欧米で流行しつつあるサル痘 後手に回らぬ対応を

ドクター備忘録

谷光 利昭 谷光 利昭

 「サル痘」は、聞きなれない病気ですが、欧米で少しずつ流行しつつある病気です。ポリオワクチンを製造する際に、カニクイザルから発見されましたので、そう呼ばれています。実際は、げっ歯類という動物に多く感染しており、リス、ネズミ、ヤマアラシなどの動物には注意を要するようです。

 サルに天然痘のような症状を発症させるのですが、人間でも同様の症状を認めます。コンゴ盆地系統群と西アフリカ系統群に分けられ、致死率はそれぞれ10%と3・5%前後と言われています。

 今回、欧米で蔓延しているのは、後者の致死率が低い西アフリカ系統群と報告されているようです。感染者は、ほとんど男性。最も多く報告されている国は、イギリスです。次いで、スペイン、ポルトガル、カナダ、ドイツ、アメリカの順だそうです。同性で性交渉をもつスペインの特殊浴場的な場所からの感染が広まっているとの話もあります。

 過去にアメリカでは、げっ歯類による咬傷からの感染も報告されており注意を要します。基本的には濃厚接触で感染しますが、エアゾルからの可能性もあり、感染者と接するときは、マスク、ゴーグルは必須となります。潜伏期間は7日から21日とされています。

 感冒症状のあと、リンパ節腫脹を認めます。その後、舌、口に発疹が出現し、全身に広がります。発疹が水泡様から痂疲(かひ)化すれば感染力はなくなると言われています。

 欧米には治療薬があるようですが、日本では承認されておらず、対症療法のみとされています。暴露後4日以内であれば、天然痘ワクチンが有効だとされていますが、昭和50年以降は天然痘ワクチンの接種が中止されていますので、日本でどの程度の備蓄があるかが問題になってきます。後手後手に回らず、英断をもって行動して頂きたいものです。

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