岡山、香川両県の島々をアートで彩る「瀬戸内国際芸術祭2022」の夏会期が始まった。新型コロナウイルスの感染拡大で遠方への旅行をあきらめる人が多い中、近畿中国地方からは日帰り観光も可能な瀬戸芸は夏休みの注目観光スポットだ。ビギナー観光客に向けて夏会期会場となる7島の巡り方を毎回全島行き尽くしている山陽新聞デジタル編集部が解説する。
帽子や飲料水など暑さ対策は万全に
瀬戸芸は春、夏、秋会期があるが、中でも猛暑の中開かれる夏会期はきつい。都会のようにあちこちに涼めるコンビニや飲食店があるわけでなく、炎天下の島内をひたすら歩くこともある。帽子や飲料水など暑さ対策は万全に。初めてだと一つでも多くの作品を見たいだろうが、あまり欲張らずに見たい作品の優先順位をつけて余裕を持つことも必要。人気作品だと週末や祝日は順番待ちで案外時間を取られたりすることもある。
持ち物は夏装備のほかに観賞用パスポート(スマホアプリもある)、公式ガイドブック、カメラに加え、ゲリラ豪雨に備えて折り畳み傘があればいい。カメラは狭い古民家を利用したインスタレーションが多いので、広角レンズがあると便利。なければ最近のスマホは広角に強いので、いろいろ試してみては。
初心者にやさしい男木島、女木島、犬島
島に到着して注意が必要なのが、島内の移動手段だ。日ごろはバスも頻繁に走っていないから、公式ガイドブックやホームページなどで下調べしないと時間のロスが大きい。そんな中、島内交通を気にしなくていいのが、男木島、女木島、犬島だ。作品のスポットが港から徒歩圏内に密集しているので、初心者や親子連れにやさしい会場と言える。
男木島、女木島は高松港からの航路で結ばれているので、2島を1日で十分巡ることができる。特に女木島は平坦な道で移動も楽。男木島は坂道が多いが、石垣と家並みが連なる趣のある風景が楽しめる。犬島も精錬所美術館や家プロジェクトといった施設が港の周辺に集まっているので、半日あれば制覇できる。
憧れの直島、豊島
瀬戸芸ビギナーにとって、アートの島の代名詞といえる直島、豊島は憧れの存在だろう。直島は会期中は宮ノ浦港からバスが頻繁に発着しているので安心だ。作品スポットは宮ノ浦港周辺、直島町役場がある本村地区の徒歩鑑賞圏と、島南部の山道でバス移動が向いているベネッセハウス周辺に分かれている。バスをうまく活用して巡ってほしい。
豊島は島内に作品スポットが点在しているため、レンタサイクルの方が便利だが、週末や祝日は在庫切れになっていることが多い。その場合は、家浦港から作品が多く集まっている唐櫃岡(からとおか)地区周辺までバスで行き、周辺を徒歩やバスで回ることは可能だ。
この2島で注意が必要なのは、人気のアート施設が予約制を取っていることだ。対象は直島の地中美術館、杉本博司ギャラリー時の回廊、豊島の豊島美術館など。公式ホームページでネット予約ができるので、遠方からどうしても見たいという人は必須だろう。
広すぎる小豆島
瀬戸内海では淡路島に次いで2番目に大きい小豆島。島内全域に作品スポットが散らばっており、車で回るのが望ましいところ。作品鑑賞しながら島を1周すると1日がかりになってしまうからだ。本州や四国からフェリーでマイカーを載せていくより、島でレンタカーを借りるのが安上がりだが、やはり週末や祝日は予約で埋まっていることが多いので注意が必要だ。
バスで回るのであれば、人気作が多い土庄港、肥土山・中山地区、草壁港、坂手港周辺と訪問先を絞り、乗り継いでいくのは十分可能。これも選択肢に入れてほしい。
大島の観賞方法はユニーク
ハンセン病療養所がある大島は、観賞方法がユニークだ。船の到着に合わせてボランティアスタッフのこえび隊が待っている。港の案内所で島のガイダンスを受け、グループで歩きながらハンセン病や国立療養所大島青松園の歴史について学ぶ無料ツアーに参加できる。残りの自由時間で見残した作品を鑑賞したり、カフェで休憩したりできる。
島もいろいろ
解説した通り、瀬戸内海の島といっても地形や歴史などさまざまだ。それぞれの島の特徴を把握した上で出かけると観賞がスムーズになるだろう。注意してほしいのは、島は都会とは違うということ。手軽に飲み物が買えたり、飲食店に入れたり、スマホの充電ができたりということができないケースも多い。
また、会期中以外は静かに暮らしている島の住民への配慮も大切。道で出会ったらあいさつしよう。ごみを持って帰るなどエチケットを守ってほしい。炎天下で会場整理やチケットの確認をしているこえび隊のメンバーら関係者へのリスペクトも忘れずに。新型コロナウイルスの感染予防も十分行って楽しい夏の思い出をつくってもらいたい。夏会期は8月5日~9月4日。