あれ、お風呂のお湯が出ない…。この冬、お湯を沸かす給湯器が壊れて、新しく購入ができずに困っている人がたくさんいる。背景には、部品の生産拠点が集まるベトナムでの新型コロナウイルス拡大があり、今も供給が戻らないという。世界的な半導体不足も追い打ちをかけ、日本では全国的に給湯器が品薄に。故障した人たちは銭湯通いするなどしてしのいでいるという。
「半導体不足はニュースで知っていたけど、自分の身に降りかかってくるなんて…」。兵庫県神戸市内で暮らす50代の女性はため息をつく。女性宅の給湯器はノーリツ製。夏にマンションの管理会社から取り替えの案内が来ていたが、業者に問い合わせると「東南アジアの工場から給湯器の部品が入って来ない。取り替えは来年3~4月になる」と言われた。仕方なく申し込みだけ済ませ、そのまま使っていたという。
給湯器が壊れたのは12月上旬の夜だ。お風呂を沸かそうとスイッチを入れると、突然、室外にある給湯器から警告音が鳴った。何度やり直しても動かないため業者に連絡。後日、見に来てもらうと「部品がないので取り替えはできない」と言われ、銭湯通いになった。冬の水は凍るように冷たい…。洗い物が出ないように食器はできるだけ使い捨ての弁当箱を活用。真水に耐えながらした朝の洗顔がつらかった。その後、担当者が複数のメーカーに問い合わせしてくれ、何とか別のメーカーの給湯器を確保。年内に取り替えてもらう段取りがついた。「持病もあるので、春まで銭湯通いが続いていたら体を壊していたと思う」と話す。
女性によると、同じ時期にトイレのウォシュレットも故障。電気店に行くと、半導体不足で品薄だったという。
ベトナムで経済活動休止
神戸市に本社を置く湯まわり設備メーカー「ノーリツ」によると、同社の給湯器の部品はベトナムで製造。ベトナムでは7月、新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウン(都市封鎖)。食品や薬品の調達以外で外出した人に罰金を科す厳格なもので、経済活動はほぼ休止した。現地の工場も動かなくなったという。これに世界的な半導体や樹脂不足も重なり、日本では9月上旬から部品が調達できない状況に。給湯器の在庫も少しずつ減少し、10月に入ると、SNSでは「マジで給湯器がない」「どこも在庫がない」など、給湯器を巡る悲鳴が相次いだ。同業者の「リンナイ」や「パーパス」でも生産が滞ったといい、いずれも公式ホームページで給湯器の生産不足を知らせている。
故障のリスク下げるには?
ノーリツは、故障のリスクを下げる方法をホームページで紹介している。大事なのは凍結を避けることで、「給湯器の電源プラグ(コンセント)を抜かないで」と呼びかける。
節電のため抜いてしまう人もいるというが、給湯器には「凍結予防ヒーター」が内蔵されており、外の空気が一定の温度より下がると自動的に作動し、機器の凍結を予防してくれるという。
また、寒波の予報が出た時には給湯栓から少量の水を出しっぱなしにすると、配管の凍結を予防できる。水は給湯栓から4ミリほどで、5円玉の穴を通るくらいの太さ(1分間に400cc)が目安という。
凍結してしまっても、給湯器の配管などに熱湯をかけるのはNG。機械や配管が壊れてしまう恐れがあるからだ。日中に気温が上がり、自然に解凍するのを待とう。