ある日突然、妻が乳がんに…不安をもつ夫が集まれる場を 乳がん患者のパートナーを支える支援プログラム

國松 珠実 國松 珠実

日本では現在、年間約10万人の女性が乳がんになるといわれています。しかも働き盛りや子育て真っ只中の30代後半から急速に罹患者が増えるのが特徴です。

「乳がん患者をサポートするグループは多いですが、患者たちに寄り添う家族のグループは、意外にありません」と話すのは、乳がん患者パートナー支援プログラムPAPACOCO(パパココ)実行委員代表の仲本典明さんです。支えるパートナーも、口にできない悩みや迷いを抱えています。そのような気持ちを少しでも楽にする場づくりを目指しています。

情報がなかった、不安も消えなかった

突然告げられる「妻の乳がん」という事実。それはパートナーにとってものすごい衝撃と共に、明日からの暮らしに不安と混乱をもたらします。

「そこで『あなただけじゃないよ』『みんな、こうしてやってきたんだよ』という声を聞けば、少し落ち着いて考えられるようになると思うんです」と仲本さんは言います。

広島で、乳がん患者のパートナーを支援する活動に取り組む仲本さん。きっかけは、ご自身にもそういう場を求めたことがあったから。そう、仲本さんも乳がんの妻を持つ夫です。当時、妻はまだ31歳、仲本さんは32歳で、それまでがんのことなど少しも考えたことはありませんでした。

「乳がんになった妻を持つパートナーが、その後どのように寄り添ってきたのか。他の人はどうしているのか、純粋に知りたかった」と、仲本さんはインターネットで本当に役立つ情報や、具体的な家事の切り回し方を検索したそうです。特に気になったのが、仕事にまつわること。家族を支えながら、どのように仕事に対処したか、経験談や体験談を探しましたが、ほとんど見つからなかったと言います。

「考えてみれば当然だと思います。患者でもない人が、病気という非常にセンシティブな話題を出すことは、ほとんどありません。また男性は、自分のことをひけらかさない人が多いかも知れませんね」

サポートし合う場づくりに向けて

仲本さんは、パートナーの心構えとして冊子『PAPACOCO REPORT』を制作しました。乳がんの基礎知識の紹介からがんにまつわる悩み、そして仕事や生活、収入、家計、保険、さらにメンタルや夫婦関係の変化まで、アンケートの結果報告と分析が綴られています。また乳がんの妻を持つ夫3人の座談会の様子も紹介しました。30ページほどの読み応えのある内容で、広島市内の病院やクリニックで無料配布されています。

乳腺クリニックの医師を講師に招いたオンライン勉強会も開催。質問の時間も設け、一緒に病院に行けないパートナーの不安解消にも一役買っています。

実は、PAPACOCOの活動はこの春から本格稼働したばかり。PAPACOCOとは、「PAPA(パパ)」の皆さん、悩んでいるなら「COCO(ここ)」に来てくださいという意味です。

活動に際しては、全国に必要としてくれる人がどれだけ隠れているかわからないのが課題と言います。しかし毎年10万人近くもの新たな乳がん患者のうち、妻や母親の割合を考えれば、かなりの数のパートナーが、今も一人で途方に暮れているかもしれません。

仲本さんは「乳がん患者を支える人が孤独に陥ることなく、気持ちを共有し、サポートし合う場として育てていきたい」と語ってくれました。

■facebook https://www.facebook.com/papacoco2022

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