ハローキティの和三盆、実現できたのは希少な木型職人による熟練の技「加工レベルがヤバすぎ」

渡辺 陽 渡辺 陽

「和三盆になったキティちゃんの木型です。岡山の菓子木型彫刻「京屋」の田中さんに彫って頂きました。一つ一つが手彫りで、お顔のバランスが決まっていてとても難しかったそうです。実は木型職人は全国でも数名です。京都では、何年か前に最後の一軒が廃棄されました。誰かやる人いないかなあ。」とツイートしたのは、京都で218年も続く和菓子屋、亀屋良長の店主吉村良和さん(@yoshimura0303)。ご本人にお話を聞きました。

リプ欄には、「《木型》は、現在ではなかなか入手しにくいと聞いてます。和菓子屋さんで使われてるのは、昔のモノだと聞いてます。貴重な日本文化ですね」など、消えいく日本の伝統文化を慈しむリプが寄せられました。

「美大とか芸術系の学校で技術の伝承に力を入れてくれないかしら、と思います」
「この精度の木型を手彫りは、もうできる人そうおらんだろうなぁ…半分人を『外れた』人でないと…継ごうにも加工レベルがヤバすぎる…」
「岡山の人凄い」
「木型を彫られるところを拝見しましたが正に匠の技でした。後継者が出てきて欲しいですね」
「こういう伝統文化、技の継承に国が力入れて欲しい」
「手彫りでこれを作るのは大変な技術ですね。CNCで削り出していいならできるのですが・・・」

また、中には、弟子入りしたいという人も。
「弟子募集していたりするのでしょうか?」
「脱サラしてこう言った文化の担い手になる事は可能なんでしょうか?ものすごく惹かれる一方で、失敗したり、家族を養えなかったらどうしよう、、という不安が大きいです。似たような人は多いと思います」

なぜ木型を彫る職人が減ってしまったのか、老舗の和菓子屋がハローキティの和三盆作りに挑戦する経緯とは。亀屋良長の店主・吉村さんに聞いてみました。

ーー亀屋良長といえば言わずと知れた老舗ですが、なぜキティちゃんの和三盆を作ってみようと思われたのでしょうか。和三盆といえば、鶴や亀など伝統的な形が主流だと思いますが。

「今回はサンリオさんからキティちゃんで和三盆を作ってほしいとご依頼をいただいたのです。最初、キティちゃんと聞いてもなぜなのか分からず『・・・』という感じだったのですが、サンリオさんから『キティちゃんには、キティちゃんを通じてみんなを幸せにしたい。平和な世の中の助けになれば』という理念があると聞いて、それなら私たちも作ってみたいと思ったのです。若い人に和三盆を知ってもらうきっかけにもなると思いました」

ーーハローキティの木型を作ってもらうに大変苦労されたということですが、どんなところが難しかったのでしょうか。

「木型は手彫りで作るのですが、キティちゃんは目と目の間隔とかヒゲの長さとかが細かく決まっていて、全てのキティちゃんがその型になっていないといけません。それが手彫りだとなかなか難しくて、最初に依頼した職人さんには『無理だ』と言われました。この木型を作ってもらうのにも3ヶ月ほどかかりました」

ーーなぜ職人さんが減ってしまったのでしょうか。

「昔は、お寺さんを中心に和三盆や落雁などの需要がかなりあったのですが、今はお寺にお参りに来る人も高齢化で減ってしまったので、お干菓子を配るところが以前よりだいぶ少なくなったのです。お茶をしている人やよほど好きな人でないと食べません。食べたこともない、知らないという人も多いでしょう」

ーー木型ではなくて、樹脂や3Dプリンタでも作れそうですが。

「確かに3Dプリンタでも作れますし、作ることもあります。しかし、木型には職人の個性が現れます。伝統文化や技術を継承していくのも大事なことです」

ーーそうなんですね、確かに画一的な製品より、一つ一つ丹精込めて作られていて、個性的な形だと買う楽しみも増えますね。キティちゃんだけでなく、バレンタインやホワイトデー用に犬型のココア「ショコラショー」も作られたのですね。この木型やデザインは江戸時代のものだとか。

「ショコラショーはゆるキャラですが、江戸時代にデザインしたものなんです。犬と竹が合わさって『笑』という漢字に見えるので、縁起物として使われてきました。木型は1つしかなかったので、5つ作ってもらいました」

◇ ◇

キティちゃんもショコラショーも貴重な木型で作られたと思うと、美味しさも際立つ感じがします。現代のデザインを通じてたくさんの人に和三盆を知ってもらい、日本の和三盆糖や木型にも思いを馳せてもらえるといいですね。

こちらキティちゃんの和三盆糖のお干菓子(1080円)は、「亀屋良長」のサイトから購入可能です。口どけの良い和三盆糖の押しものの周りは、お米のポンを軸にした金平糖が入っています。お試しあれ。

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