三重県四日市市内で25日夜、50代の男性会社員が男に刃物で頭を切り付けられて死亡し、一緒にいた40代女性も重傷を負った。逃走した男はその後、自宅とみられるアパートで焼死体となって見つかった。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は26日、事件現場を取材し、当サイトに事件の背景を解説した。
25日午後10時20分ごろ、三重県四日市市三重8丁目の路上で、桑名市の会社員伊藤信幸さん(54)が男に刃物で頭を複数回切り付けられ、病院で死亡が確認された。伊藤さんと一緒にいた交際相手で、近くに住むパート女性(43)も背中や腹を切り付けられて重傷を負い、男は逃走した。
四日市北署などによると、逃走したのは被害者2人の知人である36歳の男で、現場には血が付いた包丁が残されていたため、殺人と殺人未遂容疑で捜査していたところ、事件から約30分後、約10km離れた四日市市内のアパート1階の1室が全焼し、ベランダで焼死体が見つかった。この部屋に住む、伊藤さんの元同僚の36歳男性で、負傷した女性の元交際相手だったとみられ、液体をかぶったような跡があり、自殺を図った疑いがある。男は伊藤さんと女性に対するストーカー行為で今月14日に接近禁止命令を受けていたという。
小川氏は「現場付近の方に聴くと、広範囲で血痕が飛び散っていたということでした。ここで争って、被害者が逃げたりするなどして動いたんだろうと思われます。路上ですから、36歳の男が2人の被害者をつけていた。凶器となる包丁2本を準備していたことから、相手を殺害しようとする意志のもと、凶器を準備していたと言えるでしょう」と計画性を指摘した。
火災現場も取材した小川氏は「刃物で切り付けられた現場と火事の現場は距離が12~13kmくらいあって、25分後くらいに出火していることから、犯行後、すぐ自宅に戻って焼身自殺したと思われます」と推測した。
事件の背景について、小川氏は「犯行前、昨年12月に男は今回の被害者に対する器物損壊事件を起こして逮捕されていた。具体的にはタイヤのパンクですが、起訴されず、今月14日に釈放されて、同日にストーカー規制法の中止命令がかかり、接近禁止になっていました」と明かした。この接近禁止命令について、同氏は「近づくことができないということで、警察は被害者と連絡を密にするとか、被害者の行動範囲、自宅周辺の警戒はやっていると思います」と補足した。
その上で、小川氏は「警察も被害者と連絡を取り合っているようなのですが、そのさなかに、こういう事件が起きてしまった。今回、事件が起きてすぐ110番され、現場に警察官が来て、被害者がストーカーの被害者であることが分かればすぐに容疑者宅に捜査員が向かったと思いますが、事件現場と火災現場は警察署の所轄が違ったため連携がうまくいかなかった可能性もあります。焼身自殺だったとすれば、その前に身柄を押さえて欲しかったという点において残念です」との見解を示した。