カエルや蛇でつないだ命 保護時、子猫の目は白濁していた 今は飼い主さんの隣が大好きに 「外で生きることがこんなに過酷とは」

渡辺 陽 渡辺 陽

雨の中、カエルを追いかけていた子猫

豆虎ちゃん(6歳・メス)は、雨の夜、ある民家の庭でカエルを捕まえようとしていた。まだ子猫だった。大阪府に住む智さんは、仕事帰りにたまたま豆虎ちゃんを見かけたが、その時はそのままやり過ごした。

しかし、智さんは翌日も豆虎ちゃんのことが気になった。豆虎ちゃんがいた家の人に声をかけ、見かけたら教えて欲しいとお願いし、玄関先の植え込みにごはんを置かせてもらったという。

「豆虎に会うことはできないかもしれないけれど、ごはんが減っていたら生きている、そう思いました」

大雨の夜、逃げる子猫を捕獲

智さんが確認すると、毎日ごはんは減っていた。

「でも、豆虎が食べたという確証がなくて。かといって、ごはんを置くのをやめたら死んでしまうかもしれない。いろんなことを考えました」

4、5日経った頃、大雨が降ったので、智さんは豆虎ちゃんが無事でいるかどうか心配になった。夜遅くに雨が上がったので様子を見に行くと、豆虎ちゃんは雨上がりの道路をちょこまか走っていた。

「今がチャンス!そう思って追いかけました。その先には水路があったので、追い詰めたら水路に落ちて溺れてしまうかもしれないという不安もよぎりました」

豆虎ちゃんは、水路の横でうずくまっていた。智さんは、何も持っていなかったので気合を入れて手掴みにした。豆虎ちゃんは全力で大暴れ。智さんを噛んだり、引っ掻いたりした。

「手に激痛が走りましたが、この手を離したらもう会えない。そう思いました」

何とか捕まえて、車に積んであった紙袋に入れると、片目が白濁していた。そのまま夜間でも診てくれる動物病院に連れて行った。生後2カ月くらいだったという。

外で生きることは過酷だと教えてくれた

名前は豆虎ちゃんにした。智さんは先住猫のよつばちゃんを飼っていたので、慎重に2匹を会わせた。幸いよつばちゃんは豆虎ちゃんをすんなり受け入れてくれたそうだ。

保護当時、豆虎ちゃんはガリガリに痩せていて、カエルや蛇を食べることによって寄生するマンソン裂頭条虫がお腹にいた。目にも怪我をしていて、二つ穴が開いていた。穴は塞がっていたが、智さんはどんなに痛かっただろうと思い、胸がいっぱいになった。

さらに、豆虎ちゃんは成長するにつれて眼球がどんどん大きくなってきて、「牛眼」と言われる眼病になった。眼圧が高くなって来たので、専門医に通って手術のタイミングを見計らった。

「豆虎が痛みを感じているかもしれず、さらに大きくなると破裂するかもしれないということでした。ただ、見えている目を手術することに抵抗がありました。3歳の時、もう限界だと判断して手術してもらったのですが、豆虎は片目の視力を失いました」

豆虎ちゃんはだんだん片目の生活にも慣れてきた。猫よりも人といるのが好きなので、家族のそばにいることが多い。智さんは、できるだけ声をかけたり撫でたりするようにしているそうだ。

「豆虎を飼うまでは、外で子猫を見かけても『可愛い』と思うだけでした。確かに可愛いのですが、お外にいる子は可愛いだけではないのだと気づきました。豆虎は目を怪我して、ガリガリに痩せていました。それでも痛みに耐えながら生きるためにカエルを捕まえようとしていたんです。命を繋ぐため必死だった。豆虎は、外で生きることがどんなに過酷なことか私に教えてくれました」

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