C大阪の本拠にワクワク感あふれる巨大壁画が生まれた背景は? 描いたのはワールドクラスのアーティスト

山本 智行 山本 智行

Jリーグ、セレッソ大阪の本拠地「ヨドコウ桜スタジアム」(大阪市東住吉区長居)にミューラルと呼ばれる巨大な壁画が描かれ、21日にお披露目された。「HANASAKA MURAL」と名づけられ、場所は北西エントランス。Jリーグの試合会場としては初の試みだとか。第1弾の作品「STILL RUNNING」は大阪・熊取出身のミューラルアーティスト、COOK(クック)さん(47)が手がけた。関係者が壁画に込めた思いとは。

寂しかったヨドコウ桜スタジアムの北西エントランスに生命が吹き込まれた。

今回、お披露目された「HANASAKA MURAL」は縦3・55メートル、横16・2メートルという巨大スケール。無機質だった壁にポップでポジティブな絵が描かれ、一気に賑やかになった。

スタジアムの横を通るJR阪和線からでもチラリと見えるかもしれない巨大な壁画。そもそもの始まりは昨年4月のリニューアル時に遡る。

「エントランス北西の壁を何か新しいコンテンツにできないか」

桜スタジアムの管理・運営を任されている一般社団法人「セレッソ大阪スポーツクラブ」からセレッソ大阪のトップパートナーでもあるヤンマーホールディングスへ相談があったのがきっかけ。そこから両者は共同で壁画を通して日本のアート文化の醸成を目指す「ミューラルアートプロジェクト」を始動させた。

ミューラルアートとは、壁面をキャンバスに見立てて描くアートのこと。アメリカなどでは明るい街づくりの手法として一般的になっているそうだが、日本ではまだ広く認知されていない。その意味では野心的な取り組みでもあり、ヤンマークリエイティブ部の土屋陽太郎部長は「Jリーグの公式戦で使用されるスタジアムとしては、史上初めての試み」と自負する。

また、セレッソ大阪スポーツクラブの山田耕一郎代表理事もミューラルアートの存在意義を強調。「若手アーティストの育成はもちろん、子どもたちが参加し、アートに触れる場となることで、心に残る体験が期待できる。建物が生きものになることを願っている」と粋なコメントを残した。

市民の憩いの場としても期待される「HANASAKA MURAL」は年3回ほど、異なるアーティストによって新たな絵が描き込まれる。年内は8月、12月に更新していくといい、土屋部長は「ポジティブな作品であれば、あとはアーティストに自由に描いてほしいと考えています。せっかく描いてもらった作品が3、4カ月でなくなるわけですが、はかない一面があるのも魅力でしょうか」とサクラの花になぞらえ「将来的には“ミューラルの聖地”と呼ばれる場所になっていってほしい」と力を込めた。

今回、栄えあるトップバッターを任されたクックさんは大阪の熊取町出身で、このあたりはホームのようなもの。だが、20歳から芸術の世界に身を置き、ロサンゼルスでも活動しているワールドクラスのミューラルアーティストだ。

自身は中学校のとき、サッカー部でゴールキーパーをしていたそうで「サッカーは大好き。話をいただいたときはまさか、こんな場所で描けるなんて、と光栄に思いました」と喜んだ。

作品のキャラクター「クックくん」は自身だそうで、タイトルは「STILL RUNNING」と名付けた。制作にあたってはペンキとスプレーを使い、6日ほどで仕上げたという。ちなみにスプレーは「乾きが早い」という理由でドイツ製だそうだ。

「作品には”走り続けよう”という思いを込めました。コマ送りのような図柄も考えましたが、少しコミカルに、最後の絵は転んでスプレーが転がっている様子を表現したもの。スポーツもアートも街も、そして今回のプロジェクトも走り続けて行くことを願っています。本音を言えば、自分が描いた絵が残ってほしいですが、みなさんの記憶に残れば、それで十分です」

クックさんは、これまで手塚プロダクションとの共同企画やアディダスやルイヴィトンなどへのアートワークを提供するなどしており、今後の活躍が期待されている。

現在、7位につけているセレッソ。23日にはガンバとの大阪ダービーが待ち受けている。このプロジェクトを機に一気に首位戦線へ突っ走りたいところだ。

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