高さ180cmの巨大紙相撲で白熱の取組 笑いあり涙あり…本気のぶつかり合いに記者も手に汗

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会場に設置された特設の土俵。周りには行司や勝負審判が控え、伝統的な国技の始まりが予想される。ところが呼び出しとともに現れたのは、ゴリラにユニコーン、お姫様…? 手作り紙力士で競う「巨大紙相撲 さとのね場所」が兵庫県三田市総合文化センター・郷の音ホール(天神1)で開かれた。ただの遊びと見くびってはいけない。笑いあり涙あり、本物の相撲さながらの本気のぶつかり合いが繰り広げられたのである!

年齢や体格差に関わらずイベントを楽しんでもらおうと、同ホールが初めて企画。家族や友人と誘い合わせ、幼児からお年寄りまで12組71人が参加した。

紙力士は畳サイズの段ボール2枚を「く」の字で立つよう張り合わせ、恐竜や動物など好きな形に切り、色を塗って作る。高さはおよそ180cm。木製の土俵の上で力士の腕を組み合わせたら、思いっきり土俵をたたく。相撲と同じで、枠の外に出るか体の一部が先に地面に着いたら負けとなる。

講師を務めたのは、アーティストユニット「KOSUGE1-16(コスゲイチノジュウロク)」として、巨大紙相撲を全国に広める土谷享さん(45)=高知県佐川町。自転車をこいでミニチュアの競輪選手を動かすレースゲームや、子どもが乗れる大きさのサッカーボードゲームなど、コミュニケーションを生むアートをテーマに各地で創作やワークショップを続ける。巨大紙相撲の全国巡業(ワークショップ)は2004年から始め、50場所以上で開いてきた。

キラキラ部屋のプリンセスアイドル!? 自由すぎる力士たち

参加者は取組前のワークショップで、考えてきた力士を形にした。土谷さんはいい勝負になるように足や頭の大きさ、両腕の位置などに一定のルールを設けており、「新弟子検査」として下書きをメジャーでチェック。条件をクリアすると段ボールを切る作業に移ることができる。ポイントは足裏の角度で、前かがみの攻め型や安定の守り型など、それぞれの戦い方を決めていく。

3世代でチームを組んだ三田市立ゆりのき台小学校5年の平つむぎさん(10)は愛犬のキャバリアをイメージした「ちゃんこごっつぁんす部屋」の「ワンワンパンチ」(しこ名)を作った。ピンクの肉球がかわいい前足から繰り出す突っ張りが持ち味だ。同市立松が丘小学校1年の中村心香さん(6)は自分をモチーフにした「キラキラ部屋」の「プリンセスアイドル」で勝負。周りをメロメロにして倒す作戦だといい、色ペンやテープで模様を付け、輝く瞳を描いた。

「ピカチュウがよがっだぁぁ」。作業が大詰めを迎えたころ、男の子の泣き声が響いた。チームではゴリラを作っていたが、ピカチュウも作りたかったのだという。機転を利かせたスタッフが予備の段ボールを用意。母親がどのチームよりも早く作り上げ、笑顔を取り戻していた。

いざ、取組!

はっけよい、のこった~!

合図とともに大人も子どもも一気に土俵をたたく。

完成した12体は4リーグに分かれ、それぞれの1位が準決勝へ。「今のは寄り切りになりますね。腕の角度がよかった」「見事なはたき込みです」。大阪相撲甚句会の協力のもと、相撲甚句の披露や、行司による進行、解説など、本物の相撲さながらの雰囲気で進められた。負けて涙する子を父親が抱きかかえて退場するなど、白熱した戦いを見せた。

決勝戦。「ひがーしー、ユニコーンのゆりちゃん~」「にーしー、アスナロザウルス~」。勝ち抜いてきた2体が見合う。「のこった~!」。両者これでもかと土俵をたたく。

しかしここで、予想外の展開に。たたけばたたくほど力士が離れ、外に向かっていく。先に枠線を踏まないようにと互いにたたく手を止め、沈黙が生まれた。足の裏が平らすぎると起こる現象だといい、審判の指示により双方が足の裏を斜めに削って再開した。

最後はユニコーンに軍配が上がった。押し出されながらもバランスを保ち、相手が倒れるまでこらえた。準優勝のアスナロザウルスを作った森田大智ちゃん(5)と濱野日向ちゃん(5)は、あと一歩の悔しさをにじませながらも「土俵の奥のほうをたたいたらいいって分かった」とコツをつかんだ様子。家族5人で優勝した鞍谷涼葉ちゃん(5)は「大好きなユニコーンで勝ててよかった。ハート(の模様)がお気に入り」。片腕に息子を抱えながら健闘した母の瞳さん(35)は「娘がたたき方のコツを教えてくれた。家族一緒に楽しめてよかった」と笑顔を見せた。

同ホールは紙相撲を毎年恒例の行事にしていく予定といい、土谷さんは「地域の特色が出ておもしろいので、三田独自の形で発展していってほしい」と話した。

(まいどなニュース/神戸新聞・喜田美咲)

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