暴力を目撃したことを口止めされた…こういう時って、親や先生に相談してもいいの?【チャレンジ!こども六法練習帳】

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小学生のあなたは、友達がいじめっ子から殴られているのを見かけました。しかし、口外しないよういじめっ子から迫られ、思わず承諾してしまいました。友達のために何とかしたいと思いますが、口止めされていることを親や先生に相談しても良いものなのでしょうか。

子どもがいじめや虐待などから身を守る際に役立つ法律の知識を、分かりやすく解説し、ベストセラーとなった話題の児童書『こども六法』に、このほど発展編として「学習ドリル」バージョンが誕生しました。題して『こども六法練習帳』。学校や家庭で直面する困ったトラブルを「練習問題」として取り上げ、ワークシートに書き込むように解いていくうち、「法律の使い方」が学べる内容といいます。書籍の中から抜粋して紹介します。

【練習問題…どうすればいい?】

ゴリラさんたちが“ボクシングごっこ”と言いながら、泣いているイヌさんを殴っていた。その様子を見たウーパールーパーさんは、ゴリラさんから「先生や親に見たことを言うなよ」と言われ、思わず「わかった…」と言ってしまった。

世の中には、守る必要のない「約束」もあります

【ヒントと解説】

ゴリラさんから「先生や親に見たことを言うなよ」と言われたウーパールーパーさんは、「わかった…」と答えているため、「この『約束』も守らなければならないの?」と思う人もいるかもしれません。確かに、「口約束も『契約』(民法第522条)であり、守る必要がある」ものです。しかし、民法には「公序良俗違反」(民法第90条)という考え方があります。とても難しい言葉ですが、私たちの社会の安心や安全をおびやかすような約束は無効(ないのと同じ)という考え方です。

そもそもイヌさんを殴ることは、“遊び”などと言えるものではまったくありません。人を殴る行為は「暴行罪」(刑法第208条※1/民法第709条・710条)にあたりますし、けがを負わせてしまえば「傷害罪」(刑法第204条※2)です。

ですから、ゴリラさんの口止めの「約束」は、ゴリラさんたちの暴力を止めようとする行動を禁止する、私たちの社会の安心や安全をおびやかす契約といえます。したがってこの契約は「無効」になり、ウーパールーパーさんはゴリラさんの行為について、大人(場合によっては警察を含む)にこっそり伝えてよい(刑事訴訟法第239条1項)ということになります。そのことに罪悪感を抱く必要はないのです。

【条文紹介】

※1「刑法第208条」

暴行について取り上げています▽暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

※2「刑法第204条」

傷害について取り上げています▽人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

【深堀り情報】

イヌさんのような“被害者本人”が捜査機関に被害があったことを伝えることを「告訴」、ウーパールーパーさんのような“被害者以外の人”が犯罪の存在を捜査機関に伝えることを「告発」と言います。また、大人の世界では、会社の中で“悪いこと”が行われたときに備えて「公益通報者保護法」という法律などがあります。これは“悪いこと”に気づき、それを通報してくれた人を保護するための法律です。

  ◇   ◇

教育研究者の山崎聡一郎さんと、弁護士の真下麻里子さんによる『こども六法練習帳』は永岡書店刊。192ページで1400円(税抜)。巻末では、実際にトラブルに遭遇したときの相談先なども紹介。証拠を残すためのメモや日記のとり方や「助けを求める手紙」の書き方などを、空欄に書き込むことですぐに使えるテンプレートとあわせて紹介しています。

▽永岡書店『こども六法練習帳』
https://www.nagaokashoten.co.jp/book/9784522439395/

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