ワリエワの五輪ドーピング問題に夜回り先生が喝!「選手はビジネス化した勝利第一主義の犠牲」

夜回り先生・水谷修/少数異見

水谷 修 水谷 修

 北京五輪のフィギュアスケートに出場しているロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワ選手のドーピング違反問題が今大会だけでなく、スポーツ界の在り方に大きな影を落とした。「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏が「オリンピック、ドーピング問題の影にあるもの」と題して見解をつづった。

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 北京オリンピックももうすぐ終わりとなります。世界中の人たちが、見守る中で、多くのアスリートたちが、感動を日々私たちの心に刻んでくれています。その一方で、ROC のフィギュアスケート代表ワリエワ選手のドーピング問題が、暗い影を落としています。

 このドーピングですが、歴史的に見れば、競馬から始まりました。多額の掛け金が動く競馬で、競走馬に、覚せい剤やカフェインなどの興奮剤を投与し、一時的に興奮状態を作り、勝たせてお金を得るために始まったといわれています。これが、スポーツ選手の間にも広められ、かつては女子選手に男性ホルモンを投与したり、筋肉増強剤を継続的にかつ組織的に投与したり、また競技直前に、興奮剤などを投与するということが、当たり前のようになされていた時代もあります。しかし、それが、公平な試合という観点からも、選手たちの健康や生命維持の問題からも、青少年たちや社会に対する影響からも、選手たちの学業や身体的、知的、精神的発達への影響からも許されることではないと禁止されるようになりました。

 現在でも、このような疑いが出てくることは、哀しいことです。

この背景には、何があるのでしょうか。勝利第一主義があるのではないでしょうか。現在、オリンピックやスポーツは、ビジネスです。関わっている選手が勝利すれば、ましてや、メダルを取れば、大変な金額のお金が動くビジネスです。選手たちは、本人たちがそう考えているかはわかりませんが、きつい言い方ですが、お金もうけの道具です。だから、応援する企業やその指導者も勝たせなくてはならない。だからこそ、こんな問題が起きるのではないでしょうか。

 私は、競技で勝つために、どう考えても無理な運動を日々続けさせられて、生理が止まり、その後の人生に多くの障がいを持つことになった人からの相談も受けました。また、競技期間に生理を止めるように、投薬されて、精神的に不安定になった選手からの相談も受けました。十代の頃から、筋肉増強のために一部の健康食品と称する物質や薬を飲まされ、精神的に不安定となってしまった子どもたちからの相談も受けています。

 あえて言います。そのようなことまでして、1位を、金メダルを、世界記録を作ることに何の意味があるのでしょうか。多分、今回のオリンピックに参加している選手たちのほとんどすべての選手は、このような闇の世界とは関係なく、清く正しく自分の愛するスポーツを必死に極めてきた人たちでしょう。その人たちには、心から「おめでとう」の言葉を贈ります。しかし、すべてのアスリートたちに聞きたい。失ったものはないですかと。

 かつて、オリンピックは、「参加することに意義がある」と語られました。初心に返り、無理なく自然に競技者たちが参加を楽しむ大会になることを望みます。どうすればいいかは、IOⅭは、既にわかっているはずです。

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