「身寄りのない病気の姪」は同棲している内縁の妻だった!?元夫の“嘘”に振り回された女性が「後悔していること」

長岡 杏果 長岡 杏果

結婚する前は「大企業勤めだと聞いていたのに実はアルバイトだった」「初婚だと言っていたのに実は離婚歴があった」など、婚約者の嘘にだまされて結婚をしてしまった方はいませんか? 夫婦関係が破綻するほどの悪質な嘘や詐欺、強迫によって結婚をしてしまった場合、日本の民法では婚姻を取り消すことができるとされています。離婚を経験した早紀さん(仮名・30代)は、元夫にだまされて結婚した一人です。

――結婚に至るまでの経緯を教えてください。

元夫とは社内恋愛でした。彼は北海道の本社から長期出張で関西に来ていたのですが、そのときに知り合いました。最初は物静かな人という印象を受けました。物腰の柔らかい彼は部下からも慕われ、誰に対してもとても優しい人でした。そんな彼に惹かれ、休みの日には一緒にでかけるようになり、お付き合いをすることになりました。その後、結婚して彼の故郷である北海道に引っ越しました。

――元夫にはどのような嘘をつかれましたか?

実は、彼には北海道に10年以上同棲している内縁の妻がいたのです。

付き合っている頃から彼からは「僕は身寄りのない病気の姪を預かっている」と聞いていました。また、両家顔合わせの席でも義母から「息子は病気の姪を預かっていて、とても優しい子なの」と言われたので、私も私の両親も彼の優しい人柄もあって、疑いもせずまんまとだまされてしまいました。

もし、内縁の奥さんがいることを知っていれば結婚も交際もしませんでした。遠距離恋愛をいいことに彼は嘘を隠し通せてしまったのです。

――なぜ彼女の存在がバレたのでしょうか。

私が彼の使わなくなった携帯を見てしまったからです。私と付き合っていた頃にも彼女と彼は「早く北海道に帰ってきてね」「愛してる」「大好き」といったやり取りをしていました。入籍後も内縁の妻から「お金が足りないから送ってほしい」「犬の病院に付き添ってほしい」「夕飯作って待ってるね」などの連絡がきていました。私は頭が真っ白になり何が起きているのか理解ができませんでした。

さらに、彼は結婚後も毎月14万円を彼女に生活費として送金していたのです。また、彼は結婚前から複数の消費者金融やいわゆる闇金融から多額の借金をしていたことも発覚しました。

――トラブルは他にもありましたか。

トラブルは数え切れないほどありました。彼女が妊娠したから認知したいと言い出したときは思考回路が停止しました。彼は「自分の子どもではなく、彼女の不倫相手の子どもだ!彼女に頼まれたから認知したい」と言ってきたので、私は猛反対しました。

また、彼が仕事を勝手に辞めて無職になったので、私は食べていくために知らない土地で仕事を掛け持ちして、朝から晩まで働きました。しかし彼は1日中お酒を飲んで寝てばかりで、仕事を探すわけでもなく、しまいには「うつ病になってしまったから働けない」と言い出したのです。病院に行って診断されたわけではなく、自称うつ病でした。

お酒を飲んで暴力を振るうようにもなり、家庭内は壊滅的な状況でした。彼は夜になると家を出ていき、内縁妻の元へ行ってほとんど帰って来なくなりました。

婚姻生活も破綻している状態だったので、離婚の話をしましたが「応じるつもりはない」と言われ、離婚が成立するまでに時間を要しました。

――お義母さんとの関係はどうでしたか。

義母は私を抱きしめて、嘘をついてしまったことを、泣きながら何度も詫びてきました。

「息子の借金も私たちが肩代わりするから許してほしい。早紀さんが働いて稼いだお金も、早紀さんが息子に買ってくれたものも全額払わせてほしい。今後生活費もすべてこちらが負担するから許してほしい」と謝罪がありました。

でも、私は信じていた人たちに裏切られ、心を踏みにじられ、悲しみのどん底にいたため、義母の謝罪の言葉が心には響きませんでした。

――このことを弁護士に相談しましたか。

いいえ。今ならすぐ冷静に弁護士に相談して、請求が通るか否かは別として「婚姻取り消し請求」を依頼していたと思います。

しかし、当時はあまりのショックから精神的にもどんどん病んでいき、正しい判断ができなくなっていました。ご飯が一切喉を通らなくなり、体重は30キロ台にまで激減し、入院生活を送ったこともありました。

なぜ内縁の妻がいるのに、私と結婚をしたのか…について聞きましたが「彼女は精神疾患のため両親から結婚を反対されつづけた。兄弟が医者という世間体があるから、彼女の代わりに私と結婚し親を安心させたかった。僕にとっての家族は彼女だけ」とはっきりいわれました。

彼も「バレなければラッキー」くらいにしか思っていなかったのかもしれません。きっと嘘がバレた後のことなど誰も考えてもいなかったのでしょう。私は愛する彼と幸せな家庭を築けると信じていただけに、だまされた悲しみはとても深く、立ち直るまでにとても時間がかかりました。

   ◇   ◇

人をだまして結婚することは悪質です。人一人の人生をめちゃくちゃにし、心が壊れてしまうほど傷つけ、尊厳を踏みにじる悪質な行為です。

もしも結婚後にだまされたことに気付いたら、早急に弁護士に相談することをおすすめします。だまされて結婚したことに気付いてから、3カ月以内であれば、婚姻の取消しを家庭裁判所に請求できます。取り消しが認められるには配偶者からだまされたという証拠が必要になりますので、困ったときには一度、市区町村の無料弁護士相談会や法テラスなどで相談してみるとよいでしょう。

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