50年間「大阪地下鉄」の顔…「御堂筋線10系」が引退 実は“スゴ技”で冷房を実現した、昭和の名車でした

新田 浩之 新田 浩之

7月4日、約50年にわたって活躍した大阪メトロ(Osaka Metro)10系が引退しました。10系は御堂筋線の主力車両でしたが、日常的に見られる電車だったせいか、あまり注目されてこなかった感もあります。しかし、調べると実はエポック的な電車であることがわかりました。

谷町線向けにデビューした10系

大阪メトロを日常的に使う方ですと「10系=御堂筋線の電車」というイメージを持たれると思います。しかし1973年のデビュー当初は「20系」と称し、谷町線に投入されました。谷町線では路線延長に伴い急行運転も考えられ、高速運転に対応するために新車が求められたのです。

その後、御堂筋線の運行本数の増加に伴いトンネル内の発熱量の削減が課題となり、御堂筋線に転属し、1976年に運行を開始。御堂筋線への転属に伴い、同線と相互直通運転を実施している北大阪急行電鉄の電車番号と重複するため「10系」に変わりました。以降、増備が進められ、御堂筋線ひいては大阪市営地下鉄の顔になりました。

第三軌条車両の初の冷房車

10系は大阪市営地下鉄初の冷房車だけでなく、第三軌条車両では全国初の冷房車でもあります。第三軌条方式とは簡単に書くとレール横にあるサードレールから電気をくみ取るシステムのこと。そのため第三軌条車両には通常の電車にあるようなパンタグラフはありません。

冷房化にあたり、車両に冷房装置を設置するわけですが、ここでクリアすべき課題が出ました。トンネル断面の関係から、レール面上の限界数値は3750mm。そのため、通常の電車のような箱のような冷房装置を屋根に設置することは難しい状況でした。

そこで高さ405mmの薄型冷房装置を車端に設置することになり、両車端寄りの天井の高さは少し低くなる結果に。ただし、後期に製造された車両では車端部の圧迫感が改善されています。

制御機器は熱が出にくい当時最先端の技術であるチョッパ制御を採用し、トンネル発熱量問題に答えを出しました。

平成に入りリニューアル工事を行う

平成に入り、新型車両が登場する中で10系は1998年からリニューアル工事を行いました。座席モケットの取り換えや、明るいアイボリー色の化粧板の採用。また車内案内表示器も設置されました。制御機器では17~26号編成がVVVFインバータ制御になり、新型車両と肩を並べて走り続けました。なおVVVFインバータ制御への改造により、形式名は「10A系」に改称されています。

近年は30000系の導入が進み、10系の廃車が進みました。そして7月4日に最後の1編成10A系26編成が御堂筋線から引退し、姿を消しました。

大阪メトロでは10系引退を記念し、7月29日から「10系引退記念1日乗車券セット」を販売します。また発売開始に先立ち7月24日は堺筋線北浜駅で特別販売会を開催します。

10系亡き後、大阪メトロで昭和に投入された最後の形式は中央線で活躍する20系です。20系も新型車両の導入に伴い、本格的に廃車が行われることが予想されます。大阪メトロでも確実に昭和が遠くなりつつあります。

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