「本当にこの高校が最優秀でいいんですか」 軽音楽部イベントの最終審査 オリジナル楽曲「ウクライナ」が呼んだ議論

橋本 菜津美 橋本 菜津美

「本当に、大阪府立枚岡樟風高校が最優秀賞でいいんですか」

6月12日に開催された南大阪最大級の高校軽音楽部イベント「フレッシュサウンドコンテスト」の最終審査は難航していた。筆者も審査員として参加していたのだが、得点では、大阪府立枚岡樟風高校軽音部のバンド「CSデストロイヤー」が一位。しかし披露したオリジナル楽曲のタイトルが「ウクライナ」だったことや、個性が強すぎるパフォーマンスが、今回のイベントの最優秀賞に相応しいのか議論になっていたのだ。

社会問題を歌う、いかにもロック然としたバンドが、果たして高校軽音楽部のコンテストの最優秀賞にふさわしいのか…審査員は頭を悩ませたが、最終的にCSデストロイヤーは最優秀賞を勝ち取った。ほとんどのバンドがカバー楽曲でエントリーする中、オリジナル楽曲を仕上げ演奏したこと、そして際立ったパフォーマンス力を率直に評価するべきだと意見がまとまったのだ。

高校生とは思えない演奏力の高さと、「ウクライナ」という楽曲でコンテストに挑戦した理由について、ボーカルを担当する有馬蒼佑さんと、軽音楽部顧問の森かずおさんに話を聞いた。

◇ ◇

ーー今回の楽曲の作詞・作曲はどなたが担当していますか。

有馬蒼佑(以下「有馬」):僕が作詞と作曲をしています。楽曲のアレンジは、それぞれ担当楽器のメンバーが考えてきて、それを顧問の先生にご指導頂きながら形にしていきます。

橋本:顧問の先生は、教師でもあり、現役のバンドマンでもあるんですよね。

森かずお(以下「森」):はい、高校教師であり、「餃子大王」というバンドのボーカルも担当しています。

橋本:CSデストロイヤーの演奏力の高いのは、森さんのご指導も賜物でもあるんですね。先生の指導は厳しいですか?

有馬:うーん…怖い…というか、やっぱり厳しいですね(笑)。僕は高校生からバンド活動をスタートしたのですが、他のメンバーも高校から音楽を始めた人が多いので、色々アドバイスを貰いながら活動しています。

橋本:今回のエントリー楽曲についてお聞かせください。平和をテーマにした「ウクライナ」というオリジナル楽曲ですが、正直な話、今回のコンテストが求めていたフレッシュなイメージとは違い、審査が難航しました。この楽曲で挑戦するにあたって、迷いはありませんでしたか。

有馬:なかったですね。違うオリジナル楽曲もありましたが、絶対メンバーと作った「ウクライナ」の楽曲で挑戦したいと思っていました。ウクライナでは、僕達と同じ年代の人達が、命の危険に晒されています。僕は音楽を通じて平和を歌っていきたい、その気持ちを込めました。

橋本:なるほど、素晴らしいです。森さんは、この楽曲でエントリーすることに関してどう思われましたか。

森:これまでも何度かコンテストに参加しましたが、今回が初めての優勝でした。毎回、演奏面では他校に負けていないと自信があったので、生徒達が演奏したい楽曲で優勝できて嬉しかったです。

◇ ◇

「僕の出来ることは 一体なんだ 平和を歌っても 戦争は終わらない 僕は叫び続ける」

CSデストロイヤーが奏でる「ウクライナ」の真っ直ぐなメッセージは会場にいた人々の心を掴んだ。人は大人になるにつれ、その場に合わせた答えを選んでしまいがちだ。しかしCSデストロイヤーは「審査員にウケが良さそうな楽曲」を選ぶのではなく、「自分がいま一番伝えたいこと」を重視し、みごと最優秀賞に輝いた。「一生に一度、世界で一番キラキラした夏の始まり。」今回のコンテストのキャッチフレーズのように、高校生の夢を真に応援する大人やイベントが増えることを願っている。

◇ ◇

大阪府立枚岡樟風高校軽音部
「CSデストロイヤー」

ボーカル:有馬蒼佑
ギター:新熊颯太
ギター:山岡愛結奈
ベース:鶴永翔哉
ドラム:花谷弘明
キーボード:村田絵里

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「フレッシュサウンドコンテスト」
公式ホームページ:https://fsc-hi-school.amebaownd.com/

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