「青春18きっぷ」“のびのび旅行”は難しくなりにけり 夜行快速がなくなり、新幹線開業も追い打ち…

新田 浩之 新田 浩之

春になると「青春18きっぷ」の季節がやってきます。JR各社はこのほど2022年における「青春18きっぷ」の概要を発表しました。

2022年「青春18きっぷ」の概要

2022年はこれまでと同様に春季、夏季、冬季に販売されます。それぞれの発売期間と利用期間は以下のとおりです。

▽春季
発売期間:2月20日~3月31日
利用期間:3月1日~4月10日

▽夏季
発売期間:7月1日~8月31日
利用期間:7月20日~9月10日

▽冬季
発売期間:12月1日~12月31日
利用期間:12月10日~2023年1月10日

価格は5日(5人)分で1万2050円、「青春18きっぷ」とセットで使用することにより北海道新幹線の一部区間と道南いさりび鉄道に乗車できる「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」が2490円です。

ルールは例年通りと同じで、基本的にJR線の快速・普通列車が乗り放題。そのほか、JR東日本が運営するBRTとJR西日本宮島フェリーなども利用できます。

「青春18きっぷ」と「ムーンライト」シリーズとの関係

「青春18きっぷ」は1982(昭和57)年に「青春18のびのびきっぷ」という名で発売されました。当初は1日券3枚と2日券1枚という構成で、ゴールデンウイークも使えました。1984(昭和59)年夏から1日券5枚になり、1996(平成8)年春に現在の1枚ものになりました。

年齢制限なし、JR(国鉄)線の普通・快速列車に自由に乗車できるというルールも基本的に変わっていません。昭和、平成、令和と変わりゆく中で、全国規模で使え、ルールが大きく変わっていない「青春18きっぷ」は「国宝級」と表現してもよい、貴重な存在です。

しかし「青春18きっぷ」は変わらなくても、周りの環境は激変しています。発売当初は廃止予定の国鉄ローカル線を乗車するために、「青春18きっぷ」が利用されました。

1987(昭和62)年のJR化後、現在の高速バスにあたる夜行快速列車「ムーンライト」シリーズが次々と登場。関西発では「ムーンライト九州」(京都~博多)、「ムーンライト高知」(京都~高知)、「ムーンライト八重垣」(京都・大阪~出雲市)が設定されました。

「青春18きっぷ」を持った利用者は普通座席車を利用し、夜間に格安で長距離移動が可能に。たとえば大阪駅から博多駅へは「青春18きっぷ」で所要時間約9時間30分、運賃は2日分にあたる指定券込みの5000円台で済みました。

しかし高速バスの台頭や使用車両の老朽化などにより、2000年代後半から次々と姿を消すことに。「大垣夜行」(東京~大垣)の伝統を引き継いだ「ムーンライトながら」も2020年3月を最後に臨時運転も含め休止し、「ムーンライト」シリーズは姿を消しました。

「ムーンライト」シリーズの廃止により、「青春18きっぷ」を使った夜間の長距離移動は事実上不可能になりました。

 並行在来線の廃止も追い打ちに

「ムーンライト」シリーズの廃止と同じく「青春18きっぷ」利用者の頭を悩ませているのが新幹線開業による並行在来線の廃止です。たとえば2004(平成16)年に九州新幹線新八代~鹿児島中央間が開業した際は並行する鹿児島本線の一部が第三セクター鉄道「肥薩おれんじ鉄道」に移管されました。

原則として「青春18きっぷ」は第三セクター鉄道に乗車できないため、現在では「青春18きっぷ」だけで旧鹿児島本線ルートで鹿児島中央駅に行くことはできません。

わざわざ「原則」と書いたのは、新幹線と並走する第三セクター鉄道、青い森鉄道線、あいの風とやま鉄道線などでは利用できるからです。しかし、一部駅を除き途中駅での下車は不可能といった制約があります。

“のびのび”とした青春18きっぷの旅行はだんだん難しくなっているのが現実。登場時の1982年とは全く異なることがわかります。

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