「干支には犬がいるのに、なんで猫はいないの?」……猫好きなら一度はそう思ったことがあるのでは? ところが、広い世界には「猫年」生まれの人がいるという。
猫年生まれだなんてうらやましすぎる……といろいろ調べてみたところ、ベトナム、チベット、タイ、ベラルーシ、ブルガリアなどの国々で、干支に猫がいるもよう。今回はこの「ベトナム」に絞って猫年、そして現地での干支事情について知人などに取材して調べてみた。
日本でいう「うさぎ年」が、ベトナムでは「猫年」だった
ベトナムの干支は12のうち4つが日本と異なる。日本では4番目の干支は「うさぎ」であるが、ベトナムでは「猫」になっている。
これは、ベトナムではうさぎがそれほど身近な動物ではないことと、中国語でウサギを意味する「mao」との発音が、ベトナム語の「meo」=猫に似ているからという説があるそう(干支はもともと、中国由来のため)。
ほかにも「丑(うし)」がベトナムでは「水牛」、「未(ひつじ)」は「ヤギ」、そして、「亥(いのしし)」は「豚」になっている。
ちなみに、2022年の今年は日本、ベトナムともにトラ年。ベトナムでは、来年がいよいよ猫年になるのだ。
ベトナムでは猫年生まれの人は、「やさしい人」と考えられているそうだ。同じネコ科の動物でもトラ年生まれの女性は気性が荒く、結婚すると男性は苦労する……のような俗説があるそうでびっくり。日本でいえば「丙午(ひのえうま)」の女性のような感じだろうか。もちろんなんの根拠もないので気にしない人も多いのだろうが、日本にはない感覚なので興味深い。
ベトナムでは猫年になると、街が猫まみれになる!?
ところで、日本ではお正月といえば新暦の正月(1月1日)だが、現地では「テト(Tet)」と呼ばれる旧正月を盛大にお祝いする(ちなみに、2022年の旧正月は2月1日)。
ベトナムでは旧正月になると、街に干支の動物があふれるという。たとえば駅やショッピングセンターのディスプレイにも猫が登場しまくるそうで、干支に猫がいない国の者としては、想像しただけで垂涎である……! 日本と同じく、年賀状や干支の年賀切手などもあるそう。ちなみに、旧正月に欠かせない食べ物は、「バインチュン」というもち米、豚肉、緑豆を使った伝統的なちまきだそうだ。
「お年玉」の習慣もあり、日本同様、干支のイラストが入ったポチ袋にお金を入れて子どもたちに配る。ただ、日本の習慣と多少、違うのは上司から部下へ、というパターンもあるとのこと。
ベトナムのポチ袋は、日本のものより豪華で華やかものが多い印象だ。あざやかな朱赤に、金色の箔押しでおめでたいムードがあふれている。イラストに「Chúc mừng năm mới(あけましておめでとう)」などの言葉をあしらっているものが多い。
猫年生まれと相性が良い干支は、ヤギと豚だった
さらに驚いたのが、日本では相性を話題にするとき血液型を持ち出すのが定番だが、ベトナムでは干支が話題になることが多いということ。
ちなみに、日本でもあまり知られてはいないものの、「向かい干支」という言い伝えがある。図のように12の干支を時計のように並べたときに、自分の対面にある干支にあたる友人やパートナーは、お互いに足りないものを補いあえるため、相性が良いとするものである。
ベトナムでも十二支を時計のように並べたときの相互関係で見ていくのだが、少し複雑なのでわかりやすい図にすると、このような4つのグループに分かれる。つまり、ベトナムで猫年生まれの人は、ヤギ年生まれか、豚年生まれの人と相性が良いということになる。なかでも結婚相手は相性が良いグループの人を選ぶことで、お金持ちになれる……と信じている人が今もけっこういるのだそうだ。信じる信じないは別として、初対面の人とでも気軽に盛り上がれる話題にはなりそうである。
と、そんなわけで猫の日に、ベトナムにおける「猫年」についてお伝えした。来年、コロナが落ち着いていたら、猫好きの皆さんはぜひ、「猫年」のベトナムへ久しぶりの海外旅行へ出かけてみてはいかがだろう?
<取材協力:NGUYEN QUYEN、笑福Lotus 山崎 永子>