばれている。

動いているエスカレーターを見ても特に遅いとは感じないが、実際に乗ってみると、確かに駅や他の商業施設などの一般的なエスカレーターより少しゆっくり…のような気がする。ただ、店内のどこにも「速度を落として運転しています」などと書いた張り紙は見当たらない。気のせいではなく、本当にゆっくりなのだろうか? お店に確認してみよう。

やっぱり「ゆっくり」だった!速さは通常の3分の2

応対してくれたのは、店長のニシカドさん。同店は2021年6月にオープンしたばかりで、近くには「協同購入センター西宮」もあることから、店舗と宅配が連携して組合員の暮らしを支える「モデル店舗」という位置づけらしい。

「お気づきの通り、エスカレーターの速度は少し遅めに設定しています。一般的なスピードは分速30mほどなのですが、当店では3分の2程度の分速20mです」

理由を聞くと、「全ての人が安心して過ごせる店に」との配慮からだという。

「開業からしばらくご来店する方々の様子を見ていて、比較的ご高齢の方や小さいお子さまを連れた方が多いことがわかりました。また、3階にはいくつかクリニックがあり、病気やケガの人も利用されますので、業者さんに依頼してオープン2カ月後の8月から今の速度にしました。こうした方が、乗り降りする際の転倒防止などにもつながると考えたからです」

一部から「遅い」という声もあるにはあったそうだが、「安心して乗れる」と評判は概ね上々。“減速”から丸1年が経過し、「皆さまもこのスピードに慣れてくださっていると思います」(ニシカドさん)。

エスカレーターのメーカー「フジテック」によると、近年、同様の理由から病院や商業施設などで分速25mや20mに落とすケースが増えているとか。エスカレーター事故の約4割は転倒事故といい、特に高齢者は運動機能の低下で「情報→判断→行動」のスピードが遅くなるため、転倒事故につながるリスクが高まるという。「ゆっくり化」は、こうした利用者の不安の解消を目指す取り組みなのだ。

【フジテックのサイトから「エスカレータのゆっくり化」】
https://www.fujitec.co.jp/products/option/slowly

余談ですが…「店内撮影OK」の貼り紙を発見

ちなみに、コープ西宮南でもうひとつ面白いなと思ったのは、「お店の中の撮影OK!」という張り紙があったこと。もちろん「他の人が写らないように気をつけてね!」という注意書きはあるものの、こうしたスーパーで「撮影禁止」ではなく「OK」を打ち出す姿勢は昨今なかなか珍しい。これについてもニシカドさんに聞いてみた。

「今は皆さんスマホをお持ちですし、商品の写真を撮って買い物の参考になさるのも珍しくありません。コープではオリジナル商品もたくさん扱っていますので、撮影禁止にしてなんとなくギスギスしてしまうよりも、SNSなどでどんどん広めていただければと思っています」

い、いい店だ!

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