1950年には1万6000人以上だった喘息死、吸入ステロイドで激減 妊婦も安心して使用

ドクター備忘録

谷光 利昭 谷光 利昭

 朝、晩に暖房器具がないと過ごしにくい季節になりました。この季節に注意しないといけないのは、気管支喘息です。最近、新型コロナの影響でマスクをする時間が多くなり、昨年は喘息患者さんの発作や増悪をあまり診なかったです。

 マスク着用で、気道内の温度変化が少なくなり、温度差で発症する喘息発作が減少しました。また、風邪をひくと喘息発作が誘発されやすいのですが、マスクに加え、うがい、手洗いなどの感染症対策を強化していることも喘息発作の予防に繋がっています。

 喘息の治療は近年で最も進歩した治療のひとつです。1950年には喘息が直接原因で亡くなる喘息死が1万6000人以上だったのが、70年代後半には8000人前後の約半分に。以降約20年間は減少できませんでしたが、画期的治療法が開発され、93年にその治療が普及するためのガイドラインが作製されました。その治療法とは吸入ステロイドです。今では〝常識〟となっている喘息の基本治療に使われている薬です。

 喘息の原因となるターゲット臓器である気管に、ステロイドを直接投与することによって、副作用なく喘息の主病態である気管の炎症を抑えてくれます。唯一の欠点は、吸入後にうがいをしないと真菌であるカンジダが発生すること。うがいをすることにより防げますが、食前に吸入することにより、うがいと摂食という行為により、咽頭部、食道に付着したステロイドが胃内に流されます。

 胃内に流入したステロイドは微量で人体に影響は与えることなく、妊婦さんでも安心して使用できます。この吸入ステロイドに加えて、長時間作用型の気管支拡張成分が混在した吸入薬が開発されたことにより、さらに改善しました。最近はさらに新薬が増え、喘息死はさらに減ってきています。

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