ピンク色のウエディングドレス、高層マンション立ち並ぶ夜景…北朝鮮に43回渡航した報道写真家が伝える「平壌の日常」

辻 智也 辻 智也

 北朝鮮に43回渡航経験のあるフォトジャーナリスト伊藤孝司さん(69)が、北朝鮮の日常を撮影した写真展「平壌の人々」が昨年11月、京都市左京区の京都朝鮮中高級学校で開かれた。日本では、あまり知られることのない北朝鮮の日常生活とは、どのようなものだろうか。会場で、伊藤さんの解説に耳を傾けた。

 伊藤さんは、アジア各国で日本の戦争加害や環境破壊などをテーマに撮影、取材を長年続けている。今回の写真展は2021年11月20日から4日間催され、1998~2019年に伊藤さんが撮影した58枚が展示された。

 会場では、伊藤さんが来場者に写真を一枚一枚解説した。目をひいたのは、高層マンションが立ち並ぶ夜景の写真。勝手な先入観だが、北朝鮮は経済的停滞が続くイメージがある。

 しかし、伊藤さんによると「確かに10~20年前の平壌は暗いイメージでしたが、金正恩政権になってから高層マンションが増えました」とし、「動物園や遊園地などの娯楽施設の整備にも力が入っています」と説明してくれた。

 他にも、ビール祭りやバーベキューを市民が楽しむ風景や、ピンク色の華やかなウエディングドレスの写真などが並ぶ。最近は、レストランに総菜コーナーが増え、帰宅する会社員たちがよく買っているという。変わりゆく平壌のライフスタイルがうかがえた。

 一方、キムチの材料の白菜を満載したトラックの荷台に、数人の農家が乗る写真も。かつての日本の農村のようだ。「平壌でも、まだまだ牧歌的な風景が見られます(伊藤さん)」

 また、伊藤さんは金正恩氏本人や軍事パレードの様子も撮影している。軍事パレードで驚いたのは、「兵士が一斉に行進すると、戦車が通っても揺れない地面が震動した」という。

 パレードは、米国との関係が緊張している時は軍事色が強くなり、改善に向かっているときは華やかな市民参加型の祭典のようになるといい、長年の取材経験ならではの解説をしてくれた。

 また、伊藤さんは、第2次世界大戦後に北朝鮮に残留した日本人や、広島・長崎で被爆後に北朝鮮に帰国した人々の取材を続けている。

 今回も併せて残留日本人や被爆者の写真を紹介。伊藤さんは「日朝関係改善は容易ではないが、両国間には拉致問題以外にも解決しなければならない問題がある。互いの歴史や文化を知ることから交流を進めていく必要があるのでは」と話していた。

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