「本に救われた」直木賞作家 10本超の連載抱えながら全国の書店巡りツアー 廃業寸前の書店の経営も

京都新聞社 京都新聞社

 滋賀県大津市在住の直木賞作家今村翔吾さん(37)が、47都道府県の書店や学校を訪ねて回る「全国ツアー」を敢行する。「応援してくれた読者に会いたい。書店員さんにお礼の言葉を伝えたい」と5月末に大津をたち、机を設置したワゴン車で移動中も執筆しながら約100日間かけて巡回する。

 今村さんは、関ケ原の戦い前夜の大津城で、石垣と鉄砲の職人集団同士がぶつかる人間ドラマを描いた「塞王(さいおう)の楯(たて)」で2021年下半期の直木賞を受賞した。受賞が決まった記者会見をはじめ、今村さんは折に触れて「本に救われて今の自分がある。読者に一番近い本屋さんを応援し、盛り上げたい」と“書店愛”を口にしてきた。

 今回の企画について「作家が来るのは大都市の有名書店だけ、といった声もよく耳にする。小さな店構えでも、本が大好きで頑張っている書店さんは多い。求められたら、できるだけ足を運んで盛り上げに一役買いたい」と話している。

 昨年末には、廃業の危機にあった大阪府箕面市の書店「きのしたブックセンター」の経営を引き継いだ。そこで出会った若い読者をはじめ、本を愛し、応援してくれる全国の人たちに「じかにお礼を言う機会をつくりたい」との思いもある。

 直木賞に決まった時に「文学賞はお祭りだと思う」と語っていた今村さん。「私にとっての祭りはまだ終わっておらず、むしろここから」との思いを込め、今回の全国行脚は「今村翔吾のまつり旅 47都道府県まわりきるまで帰りません」と名付けた。

 常時連載10本超を抱える人気作家。締め切りは大丈夫だろうか。今村さんは「作家は執筆に専念すべきという考えもあるけれど、一人くらいお祭り好きの騒々しい作家がいてもいいでしょう。体力的にも、今ならいける」と自信をのぞかせる。

 書店に限らず、学校や社会福祉施設なども対象に、現在、行き先の施設を募っている。希望者は応募専用ページから申し込む。申し込みはこちら→https://form.run/@zusyu-1647661012

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